Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

まさにグラフィカルなマーケティングの教科書

2021-01-20 13:23:46 | Weblog
上田隆穂、澁谷覚、西原彰宏の各先生による『グラフィック・マーケティング』新世社。書名のとおり図が多くて二色刷り。チャート式の参考書に馴染んだ高校生が、大学に入ってマーケティングを一から学ぶ際にうってつけの教科書である。

といっても初心者向けに内容を薄くしているわけではない。コンパクトな教科書に見えるが、中身は重くて濃い。3章に「リレーションシップ・マーケティング」がきて、最終章に「地域創生のマーケティング」がくるあたり類書にない特徴だ。

また著者が研究を深めてきた価格やデジタルマーケティングに関する章も見逃せない。ふんだんに盛り込まれたコラムで最新の話題や事例を扱っており、教科書的知識は身についていると自負している人にも学ぶところがあるはずである。


2021年、年初に当たり

2021-01-01 18:09:05 | Weblog
2020年はいうまでもなくCOVID-19のおかげで大混乱…海外出張はすべてなくなり、学会・研究会はオンライン、授業も大部分がオンラインになった。特にメインの講義がオンディマンド型(録画してアップロード)になったことで、講義の準備に要する時間がふだんの3〜4倍になったことで、研究時間が大幅に削減された。

そんななか、NYでの在外研究から始まった研究など、多くのプロジェクトが凍結された。そのなかで唯一前進したのが、青山秀明さん、藤原義久さんと進めてきた"Untangling the complexity of market competition in consumer goods - A complex Hilbert PCA analysis"で、投稿後一度の改訂を経て、返答待ちの状態である。

追記)1/04に採択のメールが届く!

もう一歩、というところまできたのが、プロ野球「熱狂」シリーズの第2弾で、今年の夏の出版を目指している(希望的観測)。その時期に日本のプロ野球がどのようなかたちで行われているか、オリンピックを含めて予断を許さない。なお、元々は去年の夏頃の刊行を目指しており、ここまで遅れたのはひとえに私の怠慢による。

この本で私が執筆した部分は、笹原和俊さん、佐野幸恵さんたちと行った2018年の日本のプロ野球ファンのツイート分析である。COVID-19でオフラインになった計算社会科学研究会や進化経済学会で発表した(上述の本ではそれとは違う分析結果が報告される)。春には関連論文が『マーケティングジャーナル』に掲載される。

新たに始まった研究もある。瀧川裕貴さんと共同で申請した吉田秀雄記念事業財団の研究助成が採択された。ツイートから投稿者の職業(や社会階層)を推定したり、ウィキサーベイという新しい調査方法を実験したり、野心的な研究に挑む予定。以前から抱いてきたクリエティブ・クラス論や文化資本論への関心が背景にある。

また、COVID-19の消費への影響について、中野暁さん、赤松直樹さんと行った共同研究は、12月の日本マーケティング・サイエンス学会で中野さんにより発表された。それ以外にもツイートデータを用いた分析も準備中だが、こちらは少し進んだところで発表したい。とにもかくにも2020年は論文も本も出版件数ゼロであった。

今年は約束しながら(何度も)延期してきた3つの出版企画を何とか終わらせたい。分野としては専門書、教科書、ビジネス書とまちまちで、うち1冊は英文になる。1冊3ヶ月で仕上げていけば秋には全部完遂できる。幸いにも4月から「特別研究」期間に入り、講義が免除されるので、この機会を逃すわけには行かない。

というわけで、凍結中のプロジェクトを解凍しつつ、本を書く。そんなにできるなら、これまでだってできたはず、という疑問は受けつけない^^