Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

JACS@ADK~ニューロ・マーケティングの可能性

2008-06-29 23:39:57 | Weblog
6月28~29日は東銀座にあるADK本社で日本消費者行動研究学会の研究大会。当初初日から参加するつもりだったが,授業の準備が間に合わず,2日目から… しかも遅刻の参加となった。ものすごく人が集まっている。最後の守口副会長の挨拶で,発足以来最大の参加者数(延べ500人ほど)になったという。

その要因の一つは,今回の統一論題が「ニューロ・マーケティングの可能性を探る」であったことかもしれない。ただ,統一論題というには,最後のシンポジウム以外には,1件しか脳科学関係の発表はなかった。それは,ニューロインサイトジャパンの細谷氏による発表。オーストラリアで開発された脳波測定装置によって,CMに対する感情の変化を測定,表現の改善を行った事例が報告された。脳波がどこまで脳活動を測定し得るか議論の余地はあるにせよ,適用事例が蓄積されていくと,面白いことになりそうだ。

シンポジウムでは,放射線医学研究所の高橋英彦氏が基調講演を行う。本来は精神医学の立場から脳研究を進められている方だが,ニューロ・エコノミクス,ニューロ・マーケティング(そしてニューロ・エステティクスまで)に関する研究の現状を手際よく紹介された。いやいや,想像以上にこの分野の研究は進んでいる! その思いは,そのあと大学に戻って,講演で紹介された研究を google scholar で調べることで,より強くなった。

パネルディスカッションのとき,高橋氏が選好について述べた話が面白かった。線虫のような低次の生物の研究に基づく極端な考え方として,人間の選択は本質的には偶然によるもので,それを跡づけ(下條信輔氏のいう postdiction)で正当化することで選好が形成されてしまう,という仮説があるという(あくまでぼくの解釈)。高橋氏はそれはまだ十分検証されていないと科学者らしい慎重な態度を崩していなかったが,より単純かつ平明な説明を欲する科学のドライブは,それを志向しているのではなかろうか…。

この話は,シンポジウムの直前に聴いた井庭さんの研究と通底していると思う。彼は,脳科学のようなマイクロなアプローチの価値を認めつつ,複雑系の研究が扱うマクロでの秩序形成にも目を向けるべきだと述べる。そして,楽天の書籍・CD・DVDデータから観察されるロングテール現象(ベキ則)の頑健性を強調していた。これは,人間の意思決定を「砂山を形成する砂」とみなしても成り立つ議論だから,人間の選好形成を偶然の累積とみなす上述の立場とも符合する。

個人的に興味深かったのは,井庭さんがアイテムの販売量の分布だけでなく,個人の購買量の分布もまたベキ則に従うことを示していたこと。そのこと自体はすでに知られていることとはいえ,モノとヒトの分布を両方描いてみることは,非常に深い含意を持っていると思う。モノの何がヒットするか(分布のヘッドに来るか)は毎期予測不能といえても,ヒトの誰がヘッドに来るかには持続性(persistance)があるはず。ぼくは同じベキ分布でも,その裏に違うメカニズムが潜んでいると考えたい。

帰り道,秋山さんと今後の研究の方向性を話し合う。研究室に戻って上述のごとく調べものをしていると,渡辺さんほか,何通か日曜にも研究マインドを忘れない(ワークライフバランスが崩れた?)人々からメールが届く。物理学者や脳科学者,あるいは情報工学者がどんどんマーケティングの世界に近づいてくると,面白いことになる。ぼくの人生も楽しくなる。

にしても最近ヘアサロンにもジムにも行っていない。これは,見かけが破天荒なマッド・サイエンティストになるチャンスだろうか? いやいや,見かけだけ変でもダメなのである。中身がなあ…。

信頼と協力@消費者間相互作用研究会

2008-06-27 23:57:16 | Weblog
昨夜は消費者間相互作用研究会。偶然ではあるが「信頼」と「協力」という,社会的相互作用を考える上で非常に重要な概念がテーマになった。

まず小笠原さんがインターネットへの信頼度に関する意識調査の分析結果を報告。国際比較調査の結果では,日本は諸外国に比べ,インターネットへの信頼度が極端に低い。そこにはさまざまな歴史的・文化的背景があるに違いないが,社会心理学の理論的枠組みでどう解明するかが一つの課題となる。日本人のネットユーザを対象とした調査に対して SEM による分析が行われた。

1つ頑健な結果として浮かび上がったのが,一般的なメディア信頼度が新聞とネットへの信頼度と強い相関を持つということだ(ただしテレビへの信頼度は独立している!)。一方,日本では諸外国に比べ,新聞への信頼度は高いがネットへの信頼度は低い。こうした非対称性が生まれるのはなぜか… 個人的にはそのあたりが今後,国際比較調査などから解明されるとうれしい。

次に鈴木さんが,繰り返し囚人のジレンマゲームのプレイヤーの脳内でどのような変化が起きるのかを fMRI を使って計測した研究を報告。厳密な統制実験を行い,条件の異なる被験者間で脳内血流の有意差を調べ,特定の認知活動や意思決定が脳のどの部位で行われたかを特定していく。それによって,意思決定の特定のモジュールを,より一般的な脳活動にマッピングできる。

