Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

異分野の同僚とのWS

2006-08-31 23:19:14 | Weblog
今日は朝から,ファカルティ「若手」を中心とするワークショップに参加。経済学,ゲーム理論,OR,都市工学…様々な分野の研究者の話を聞くが,どれもこれも難しくてなかなか理解できない。最後に出番が回ってきて「非」研究発表=話題提供としてロングテール論を紹介,議論のネタを提供した。

需要面の話ではあまり盛り上がらない。参加者に経済学者が多いこともあり,テール需要を統合する Amazon や Google が独占的地位を獲得したらどうなるか,という方向に話題を振ると,いろんな意見が出た。わずかであれ「いま」を議論できたことはよかったはずだ。

専門分野を超えた対話というのは本当に難しい。各人の研究テーマを聞いていても,そこからすぐリンケージが生まれる感じがしない。だが,それでもこういう試みは重要だろう。ボランティアでこの会を推進された幹事に多謝。こういう機会は他では得がたいとしたら,自分は恵まれた職場にいるのかもしれない。

追記: そのときは議論が噛み合っていないように思えても,あとから振り返ると,それによって自分が着実に進歩したと思える交流が重要だ。別に同僚である必要はない。そういう相手を何人か持てるだけで,人生は変わってくる。
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バズ・マーケティング

2006-08-30 17:31:10 | Weblog
マーク・ヒューズ『バズ・マーケティング』によると,バズは目的であって,手段ではないという。では何が手段かというと,クチコミであり,マスメディアである。本書にバズとは何かの定義は書かれていない。しかし,バズ・マーケティングとは,消費者がそのブランドを話題にするよう導くことだと明確に述べられている。わかりやすくいえば「話題性マーケティング」ということだ。

本書で紹介される成功事例の多くが,最終的にマスメディアをうまく動かし,パブリシティを獲得している。また,ありきたりのCMをいくら繰り返しても意味はないが,突出したクリエイティビティを持つCMが話題性を喚起させる上できわめて有効であるという。広告関係者でそのことに異論を唱える人はまずいないだろう。「話題性喚起」…これまでどれだけの企画書に,このことばが書かれてきたことか。

ではどうすれば,人々に話題にしてもらえるのだろう。本書に紹介されている興味深い事例を一般化すれば,誰でもバズを引き起こせるようになるだろうか…それができないから,最後はクリエイティビティが重要だという話になる。何が話題として受けるかは,相手によっても,状況によっても異なる。日常のささいな会話でさえ,話題をどう設定するかは非常に気を遣う。ここで何を話したら「受ける」かを教えてくれるロボットをつくることは,果たして可能だろうか?

「話題性」という手垢のついたことばに置き直すと,かえってその深さが感じられる。
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次の国際学会に向けて

2006-08-28 16:25:06 | Weblog
今年12月に大塚で開かれる Tsukuba-Tohoku Joint Workshop on New Directions of Research in Marketing .... Allenby が来るから階層ベイズ,というだけでなく,Meyer-Kahn 夫婦が来るから消費者行動寄りの発表にとっても,よい機会だ。申し込みの期限は9月末で,フルペーパーの提出期限が11月上旬。

来年7月,船堀で開かれる IMPS こと International Meeting of the Psychometric Society は,締め切りが来年3月。上述のと合わせて organizing committee の末席を汚している。枯れ木も山の賑わいということだが,それならついでに発表まですべきかもしれない。計量心理学の国際学会というと,敷居が高そうではあるが。

それに先立つ6月末に,シンガポールで Marketing Science Conference がある。締め切りは2/1。場所としては最高だ。今年行っていないし,できる限り行くべき学会であろう。ただ,日程が期末試験と重なるんじゃないかという不安・・・。何をどこで発表していくか。そろそろ今後1年の計画を考える必要がある。
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WCSS@京都大学 総括

2006-08-27 17:52:33 | Weblog
木曜午前中は Opinion Dynamics と Use of Data のセッションを行ったり来たり。どちらも非常に関心がある。データを使って Preference Dynamics を研究するというのが自分の最大のテーマだ。Empirical ABM などと勝手な概念を作っていたが,あちらでは Evidence-based ABM というようだ。いずれにしても,そうした研究も始まっているということだ。

