Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ネット・リテラシー

2013-08-31 10:35:55 | Weblog
9月30日の JIMS 部会では、法政大学の西川英彦先生、関西大学の岸谷和広先生に近著『ネット・リテラシー』をベースにしたご報告をいただいた。この研究は、吉田秀雄記念事業財団の奨励賞を受けたもの。ネット・リテラシーという新しい概念とその測定尺度を提案している。

ネット・リテラシー
(法政大学イノベーション・マネジメント研究センター叢書)
西川 英彦, 岸谷 和広, 水越 康介, 金 雲鎬
白桃書房

西川、岸谷両先生は、ネット・リテラシーをネット操作力、ネット・コミュニケーション力、ネット懐疑志向という3因子で構成する。このうち「ネット・コミュニケーション力」は、2011年頃 mixi を離脱した人ほど有意に低いという結果が得られている。

ここでネット・コミュニケーション力とは、ネット上で未知の人々とコミュニケーションできる能力だとされる。個人的には、mixi あるいは SNS は、リアルの人間関係が反映された、比較的閉じたコミュニケーションだと思っていたので、この結果は意外であった。

mixi からの離脱とは SNS からの離脱か、Twitter や Facebook など他のサービスへの移行なのか。前者だというお話だったが、ネット・リテラシーという個人特性(trait)と具体的なメディア選択では時間の速度が違う。長い時間スパンで分析したいところだ。

次いで、日米韓の Facebook ユーザを対象者に行われた調査が紹介された。利用頻度や態度に対する効果では、ネット操作力もまた有意になる。ただし、ネット懐疑志向因子はそうはならない。ネット懐疑志向とは何かを巡り、フロアを含む議論が行われた。

ネット懐疑志向という概念は、広告への懐疑に関する研究を発展させたものだ。フロアから、米国のデジタル・ネイティブと呼ばれる世代では、広告的なるものへの拒否感が強いという指摘もあった。懐疑しつつ影響を受ける、といった現実もありそうな気がする・・・。

参加者の議論を聴きつつ感じたのは、リテラシーのスコープを広げていくと、かついていわれたデジタル・デバイドに近い格差の広がりが視野に入ってくる。一方で、マーケティング的にはリテラシーが全般に高いと思われる層での細かな差異が気になる。

二次会で両先生を交えて議論するなか、ウェブ調査に基づく研究への評価が直面する難しさを知ることにもなった。査読者に対して、分析以前の調査のクオリティをいかに「客観的に」説得するかが、多くの研究者に大きな壁となってたちはだかるかもしれない。
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