ぼくの理解した範囲では,鈴木さんたちの実験で解明されたこと(の一部)は次のようなことだ。囚人のジレンマーゲームが期限を明示されずに繰り返されるとき,大部分の時期には協力を行い,終わり近くなると裏切りに転じるのが合理的である(個人の利得を最大化する)。だが,被験者は実際には裏切られると裏切り返すという Tit for Tat 戦略をとる。このとき脳内では理性を抑制する部位と感情にかかわる部位が活性化する。

人間の意思決定に理性的な部分と感情的な部分があることは,すでに多くの研究が仮説としているが,それを生理学的に裏づける点にこの種の研究の貢献がある。二次会では「ニューロマーケティング」の可能性について議論になった。現実の学術研究と産業界の期待には当然ながら大きなギャップがある。そこから起きる失望が地道な研究に逆風とならないよう注意を要する。

今回,サーベイデータの分析と脳科学的な実験という,両極端に見える方法論の研究報告を聞いたが,人間行動の研究として,これらが車の両輪になる時代が来ていると思う。たとえば以下の本に示された Kahneman たちの「幸福」研究がそうであるように,脳神経科学的な実験とパネルへの日記式調査,そして国際比較のための定型的質問紙調査などが並行して進められている。そして,それらの結果を統合する骨太の理論が最後に必要となる…。

Well-Being: The Foundations of Hedonic Psychology

Russell Sage Foundation

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…にしてもこの研究会,最近マーケティング研究者の参加が少ないことは寂しい限りだ。ぼくの研究上の関心が,マーケティング「学」界でいかに孤立しているかを表しているかもしれない。信頼と協力はむしろ「遠縁の」研究者たちとの間に成り立つということか…。

グロバールCOEの選考結果が発表されていた

2008-06-24 23:38:10 | Weblog
朝起きたら腰が痛い・・・ 今日は十分時間的余裕を持って大学に向かい,「マーケティング」最後の授業を終える。授業評価を行い,あとは試験を残すのみ。

今年度のグローバルCOEの採択が,出張中に発表されていた。大学別の採択件数を見ると,東大10件に続くのが,東北大の7件だ(その次が京大の6件・・・)。いやー東北大はすごい! 都市の規模で上回るはずの阪大,名大,北大,九大を上回っている。最近,楽天イーグルスが強いといっても,ここまではいっていない。医学,理工学,社会科学のあらゆる分野で万遍なく採択されている。こうやって,どんどん「競争」してください,ということなんだろうけど・・・。

ウチの大学は今回は全滅。正直いって,それはないだろう・・・と思う。大学の先端部分の研究レベルはさほど低くないとしたら,プレゼンテーション能力が低いということか。それは申請した研究者のせいなのか,サポートすべき大学執行部のせいなのか。・・・ともかく,Look East! 東北大の成功から何かを学ぶほうが建設的だろう(その結果,東北大のようには簡単になれないことがわかったとしても・・・)。

私立大学で複数件採択されたのは早慶だけで,あとは1件のみ採択された大学がいくつかある。最も有望な分野に,全学を挙げて資源や努力を集中させたのだろう。こういうメリハリが,今後多くの大学で必要になってくる。そこから何か歪みが出てくる可能性はあるが,「研究」の看板を掲げる限り,しかたがないことだ。一方で,COEの重荷を担わないという戦略をとるほうが賢明な場合もあるだろう。

採択されたプロジェクトのいくつかを見る限り,長年にわたって傑出した努力を重ねてきた研究者が複数おり,それらがすでに有機的な共同研究を実施しており,その成果が外部から高い評価を受けている,といったことが採択される条件のように思われる。その意味で,これまでのところ COE は,すでにあるものを強化しているといえる。それは自然なことではあるが,一方で,COE によってこれまでなかった研究拠点を生み出すことができれば,より価値があるはずだ。

どこかの大学が,ある分野の優秀な研究者を自校にこだわらず片っ端から集め,超一流の環境を整え,一定の時間ののちに次々と成果を生み出し,世界的な研究拠点となる。大学というのものは長い歴史によって育まれた複雑な生態系なので,そんなに簡単に研究拠点など生まれやしない,というのが常識的な見方だろう。だが,メリハリというなら,それを徹底させる実験があってもいいはずだと思う。

キュリー夫人の母国で

2008-06-23 19:18:08 | Weblog
昨夜(現地時間)は,ワルシャワ工科大学の女子大生の案内で「ショー」を見に行く。場所は一昨日食事したレストランの隣り。参加したのは6人。日本からの交換留学生,発表に来た修士のお母様なども含むこのグループ自体が,まさに非線形現象としかいいようがない。狭い空間に老若男女のポーランド人がびっしり座っている。むし暑い。狭い舞台に次々に男や女が現れては歌って踊る。おそらく恋の歌なんだろうけど,ポーランド語なので意味は全くわからない。

ショーは1時間ちょっとで終了。観客は激しい拍手を送っている。エンタテイメントというものはその土地の文化のなかで進化するものであり,異邦人にはその真価を理解することは難しい(・・・なんてことを考えていると「エンタテイメント」プロジェクトのことがちらっと頭をよぎる)。だが,ここを紹介してくれた学生は,ポーランド語で川端康成を読んで日本文化が好きになり,愛知万博のポーランド館で働いた経験があるという(いまの専攻は物理学だが・・・)。つまり,文化の壁が簡単に越境されるのまた事実である。