今回,自分の発表が尻すぼみになってしまったのは,英語力を省みず内容を盛り込みすぎたためと,モデルと分析が冗長であったせいだろう。英語力が貧弱な日本人研究者が国際学会でアピールするには,誰も思いつかない鋭い着眼点,簡素にして美しい理論,あっと驚く結果,の3点のうち,少なくとも2つはいるんじゃないかと思う。

受けないよりは受けるほうがうれしい。これまで自分が海外で発表してまあまあ受けたのは,Individualized/Interactive (i2) Conjoint ぐらいか…(それは,共著者・片平先生のアイデアが素晴らしかったわけだが)。まあしかし,今回の研究も,方向自体は悪くないんじゃないかと思う。まだまだ改善の余地はある。

ABM の世界でカッコいい発表は,物理屋さんのそれが多いと感じる(対象が社会や経済であっても)。それだとぼくの出る幕は全くないわけだが,たとえばモデルの仮定を,心理学や認知科学,消費者行動研究の知見と対応させるという泥臭い部分に貢献の余地があるはずだ。物理出身の Huberman だって計算経済学(シミュレーション)と行動経済学(実験)の組み合わせが生産的だと指摘している。泥臭い部分をいかにスマートにするかも重要だ。

とにもかくにも夏休みが終わり,今週末から授業が始まる。研究のほうはしばらく ABM から離れ,実証系へシフトすることになろう。何から始めるか…で悩む前に,今週中に原稿2編を脱稿し,学内セミナーの準備をしなくては。

余談: 今回京都の一端に触れて,これまで食わず嫌いであったかなと痛感。「よいものはよい」のだ。実際,最後の日に美味しい料理にもありつけた。多くの観光客で混み合うだろうけど,今度は秋か冬に訪れてみたい。
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WCSS@京都大学 その2

2006-08-23 21:21:54 | Weblog
Emergence of Leader-Follower Structure ... の発表終了。コメント1はシミュレーションの初期条件への敏感さに関するもの。コメント2は,フロニゲン大学の Wander Jager から,みんながトレンドを追いかけるわけではなく,むしろトレンドに反することを選好する消費者もいるだろう,というもの。ABM をマーケティングに応用しようとする貴重な研究者だ。

論文を脱稿して半年近いから,けっこう細部を忘れていた。その状態で前日ぎりぎりにプレゼンの準備をするのは,物忘れと気力低下に悩まされる最近の自分には無理がある。問題は手を広げすぎていることよりも,一つひとつをとことん考え抜いていないことにある。あまり頭が良くない人間がいい研究をするには,集中と没頭(さらにはある種の狂気)しかないというのに。

関心と志向を共有できる研究者が少ないことは寂しくもあるが,チャンスでもある。ロングテール論がいうように,大儲けしようなどと思わない限りは,皆が振り向かないニッチに没頭して,少数だが熱烈な賞賛を受ける仕事をすればいい。そのためには,繰り返しになるが,このテーマだけは誰よりも深く考えている,といえなくてはならない。

[追記]Jagerさんのコメントの真意は,スノッブ効果もあるというよりは,本来的に多様なニッチへの欲求があるだろうという話だと思われる。

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WCSS@京都大学

2006-08-22 21:59:24 | Weblog
今日は World Congress on Social Simulation (WCSS)

午前中はホテルで発表資料の作成。百万遍に向かうバスの中で「ますたに」のことを思い出し,銀閣寺通りまで行くが,夏休みで閉店していた。百万遍に戻り,量だけが売り物のようなラーメンを食べ,京大会館に向かうが中はがらんとしている。パンフレットを見直すと,会場は「京都大学百周年記念時計台記念館」だった!

京大正門に戻る最中,雨がどしゃぶりになり,足は靴下までぐずぐずに。会場に着くとすぐ北中さんや柴さんに会った。参加者の大半は海外から。逆にいえば,日本でこの分野はどーなってるんだ,ということ。今日聞いた話のなかでは,Frank Schweitzer が印象に残る(招待講演だから当然とはいえ)。調べてみるとすごい人だ…うーむ世界は広い。明日の準備が終わっていないので,welcome reception を中座して帰る…。

「一筋」ということばが頭をよぎる。秋以降,消費者選好の形成・進化に関わる研究がどれだけのウェイトを占めるだろうか。当面やらねばならぬことをやりながら,どうやって,そのウェイトを高めていくことができるか。
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いろんなことが動き始める

