Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

「赤い研究」が始まる

2014-04-07 10:19:11 | Weblog
プロ野球が開幕。セ・リーグでは大方の予想通りジャイアンツが断トツのパワーを発揮しているが、カープも頑張って現在同率首位。明日からの3連戦で3連敗すると3ゲーム差になるが、1敗だけなら1ゲーム差で済む(3連勝なら大歓迎だw)。どうなることか ...

今年から、自分にとってプロ野球は個人的応援対象から本格的研究対象になる。親しい「カープ研究者」を糾合し、選手やスタッフのデータに対する組織論的研究、ファンのデータに対する消費者行動論的研究を秋の某学会で発表する準備が整った。あとはやるのみだ。

研究となると、情熱は秘めつつも客観的なスタンスが求められる(Cool head but warm heart …)。敵チームを応援するファンの心情を理解し、その球団の経営力のよい点を認めることが必要だ。そのことは苦痛だが、より高次の野球の楽しみ方を覚える契機になる。

また、学術的研究のつねとして先行研究のレビューが欠かせない。メンバーに集めていただいた論文はすでに膨大な数にのぼっている(スポーツ経営やスポーツ心理という従来からある学問の存在に加え、最近、スポーツの計量的・数理的研究は増える一方なのだ)。

そういう意味での必読文献ではないが、素のファンに戻ったとき、以下のような特集が出版されるカープの勢いに後押しされる。カドカワさん、ベースボールマガジンさん、ありがとう!

別冊カドカワ
総力特集 広島東洋カープ 2014
KADOKAWA/角川マガジンズ

週刊 ベースボール
2014年 4/14号
ベースボール・マガジン社
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経営学とゲーム理論から学ぶ夜

2014-04-05 15:24:03 | Weblog
昨日は JIMS マーケティング・ダイナミクス部会に慶応大学の三橋平先生、筑波大学の石川竜一郎先生をお招きして、ご研究を伺った。経営学(マクロ組織論)を専門とする三橋さんは、スポーツ競技において順位が途中でわかることが選手のパフォーマンス(の評価)に与える影響を分析する。

先行研究に、ゴルフトーナメントにタイガーウッズが出場するかどうかで、他の選手のパフォーマンスが変わることを示したものがある。タイガーウッズが出ると、他の選手は勝ち目が薄くなると感じてモチベーションを低下させる。これをタイガーウッズ効果と呼ぶという。

三橋さんは、こうした他選手の効果をもっと掘り下げ、類型化する。さらには、フィギュアスケートを対象にすることで、ジャッジの役割を新たに加える。ジャッジが、選手のパフォーマンスがそれまでの順位に依存することを織り込むことで、バイアスを持つことを立証する。

こうした評価対象の順位が自己の評価に与える影響に関する議論は、消費者行動でいうコンテクスト効果とどこかでつながるかもしれない。あるいは、自分たちが2位であることを強調した、かつての Avis の広告のように、シェアの順位がブランド選好に及ぼす効果もありそうだ。

ゲーム理論に認知的要素を導入した研究を行う石川さんは、バブルに関する被験者実験を報告された。トレーダーが合理的なら証券の売買はファンダメンタル・バリューにしたがって行われ、バブルは生じない。しかし、実験を行うと発生することが過去の研究で示されている。

それについては、トレーダーが他のトレーダーの合理性に疑いを持っているからだという解釈が行われてきたが、石川さんたちは、それを覆す実験を行う。被験者たちに取引を何度も経験させると、バブルは生じなくなる。そこに経験を持たないトレーダーを途中参加させる。

従来の解釈だと、経験のない新入りの参加で他のトレーダーがバブルを予測し、それが実現するはずだが、そうはならなかった。そこから、石川さんたちは、トレーダーたちは他者について考えるのでなく、自分たちの経験からの学習に基づいて行動していたのだと結論づける。

石川竜一郎氏・編著の本↓

制度と認識の経済学
船木由喜彦・石川竜一郎
エヌティティ出版

お二人の研究では、期せずして、競争において相手の心を読むことが重要なポイントになっていた。しかも、相手の行動ではなく、モチベーションとか合理性とかいった、深いレベルの心的状態を読むかどうかである。これは実は身近な問題で、自分もまた日々悩まされている。

また、真摯な研究態度や緻密な論理構成など、学ぶべきことが多かった。畏友の研究のますますの発展が楽しみだ。
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予測の達人が語る、予測成功の秘訣

2014-04-03 14:48:40 | Weblog
米国の大統領選挙の結果予測を的中させたことで有名な(という説明が必ずつく)ネイト・シルバー氏の著書。何だか怪しそうだし、後づけの自慢話ばかりかと思って読んだら全然そんなことはなかった。むしろ、予測の難しさに関する、きわめて真面目な議論が行われている。

シルバーは選挙予測の前はプロ野球の予測で成功している。そこには、同じルールのもとで毎年100試合以上、イニングでいえば約1,000回は繰り返されるデータがある。したがって、統計的な分析に最も適しているといえる。では、政治や経済、天気や地震はどうなのか?

シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」
ネイト・シルバー
日経BP社

彼が次に選んだのは、選挙である。米国の大統領選挙は予備選挙も含めて何度も各地で行われ、世論調査もひんぱんに繰り返されている。二大政党制が維持され、イデオロギーの分布も安定していそうだ。だから予測しやすい・・・といってもシルバー以外は必ずしも成功していない。

なぜなのか。彼が挙げる予測が失敗する要因の一つは、特定の理論・モデルへのこだわりだ。学者の場合、それはやむをえない。しかし、予測の実務家は、なるべく多くの、異なる考え方に立つモデルを用いてさまざまな予測を行い、それらを比較・総合して判断すべきだという。

また、シルバーはベイズ統計学の考え方を強く支持する。「適切な事前分布」を用いることで予測は改善される。また、新たな情報が加わったとき、予測の更新が系統的に行える。予測の実務家にとって、複数のモデルによる予測を統合するのにもベイズは使えるのかもしれない。

本書では、選挙や野球以外にも、天気、地震、感染症、ギャンブル、チェス、ポーカー、経済・金融、地球温暖化、テロなどの話題を次々に取り上げる。著者は、各分野の予測の専門家を訪ね、そこでの予測のやり方や難しさを取材していく。意外な話が多くて、大変興味深い。

自分の関心でいえば、感染症の予測の章が面白かった。最初は単純な SIR モデルが使われていたが予測精度が低いので、最近ではエージェントベース・モデルが構築されているという。もちろんそれでも予測精度がそう高いわけではない。ただし、予測以外の知見が重要だという。

予測の成功で名声を得たネイト・シルバーは、それに伴う富と時間を予測の成功に関する取材と思索に費やした。それは彼に新たな名声を与え、完璧な予測は不可能だが、努力により的中確率をある程度改善できるという、ある意味で平凡な主張にも輝かしさを与えることになった。

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