ショーが終わったのは夜8時過ぎだが,外はまだまだ明るい。しかし,この日は大人しく部屋に帰り,帰国後に待っている仕事の準備をする。今回の訪問では,ワルシャワの目玉である旧市街に行くことができなかった。形のあるものはいつか見ることができる ・・・というのは,この日小野崎さんが吐いた名文句だ。いつかまた,ここに来ることがあるだろうか・・・ かなり微妙だが,発展途上にある国だからこそ,今後どのように変化していくかわからない。近い将来,白タクが激減していることを祈りたい・・・。

翌朝,ワルシャワ空港に向かう。セキュリティ・チェックを終えてからポーランド通貨を円に換えるつもりだったが,なかにある銀行がなぜか閉まっている! しかし,この通貨を他国で交換できそうにないから,すべて土産物に使うことにする。時間がないので単純に値段だけを見て,最後はオーストラリアの赤ワインを購入して帳尻を合わせた(その価格に見合ったワインかどうか・・・)。さらにまた,スキポールへの到着が大幅に遅れたため,成田へ向かう便へ大急ぎで移動。着いたらほとんど乗客が座っていて,日本の新聞はとっくになくなっていた。

狭いエコノミーシートに身を置き,よくいえばテキパキしたKLMの客室乗務員と接していると,自分がまるで家畜のように思えてくる。旅の終わりには必ずこの苦役が待っているのだ(しかも,年を取るにつれ,ますます苦痛が強まっていく)。ぼくは一生,エコノミークラスの客として終わるのか・・・ 航空料金を倍払えば(あと20万円出せば)ビジネスクラスに移ることができるが,公費で行く以上それはできない。では私費で・・・明日死ぬと思えばそうもできるが,まだその踏ん切りはつかない。

今回の出張では,これまでマーケティングその他の学会で見かけることがあった,目から鼻に抜けるスマートさを持った人々とは違う,ひたすら愚直に知的探求を目指す人々と触れることができ,エモーショナルな部分で大きな影響を受けたように思う。ポーランドが生んだ最も有名な人物はショパンだが,その次にコペルニクスやキュリー夫人といった科学者の名前が来る。「科学」ということばを使う以上,それに相応しい生き方をしなくてはならない,と思ったりする。

ESHIA/WEHIA2008@Warsaw 3日目

2008-06-21 23:27:19 | Weblog
昨夜はディナーのあと,有賀先生の話をじっくり聞く。技術革新を内生的に扱う確率過程モデルとして,Aoki-Yoshikawa 2006 が非常に重要な貢献をしているという。ぼく個人としては,無限に細分化する選択肢や選好の扱いのヒントにならないかと思う。歯が立たないという強い予想は持っているが…。

今日聞いた話ではまず,Konig & Tessone, Social Network Formation of Agents Competeing for High Centrality が興味深かった。社会ネットワークの形成プロセスを扱うモデルはすでにいくつかあり,この研究はそれに数理的な解析を試みている(だから,詳細はよくわからなかったが…)。

もうひとつは,Silverberg, Frenken & Valente, A Percolation Model of the Product Lifecycle ... 製品や技術の普及のモデリングは数々あるが,この研究が扱うのは製品ライフサイクルだ。数多くの企業の競争からドミナント・デザインが登場し,いったん製品の同質性が高まるが,その後差別化が進んで異質性が高まるプロセスを創発させている。

最後の講演は Ormerod, Global Recessions as a Cascade Phenomenon with Heterogeneous, Interacting Economic Agents ... 景気後退をスモールワールドネットワークで結びついた各国経済の確率的な相互作用でモデル化している。彼は邦訳もある有名な本の著者である。

バタフライ・エコノミクス―複雑系で読み解く社会と経済の動き
塩沢 由典,ポール オームロッド
早川書房

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シンプルにしてなかなか面白そうな分析だ。ともかく,ESHIA/WEHIA08 はこれで終了。明日(日曜)にこちらを発ち,月曜に帰国する。ここで得た刺激を研究に展開したいところだが,それとは関係ない仕事が山ほど待っている…。

ESHIA/WEHIA2008@Warsaw 2日目

2008-06-20 23:30:05 | Weblog
昨日は学会のあと,共同研究でワルシャワに何度も来ている佐藤さんの案内で,小野崎さんともども,大学のそばのスーパーで買い物し,市内の公園を散歩する。途中,日本でいえば昭和30年代風のビルがあり,何となく懐かしい感じがする。公園は広くて美しい。

地元料理のレストランで,お二人から経済物理学の話などを聞く。佐藤さんによると,同じく数理モデルを志向していても,経済学には規範的な趣きがあるのに対して,物理学は徹底して記述的であるという。経済物理学が一定の成功をおさめたら,いずれ marketing physics が登場しても不思議ではない。

今日,午前中に自分の発表を行う。質問2つ。昼食時に,生天目先生から貴重なアドバイスをいただく。感染モデルにおける自然治癒と,クチコミモデルにおける忘却の類似性と差異を明確にする必要がある。それ以外にも課題は多い。Post proceedings に投稿すべきか,慎重に考えるべきだろう。