2006-08-22 01:22:45 | Weblog
久しぶりに「広告主-代理店」研究の論文化の打ち合わせ。高田さんもまた,このまま放っておくと,せっかくの取材が無駄になると考えていることがわかった。では今後,ぼくは何をすべきだろうか。また,もう一人の共著者リンさんはどう考えているのだろう…。

先々週に「契約書」をお送りした某社は,今日が夏休み明け。手続きが完了すると「自動車」プロジェクトは本格始動する。ただし,ぼくだけが個人の立場で「契約」しリスクを背負うことになった。関係各位に安全対策の依頼メールを送ったが…。

「傾向スコアによる広告効果の検証」研究の新たなるデータも届く。傾向スコアを推定するうえで適切な変数をうまく構成できるだろうか。いつまとまった時間を取れるだろうか。すでに投稿済みの論文についても,秋には返事が来るはず…。

とりあえず朗報といえるのが,昨年秋に投稿した「CRM」論文へのレビューが返ってきたことだろう。再投稿の期限が11月に設定されているので,そうそう放ってはおけない。Tex をどうするのか,個人的にはそれも課題だ。

だが,いまそこにある危機は,水曜朝に迫ったWCSSでの発表用pptがまだ完成していないこと。そして,実は今日が締め切りなのに,半分くらいしか書けていない某依頼原稿だ。今日も明日も,京都の夜を楽しんでいる時間がない。

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快楽と思い出と創造

2006-08-20 18:22:09 | Weblog
茂木健一郎『ひらめき脳』を読む。コンパクトで読みやすい。茂木氏はTVにがんがん出ながら,同時にすごい勢いで本を出し続けている。そうなると中身はどうなるのか…。脳科学者がどう評価するかわからないが,ぼくにはいくつか面白い点があった。

・おいしい食事や魅力的な異性に対して大脳辺縁系の報酬系が活性化する。それと全く同じ現象が,ひらめきの瞬間に脳内で起きている(「ひらめきがとても気持ちのいいことであることを脳はすでに知っている」)。さらには,自分が好きな音楽の好きなパートを聴いたときにも起きる。

・創造することと思い出すことが脳の働きとして似ているという説がある。創造と記憶という一見相反する現象は,実は関連している。そのヒントになるのが「ど忘れ」したことを思い出すプロセス。これがひらめきのプロセスと似ている。

・感情と理性は一体化している。感情は報酬系を通じて理性を支えている。感情とは,不確実性への対応の仕方である。不確実性自体が,脳にとって報酬となることもある(あるいは,アイコンタクトといったことですら,報酬になる…)。

・セレンデピティ…これは難しい…

最初の問題だけでも大問題だ。なぜ美しい音楽を聴くことが,進化的基盤を比較的見出しやすい食や異性に対するのと同様に,快楽となるのか? 音楽のどこを美しいと感じるかには個人差があるので,種として共通の「簡単な」原理があるとは思えない。

感情の問題。これも昨年来,ますます気になっている。選好が感情に影響される,というか,大部分が感情そのものであることは間違いない。過去に膨大な研究があり,ただ立ち尽くすだけだ。心理学的実験研究のように「感情の刺激あり-なし」の統制実験を繰り返すことで,どこまで進めるのだろうか?

美や感情の持つ豊穣さを最大限維持し,かつ科学として最小限の規律を持った研究はどうすればいいか?

創造と記憶の親近性を踏まえて茂木氏が語るように,過去の(良質の)研究をできる限り広範に学ぶことが,創造の第一歩となる。そして,日常の様々な事象から,ひらめきを得ること。そして「意欲」だ。
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日本の優秀企業の条件

2006-08-19 21:20:19 | Weblog
新原浩朗『日本の優秀企業研究』を読む。3年前に評判をとり,いまや文庫本にもなった。財務状況が非常に優れたいくつかの日本企業を対象とし,トップインタビューを含む調査を行ない,それらの企業に共通する6つの条件を導出している。日本版「ビジョナリーカンパニー」といえばよいか。

この本を読んだのは,9月からの(もうすぐだ!)2年生向け演習の教材にしようと思ったから。その点では非常バランスがとれ,優れた本だと思う。ただ…もし同じような研究を志す学生が現れたらどうしよう? 経産省の課長である著者のごとく,大企業のトップやマネジャーに簡単にインタビューできるだろうか? 

さらにオフレコの取材が多いせいか,この本ではどのようにその情報を得たのかが,ほとんど記述されていない。つまり,実証研究の方法論を学ぶテキストにはなり得ない。

この本の特色の一つは,補論コラムをいくつも設けて,最新の経済理論に基づく解説がなされていること。ただ,その内容をきちんと理解するには,この分野に相当通じていないと無理だろう。大学生はもちろん,ビジネススクールの学生だって,そこは飛ばしたほうがいい。

不思議な本だ。話題豊富で,まとまっていて,読みやすい。しかし,そのメッセージは天から降ってきたような感じがある。「反証可能性」がないという意味では「科学」ではない? それは,ヒヤリングベースの経営研究が抱える永遠の課題でもある。難しい。
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団塊の世代の性差

2006-08-19 13:15:47 | Weblog
三浦展氏と文藝春秋が今年3月に行なった,団塊の世代(1947~49年生まれ男女)約2,000人に対する意識調査が報告されている(同誌9月号)。そのなかで興味を引くのが,階層帰属意識に関する団塊の世代内の男女差である。男性のほうが「下流意識」(下と中の下)を持つ人が多いこと。さらに,男性(特に高学歴者)のほうが民主党支持が多いこと。

団塊・高学歴・男性セグメントの特殊性なのか,性別,世代,学歴の間にある,より一般的な効果が反映されているのか,他の世代のデータがないため,全く分からない(・・・であるのに,個々の数値を見て「これは高い!」「低い!」と論じていく著者の「手さばき」は相変わらずである)。

もっとも,壮年(あるいは老年の)男性は保守的で,若者や女性が反保守的,というかつてのステレオタイプが崩れてしまったことはほぼ間違いない。靖国をめぐる最近の議論では,靖国神社の国家護持的な主張をする女性の論者が,年齢を問わず増えているような印象がある。新たなる「靖国の母」の登場か・・・?
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ロングテールの誤解

2006-08-14 10:09:42 | Weblog
ロングテール論はパレートの法則(80:20の法則)を否定する,新たなビジネスモデルを提案しているという。しかし,The Long Tail を読むと,こうした言い方には誤解を招きやすい部分があることがわかる。Anderson は,消費者のアイテム別需要がベキ則に従うとする。これは,従来型ビジネスでもEビジネスでも変わらない(ただし前者では,テールの先が切断される)。

違いは,従来型ビジネスでは収入が集中するヘッドの部分を重視してテールを切り捨てる戦略が推奨されてきたが(CRM!!),一部のEビジネスにおいて,ITを用いてテールの部分からも幅広く利益を上げる戦略が登場してきた点にある。テールから上がる収入がどれだけかについて,確かに過去に過大な数値が出されて問題になったが,Anderson はこの本でそのあたりを軌道修正している。さらにいえば,現段階でそうした数値を議論することが,さほど重要とは思われない。

ロングテール論には他にも批判がある。たとえば東谷暁氏は,ロングテール論は実証的基盤を欠いているという(文藝春秋8月号)。The Long Tail にはいくつか数値を伴う事例が出ているが,もっと「科学的な」扱いが必要だというのだろうか。その点ではすでに Brynjolfsson たちの研究があるし,こうしたおいしいテーマを米国を中心とする一騎当千の研究者たちが見逃しているとは思えない。反証も含め,今後続々出てくるだろう。あの Hal Varian が Google の研究員をしているというのも,どういう目的か知らないが,期待が持てる。

マーケティング・サイエンスの立場からも,いくつか興味深い研究課題を想定できる。いまそれを某学会誌の依頼で書いているが…締め切りに間に合うか。
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gooとcocolog

2006-08-12 23:52:33 | Weblog
6月下旬に goo にブログを新設したが,cocolog に残した以前のブログにもちょこちょこ書いてきた。圧倒的にアクセスは少ないが,cocolog 自体の機能が最近よくなってきて,そちらもなかなかいいかなと。とはいえ goo も捨てがたい面があり,なかなか難しい。最終的にはひとつにすべきだろうけど…しばらくこのままで。
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佐世保というテール