これまで聞いたなかで,自分の研究にストレートに響いた研究をいくつかあげる。

まず Roca, Cuesta, & Sanchez, Evolutionary Games and Cooperation: the Complex Effect pf Population Structure ... コミュニティというサブ構造を持つネットワークを実データから構成したうえで,協力の進化ゲーム的分析を行っている。ネットワークをより現実的なものにしていく試みとして注目。

Namatame, Self-Organized Control of Cascade は,ぼく自身のクチコミ研究と関連する部分が多い。ただし,この研究は,それをより広い理論的文脈のなかにおいて,厳密な考察を加えている。エージェントの異質性やコミュニケーションの非対称性など,自分の研究にとっても考慮していくべき点が非常に多い。

Lux, Parameter Estimation for Stochastic Models of Interacting Agents: An Approximate ML Approach via Nymerical Solutions of Transitional Densities ... オピニオン・ダイナミクスのモデルを実データから最尤推定しようという研究。これも大変興味深く,あとでじっくり勉強することにする。

その他,多くの研究が物理学的なアプローチに基づいているので,平均場近似の数理的な解析などが出てくると,とたんにお手上げになる。しかしながら,取り組まれている問題はすべて学会のタイトルどおり,Heterogeneous Interacting Agents の応用であり,興味深い。

とりあえず2日目の口頭発表が終わり,あとはポスターセッションとディナーが待っている。そういえば,昨夜ホテルのフロントに行って「バウチャーとはこれか?」と会議の領収書を見せたところ,すでに処理済みだから関係ないと…。そんなことだろうと多少は予想していたが…。

ESHIA/WEHIA2008@Warsaw 初日

2008-06-19 23:19:04 | Weblog
昨夜(現地時間),ワルシャワに到着した。スキポール(アムステルダム)空港で4~5時間待ち,それから3時間ほどの空路。スキポールでユーロをポーランド通貨に換えようとするが,ここにはないという(両替所のディスプレイに,為替レートは表示されているが…)。夜,ワルシャワについて両替できるかどうか不安になる。

ワルシャワに着くと,入国審査がなく(スキポールでパスポートとセキュリティ・チェックがあったので,外部委託しているということか…),いきなり両替所があった(Kantor という…唯一覚えたポーランド語だ)。ユーロ紙幣を差し出すと,ライトを当てて偽札かどうかチェックしている。円も扱っており,成田でユーロに換えたのは無駄だったかと,その時は思った(実はそうでなかったが…)。

最初に出会った薄暗い baggage claim で待つが,何も荷物が出てこない。やや不安になるが,周りで数人同じように待っている客がいるし,場所を間違っているわけではないだろうと思っていたら,間違いだった。その奥にホンモノがあって,多くの客がすでにそこで待っていた。無事荷物が出てきて,第一関門突破。

ロビーに出ると,ガイドブックで警告されていた通り,白タクの運ちゃんがすぐに声をかけてきた。それを無視して,市内に行くバスに飛び乗る。しかし,普通の市内バスといった雰囲気で,乗客もみんなそんな感じで,降りる場所を間違えないか緊張する。周りに目を凝らして,なんとか無事にマリオットホテルに到着した。

ところがフロントで,今度は会議の主催者からバウチャーをもらっているはずだからそれを見せろ,といってくる。そんなものもらってない,というと,明日もらって来い,という。またまた不安になるが,部屋がないといっているのではないから,まあいいだろう。36階の部屋に入ると,窓から,スターリン時代の遺物,「文化科学宮殿」が見える。

昨夜は途中で目覚めることなく,すっきりした気分で起床。朝食の席で有賀先生,生天目先生にお会いする。会場のワルシャワ工科大学はホテルから歩いて10分ほどの至便の地だ。受付で手続きをすると,今度は参加費が入金されていないという。そういえば,ホテルの予約確認のメールはきたが,参加費のほうはなかったなあ…。

そういえば,オンラインでの支払い手続きにトラブルがあって,とかいうメールが来ていた。で,ここで現金(ユーロ)で払ってほしいといわれる。だが,手元に要求されるだけのユーロはない。バウチャーのことを聞くと,心当たりがない,もしかすると領収書のことではないか,という。ああ…。

とりあえず昼休みにホテルに戻り,手持ちの日本円をユーロに換えるが,円→ポーランド→ユーロという交換になって大幅な損が出る。手持ちの現金が予想外に減ってしまったので,今後は基本的にカードで生活しよう(会場であった岩永さんから,市内でクレジットカードからキャッシングできると教えてもらう)。

…というドタバタが続いているが,朝から聞いている発表はなかなか刺激的だ。欧州(特にイタリアやフランス,スペイン)で,物理や数学を専門とする参加者が多いという印象。質問し始めると長い。先週のマーケティング・サイエンスの参加者に比べると,あんまりギスギスしていないように見える。国民性の違いか,専門の違いか,その両方か…。

マリオットホテルが,今日もらった領収書で納得してくれるかどうかは,まだ会場にいるのでわからない。これまで聞いた発表も含め,明日(日本時間)以降に書くことにする。もちろん,明日の午前中にある自分の発表についても…。そういえば,サイトに発表スケジュールが載っていないと思っていたのは大きな誤解だった。今回は特に,事前の情報チェックに多々失敗している。