2006-08-11 23:33:34 | Weblog
長崎での仕事を終えて,水曜の午後,佐世保に向かった。昨年の卒業生,さねふじ君と会い,鯵の活き造り→外国人バー(グラモフォン)→ジャズバー(いーぜる)→ラーメン。翌日は,一人で佐世保バーガー(ヒカリ)→海上自衛隊史料館(セイルタワー)。

佐世保はバーガーとジャズを観光資源にする戦略だという。ほんのわずかな時間だけ,それらを体験した。いーぜるは楽しかったし,他のバーやバーガー店も回ってみたいが,これだけで吸引力になるのだろうか。長崎空港へ1時間半というのも,ちょっと遠い。今回足を伸ばせなかったが,九十九島とか,そちらのほうが魅力的なのではないか。

雲仙にしても平戸にしても,あるいは五島列島にしても,長崎は尻尾のほうに様々な観光資源を持つ。その長崎は,九州の尻尾といえるかもしれない(尻尾が上にあるというのも変だが)。そして九州自体が日本の尻尾なのではないか。なお,尻尾というのは,The Long Tail を読んだばかりのぼくにとって,ほめことばである。

補足するなら,尻尾をうまくリンクして,ビジネス化する仕掛け(aggregator)が必要だ。それは観光ビジネスにとって何か…新しい旅行代理業だろうか? いずれにしても,8月の長崎・佐世保は暑すぎて,昼間はとても動けない。涼しい季節に何日もかけて島々を巡り,鯨肉や牛肉など,それぞれの土地の美味を楽しむという日がいつか来ないか…。
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ターゲティングの奥に潜む集合性

2006-08-11 22:33:12 | Weblog
水曜日,非常勤の最終日。シャンプー(LUX,TSUBAKI,スーパーマイルド)を題材に,学生に「マーケティング戦略」を考えてもらう。ターゲットを広げる(変える),アイテムを追加する,といった提案が多いので,ターゲットを拡散しないほうがいい,と「型通り」コメントする。

だが,それが正しいことをどう証明できるだろうか? マーケターの戦略を外部から把握しにくいことに加え,そのターゲティングが功を奏したかどうかをデータで裏づけることはきわめて難しい。なぜなら,マスプロ製品であり限り,店頭で幅広い消費者の目に触れ,TV広告もまた広範に露出されるからだ。

マーケティング戦略の定石,より的確なターゲティングを行なう,ということの有効性さえ,確たる「証拠」がない。もちろん,多くのマーケターが,経験を通じてそれを確かめてきたといえるかもしれない。だが,上述のようなマス・マーケティング環境では,どんなターゲティングを立案していようと,結果的に幅広い消費者に到達してしまい,その効果は識別しにくい。

ターゲティングが実際に市場で起きていることを反映しているかどうかは別にして,マーケターに一貫性のあるプランを考えさせる効用があるかもしれない。誰か特定の一人を読者に想定して創作された作品が,無関係な多くの人々を感動させるのと似たような話だ。それは,異質な個人の背後に,何か集合性のようなものがある,ということか。

「夏休みの宿題」で読んでいるThe Long Tail の最後のほうに Hit OR Niche から Hit AND Niche へ,というスローガンが出てくる。これを拡大解釈すると,上の議論につながるような気がする。アンダーソンのロングテール論は,ニッチ市場の単なる礼賛では終わっていない(様々な批判への防衛線ともいえるが)。…話がそれてきたので,ここでひとまず終了。

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ウェブと地域社会資本

2006-08-09 00:22:43 | Weblog
いま,長崎で教えている学生は「情報メディア学科」に属する。だからかどうか,PCもネットも使いこなす。しかし,ブログを書いたりSNSに参加しているか,@コスメを見たことがあるか(学生の半分以上が女子),iPodを持っているか,などとと聞いても,該当者が意外に少ないのだ。

シャイだから遠慮している,という可能性はある。しかし,もう一つの可能性は…全くの思いつきだが,地域を超えて,距離という概念を無意味化したはずのウェブの世界に,意外と,地域という,ある意味フェイストゥーフェイスの社会関係のあり方が作用しているのではないかということ。

いま流行の社会関係資本(social capital)の議論を援用すれば,地域に根ざす社会資本がウェブ利用の深さに影響する,という仮説になる。それが正しいかどうかの検証を,せっかく長崎に来る機会とうまく結びつけることができるといいのだが…。単なる思いつきです。
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