今度はワルシャワへ

2008-06-17 23:54:24 | Weblog
バンクーバーから戻った昨日はそれほど疲れもなく,夜は久しぶりにジムで汗を流した。あとは今朝の授業に備えるだけであったが… 今日は最悪…。

明日から今度はワルシャワに向かう。ESHIA/WEHIA08 のプログラムがどうなっているのか,サイトを見ても "A detailed list of session will be available in June" と書かれたままだ(開催2日前というのに!)。結局,着いてみないとわからないということか…。ポーランドについて最小限の知識を得るべく,以下の本を購入。そこではじめて,この国には独自の通貨があることを知る。ユーロがそのまま使えないのだろうか… とりあえずユーロをもっていくしかないかな。

A26 地球の歩き方 チェコ/ポーランド/スロヴァキア 2008~2009 (地球の歩き方 A 26)
地球の歩き方編集室
ダイヤモンド社

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これからヨーロッパへ行くことで,自分自身の体力はもちろん,航空機の燃料等々,膨大なエネルギーが消費される。自分の研究を発表することにそこまでの価値があるのか… という思いが頭をよぎる。もちろん,そんな計算をはじめたら,あらゆる旅は意味を失ってしまうが…。

表現・報道の欲望・・・大丈夫か

2008-06-16 23:49:58 | Weblog

このところ,ほぼ毎日ブログを更新している。出張中は新たな刺激や情報に接する機会が多いし,脳活動もふだんより活発化している(はずだ)から,時間さえ許せば何か書くことができる。その瞬間だけは,毎日多くの人に会い,さまざまな場所に出かけるジャーナリストと似た立場になることができる。つまり,何かを報じることで他者から認知され,それが悦びとして感じられるわけだ。

秋葉原無差別殺傷事件の犯人は,日々携帯サイトに自分の不満を書き込み,ワイドショーのトップニュースを飾りたいなどという気持ちを吐露しただけでなく,事件当日は犯行に至るまでの経過を逐一「実況」している。何かを報じることで自己を認知してもらいたいという欲望…それは一般のブロガーも同じだろう。それは多くの場合,凶悪犯罪に至ることはないが,根っこは同じだとすると…うーんヤバい部分がないとはいえない。

この犯罪の現場に居合わせて,血まみれになっている被害者を手持ちの携帯電話で撮影し続けるという,「野次馬」の行為をめぐって論争が起きている。

秋葉原事件の被害者撮影 モラル論議が巻き起こる

そうした行為に対する批判がある一方で,実は報道カメラマンも同様のジレンマを抱えており,素人だけを非難できないのでは,といった指摘もある。マスコミはこれまで,報道のプロにのみ,そこで起きた出来事を社会に伝える崇高な任務が与えられている,などと考えてきたはずだ。だが,一般人がそうした任務を遂行してはいけない明確な理由が何かあるだろうか? 

たとえば,一般人は訓練を受けていないので,報道のモラルが欠如する,とか? いまの報道機関にそれがいえるの,というのが大方の反応だろう。マスメディア自体,店頭のカメラはもちろん,素人が撮影した映像を積極的に利用しており,もはや報道はプロだけで閉じてはいない。モラルというなら,素人報道者も含めて,それを保証する仕組みを考える必要がある(結局は本人の心がけ…てことに落ち着くんだろうけど)。

いずれにしろ,すべての人が報道者になるかもしれない社会というのは,率直にいってどうなんだろう? 一部の犯罪を抑制するかもしれないが,どこでプライバシーが侵害されるかわからないし,新たな犯罪のもとになることだってあるだろう。いいことなのか,悪いことなのか,いずれにしたって,そちらに徐々に進んでいることだけは間違いない。

ちなみに,研究者という職業も,人並みはずれた自己表現・報道欲求,あるいは自己顕示欲求と結びついている。自ら進んで人前で自説を喧伝し,自らの署名入りの文書をあちこちに頒布し,どんな小さなことでも自分の「貢献」があれば声を大にして叫ぶ。

そうした欲求がない研究者はすぐに淘汰されてしまうから,実際のところ存在しない。相対的にはかなり謙虚な人でも,学会発表や論文を匿名や仮名で発表するなんてことはあり得ない。そして,つねに発表→相互認知の場が用意されているので,「暴発」する人は少ない(…はずだが)。

いや,研究者だけでなく,いわゆる「クリエイティブクラス」全体が,ほとんどみんなそういう人々ばかりではなかろうか。クリエイティブ社会とは「オレが/アタシが」の社会なのだ。世のなかがそこに向かうのも,やはり不可避といえる。


Mktg. Science Conference@Vancouver 2~3日目

2008-06-15 15:53:50 | Weblog
Marketing Science Conference 2日目。興味を持った発表を記す。Tanya Mark, Mark Vandenbosch, and Katherine Lemon, Predicting What Type of Customer You Will be Tomorrow: A Stochastic Segment Model は隠れマルコフモデルを使って,Customer Dynamics を追求している。その前に発表された Thomas Reutterer, Detecting Meaningful Patterns of Profitability Dynamics in Evolving Customer-Firm Relationships は一部しか聞けなかったが,マルコフ連鎖クラスタリングなるものが使われ,いろいろな形で CRM の動学化が試みられていことがわかった。

すぐに別の部屋に移って,Hiroshi Onishi and Puneet Manchanda, Marketing Activity, Blogging and Sales を途中から聞く。そこでは,映画の封切り前にテレビ広告がブログの書き込みを刺激し,売り上げにつながっていくという分析結果が紹介されていた。ただし,封切り後には,そうした関係が変化するという。大西さんは,計測されたのはあくまで相関関係で,因果関係であるとは断言できないという,なかなか慎重な言い回しをしていた。

次いで,Jiali Ding et al., Identify the Influentials and Imitators in Fashion Contagion Using Scanner Data を聞きに行く。標題から,昨年この学会で自分が発表した内容に近い可能性があると感じ,気になったのだ。彼女たちの場合,in store contagion という視点を全面に出して,同じ時間に店にいて,同じようなものを購入した顧客の間に模倣関係を想定,それを二項選択モデルに変数として入れるというやり方だ。なお,今回この発表以外にも,クチコミと観察に基づく模倣を概念的に区別する議論が少なくなかった。

意外に面白かったのが Kartik Hosanagar: Blockbuster Culture's Next Rise or Fall: The Impact of Recommender Systems on Salse Diversity だ。彼の分析では,オンライン・ショップへのリコメンダー(協調フィルタリング)の導入は,個人にとって多様な選択を可能にするが,市場全体としては多様性を失わせる。次のJochen Eckert, Bernd Skiera and Oliver Hinz, Long Tail - An Investigation of Underlying Demand Effects では,Video on demand サービスでのロングテール化がヘッドへの集中を減らしている(つまり分布がフラット化する)ことを見い出している。いずれも聴衆はそう多くなかったが,個人的に強く興味を惹かれた。

自分自身の発表は,午後の Social Networks and Market Efficiency というセッションで行われた。最初の発表は,Tomoko Kawakami, Factors affect Purchase Intent and Actual Purchase in Japanese Digital Music Player Market で,有名な著書で存じあげていた川上さんに初めてお目にかかる。流暢な英語で,堂々たる発表であった。そしていよいよ When Word-of-mouth Marketing Works: An Agent-Based Simulation Approach を発表 ... かろうじて Libai 先生から,Watts は消費者間の関係はスケールフリーネットワークではないといっている,お前はどういう市場を想定しているのか,という質問を受ける。車でも携帯オーディオでもいいが,電子コミュニティの登場で,次数の高いハブが存在し得るようになったのでは,と答えた(つもり)。

報告を終えて,疲れきって席に戻ると,後ろにいた恰幅のいい若手研究者がいきなり握手を求めてきた。それは発表の内容にではなく,下手くそな英語で頑張って(?)しゃべったことへのねぎらいかもしれない。のちに,イスラエルから来た彼の発表を聞いたとき,ぼくよりは段違いに流暢ではあるが,それでも英語でのスピーチに苦労しているように見えたので,その思いを強くした。自分の発表に戻ると,英語がもう少しうまければ,多少はインパクトを上げられただろうけど,やはりそれ以上に内容に課題が多い。もっとねちっこく考え,隅々まで計算し,できれば何か経験的な証拠を出すことが必要だ。

そのあと,肩の荷がおりた気分でコンジョイント分析のセッションへ。Eric T. Bradlow, Barter Markets for Conjoint Analysis ... 相変わらずの,ものすごい勢いの発表に圧倒されるが,彼が提案する手法がなぜうまくいくのか,わからないまま終わる。その後,有名な教授たちの発表が続いたのだが,猛烈な眠気が襲ってきたため,その内容はほとんど覚えていない。夜のパーティでは,隣の席に座った,日本に滞在したことがあるというドイツの研究者と主に話す。彼も隠れマルコフ+ベイズで研究しているという。そのあと,若手日本人研究者数人と近所のバーへ…。

3日目は,開始時刻の30分前に起床。Ralf van der Lans et al., A Viral Branching Model for Predicting the Spread of Electronic Word-of-mouth in Viral Marketing Campaign や Asim Ansari, Oded Koengsberg and Florian Stahl, A Baysian Framework for Mdeling Multiple Relationships Among the Members of a Social Network は,いずれも社会関係の形成に確率モデルを導入する研究だ。社会的相互作用やネットワークに対するマーケティング・サイエンスの取り組みはここまで来ているのかと感心する。

同じセッションの Peter Ebbes et al., Sampling Large-Scale Social Networks: The Good, The Bad, and The Ugly は,大規模ネットワークの性質を推測するためのサンプリング方法の精度を,シミュレーション及び実データで評価している。その結果,スノーボール・サンプリングやそこにランダムウォークを入れたものが相対的に優れていることが示された。緻密な研究ですばらしいが,現実には,スノーボーリングでさえ十分に行うことが難しい。このあたり,まだまだ取り組むべき課題が多いと感じた。

Daniel Shapira, Jacob Goldenberg, and Oded Lowengart, Zooming In: Self-emergent of Movements in New Product Growth は,エージェントベースの見事な応用。普及プロセスのわずかな摂動が,社会ネットワークを考慮すると経路に大きな影響を与えることをシミュレーションで示した後,実データを用いた予測の実験を行い,実践的な教訓を引き出している。シミュレーションに終わらず,実データとのブリッジ,実務的含意をきちんと揃えているのは,さすが Marketing Science に採択されただけのことはある(発表していたのは,昨日いきなり握手してきた,あの彼だ!)。

Wander Jager, How Does Word-of-mouth Affect Pricing? Agent Based Simulation of Different Markets は,マーケティング・サイエンスの研究者に向けた「啓蒙」を目的とした発表だった。市場のふるまいは予測困難だが,管理することはできる,という主張している。気の利いたデモンストレーションに会場の反応はよかったが,最後に何も質問やコメントが出なかったのは残念。まだ布教には時間がかかるだろうが,とりあえず所期の「目的」は果たしたのではないか,と思う。

閑話休題。バンク-バー最後の夜は,この地でベストだとホテルのコンシェルジェがいう中華料理屋へ「皆で」行く。すべて終わった,美味いものを食うぞ! ところが,非常に楽しみにしていたアワビ料理の皿が自分の前に回ってきたとき,そこには野菜しか残っていなかった! …そのショックは時間が経つにつれ増大,食べ物の悔恨は簡単に記憶から消えることはないようだ。帰国したらすぐ,どこかでアワビを食べないと,このモヤモヤは消えないだろう…。

Mktg. Science Conference@Vancouver 初日

2008-06-13 21:45:17 | Weblog
今回の Marketing Science Conference は Sheraton Vancouver Wall Center Hotel で開かれた(ホテルでの開催は珍しい)。数えてみると3日間で 166 セッションある。基本的に1セッションで3つないし4つの発表があるから,全部で 600 ほどの発表があることになる。いつも感じることだが,よくもまあ,マーケティングについてこれだけ研究するネタがあるもんだと思う。

初日聞いたなかで印象に残ったのは,まず Libai and Muller: The Value of Opinion Leaders in the Diffusion of Innovations だ。Watts and Dodds (2007) への批判という意味では,自分の研究に近い。しかし彼らの研究は,電子コミュニティで観測された実際の社会ネットワークを基礎に,エージェントベース・シミュレーションを実行している。

これは,In Honor of Professor Frank M. Bass というセッションでの発表の一つ。これ以外は,ハザードモデルがメインの発表が1件と,スプライン補間ないし関数回帰分析という全く理論モデルを仮定しない方法を使った国際比較の発表が2件あって,いわゆる Bass モデルを素直に継承しているものは一つもない。あとでこの分野の権威,山田先生に話すと,それは Bass の逝去がもたらした変化ではないかと指摘された。

Daria Silinskaia et al.: Modeling Cognitive Complexity to Predict Consideration Sets (発表のとき Complexity が Simplicity に変わっていた)もまた,個人的に興味を惹かれた。彼らは,disjunctive of conjunctive という考え方に立って,AND 型ルールが OR で結ばれている考慮集合形成のモデルを提案していた。ただし,話が細部に進むにつれ,わからなくなる。

Boehm, Romero and Downarowicz: Managing Customer Portofolios は,文字どおりポートフォリオ理論を応用すべく,顧客セグメントを収益の平均と標準偏差でプロットしていた。どうやって顧客のポートフォリオを変えるのかという問題はさておき,実際のデータに基づくその図が面白いのは,リターンとリスクが全般に比例関係にあるわけではない,という点だ。大多数のセグメントは,ローリスク,ハイリターンのゾーンに集中している。

発表者はこれを取り除いて(うまくいっているのだから,それでいいでしょ,ということか),残りのリスクとリターンが比例している部分でポートフォリオを考えている。それはそれでいいが,最初の切り捨てられた部分が気になる。当然,顧客セグメントを売買する市場などなきに等しいから,そうなるのかもしれない。また,セグメントは定義次第でいくらでも変わるから,この図がそもそもどこまで頑健かもわからない。逆にいうと,今後の発展の余地が大きい領域だといえる。

立食パーティの後,近所の日本料理屋で二次会。山田先生に加え,濱岡さん,山本さんは既に発表を終えている。ぼくは2日目の午後の発表だが,早朝に目が覚めてしまったので,時差への適応に失敗したことは明白。毎度のことながら,先が思いやられる。

時差との闘い開始

2008-06-12 16:49:04 | Weblog
バンクーバーに着いたのが現地時間の午前11時ごろ。ホテルにチェックインし,明日以降どのセッションに出るかの「戦略」を練るが,時おり睡魔が襲ってくる。ここで寝たら時差に適応できないと思い頑張るが,気づいたら夢見心地だったり…。夜は道中一緒になった山田,照井両先生とロブソン通りのシーフード料理店へ。ワインを飲んだせいで,部屋に戻ってうたた寝してしまう。発表の準備がすべて終わったわけではない。

今日のバンクーバーはうす曇り。かなり寒く,ホテルの部屋では暖房が必要なぐらいだ。今度はきちんと寝ないと,明日の日中,眠くなるという悪循環になる。

バンクーバーへ

2008-06-11 12:42:11 | Weblog

iPhone 3G は 200ドルという低価格で発売されるという。アップルの価格戦略,収益モデルの変化にも注目が集まっている。世界を同時にマーケットにするという戦略は,日本の端末メーカーにはできないことだ。今後どうなるのか,CNET Japan には有識者の予測が寄せられている。

 iPhone 3G、日本のモバイル業界を変えるか

そのなかで清水亮氏は「iPhoneはごく普通の人が使うには捨てるものが多すぎる」「モバゲータウンが出来ないというただそれだけの理由でiPhoneを選択しない人もいる」「あらゆる人がライカを買うワケではないように、あらゆる人がiPhoneを使う訳ではないと思います」と書いている。

日本のケータイに独自の文化があるのは確かだろう。一方,iPhone はケータイではない,それを超えたものだ,という見解もある。肝心の消費者にとって,iPod が何であるのか,まだ定まっていない。それは売る側の戦略もあるが,消費者自身が相互作用を通じて構築するものだろう。

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今夜 Marketing Science Conference へ参加するためバンクーバーへ発つ。帰国するのは来週月曜。翌朝授業をしたあと,水曜に今度は ESHIA/WEHIA のためにワルシャワへと発つ。再び戻るのは再来週の月曜。そして翌朝授業・・・ その後もいろいろ用事が集中しているため,なかなか厳しい2週間になる。

バンクーバーは初めての土地だ。ある同僚が,いまバンクーバーは一番いい時期でだと教えてくれた。パワポは完成していないが,せめてホテルの周囲でも散策できればと思い,とりあえず,以下の本を買う。こうしたガイドブックなしに出かけるほど,旅慣れていない。機中で読むことにしよう。

カナダ ’07~’08 (ワールドガイド アメリカ 2)

ジェイティビィパブリッシング

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iPhone 発売早すぎる!

2008-06-10 13:32:30 | Weblog

朝一の授業に5分前に到着。やればできる。しかしその反動で,昼休みにやたらに眠くなる。

WIRED VISION より

『iPhone』は日本人に受け入れられるか?:「複雑過ぎる」日本の携帯電話

日本で iPod が成功するかどうかは,しばらくホットな議論になるだろう。この記事では,日本のケータイに搭載された非常に高度な機能のほとんどが使われていないが,それでも「最新」であることが消費者に重視されているのだという。記事の最後に,林信行氏のコメントが掲載されている―

スマートフォンや高機能の『iPod』としてなら、そこそこ売れるかもしれないが、携帯電話が文化として根付いた日本の市場に、競合製品として食い込むのは難しいだろう。

つまり,日本では iPhone のポジショニングを新しいケータイではなく,新しい iPod に置くべきだということだ。ソフトバンクとしては,同社のフラッグシップとして売り出したいはずだが,さて,どうなるか・・・ (マーケティング戦略の事例研究(教育)に,まさにうってつけ!)。

・・・なんて考える時間を与えないかのように,iPhone 3G が7月11日に発売されるというニュースが飛び込んできた。「年内」なんてのんびりした話ではないのだ。最初からそう決まっていたのだろうから,次々サプライズを起こそうということか・・・ ソフトバンクモバイルあるいはアップルの広報戦略は今後注目である。

WIRED の記事に戻ると,過剰な属性は消費者から嫌われるという研究が最近多いなかで,逆にそれが「みせびらかし」の効用を生むという新たな(日本独自の?)仮説を提出しているともいえる。iPhone は日本のケータイに比べると機能は限られるが,デザインや GUI で優れている。日本の消費者に,どちらが「最新」と感じられ,見せびらかし効果があると感じられるだろうか?

・・・それはともかく,自分はどうするかという大問題もある。いまのところ,ドコモから乗り換えるのではなく,「研究用に」買い増すしかないと思っている。ただ,それでは誰からも電話がかかってこないので,電話として機能しないおそれもある(だったら iPod touch でいいじゃない,という説も一理あり)。


出張準備の日だが・・・

2008-06-09 23:51:21 | Weblog
朝のワイドショーでは,昨日秋葉原で起きた無差別殺傷事件を取り上げていた。たまたま近くにいたTV局のクルーが撮った映像,電気店の軒先にあったテレビカメラが捉えた映像が,そのときの状況を断片的に伝えている。

白昼,血だらけになって倒れている人のそばで,警官が周囲に誰か目撃者はいないかと叫んでいる。周囲の人々もぼう然と立ちつくしている。一瞬,そこで何が起きたのかよくわからない。誰もそんなことがここで起きると,わずかながらも予想していない。

番組で流れた映像のなかに,現場近くで記念写真らしきものを撮るメイドたちの姿が映っていた。たまたま撮影中に事件が起きたのか,状況が飲み込めず何か勘違いしたのか,その事情はよくわからない。TV局は気をつかったのか,誰だかわからないよう,ぼかしを入れていた。

犯人は,犯行の直前まで携帯から掲示板に書き込みをしていたらしい。地方から出てきて,メーカーで派遣社員として働いていたという。それをもって「ネット社会が生んだ」とか「格差社会の歪みが」とかいった論評が出てくるかもしれないが,そんな話はほとんど意味がない。

今日は授業も打ち合わせもなく,ひたすら金曜の発表に向けてパワポを作る。成田へどうやっていくかを調べる。Google デスクトップに次々と出てくるニュースを見ながら,仕事をし続けた。何か重い気分が心を支配している。