Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

動き,つくる@つくばと笠間

2009-01-12 23:22:40 | Weblog
昨日は笠間に行く。茨城県陶芸博物館では,茨城にゆかりのある板谷波山,松井康成という陶芸家に焦点を当てた展示をしていた。ぼくのような素人にも,これはすごいと思わせるのが,練上という手法で作られた松井康成の作品である。多彩な色や微細なひび割れが,ゆらぎを伴う反復で構成されている。前日の講義で聞いた Class 4 ということばが頭をよぎる。

すぐれた陶磁器を鑑賞し続けることで,いずれその価値を見極める眼を養うことができるだろうか。それは,社会的に共有された価値序列を学習するということなのか,それとも普遍的な美に目覚めるということなのか。その差異を厳密に区別することはできるのか。それを示す実験は可能だろうか。ぼくにとって,ワインのテイスティングの研究以来,未解決の問題意識である。

そして今日は池上さんの講義2日目。いよいよ『動きが生命を作る』の中心テーマに話が進む。取り上げられるのは,ビークル,油滴,アート。生命を「中間層」として研究する方法論としての人工生命。それは,かつて耳にしたラングトンやレイの研究を超えて進んでいる。油滴を通じて,化学システムとしての人工生命まで研究が及んでいるのには驚いた。そしてデジタル音楽。

動きが生命をつくる―生命と意識への構成論的アプローチ
池上 高志
青土社

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池上さんの主な関心は一貫して生命に向けられているが,ぼくの関心はそれよりは「社会」,あるいはもっと俗っぽい消費の世界にある。そこでの構成論的なアプローチの可能性について,かつてないほど肯定的な気持ちになっているが,現実はなかなかそれを許さない。明日からは,たまりにたまったマーケティング・データの解析の宿題をこなさなくてはならない。

もちろん,データ解析を構成論的(constructive),生成的(generative)アプローチと対置させるのは,安易すぎると思われる。ステレオタイプを脱却して,手を動かさなくてはだめだ。そして,ときどき自己を客体化して反省すること。そのためには「旅」というプロセスが欠かせない。今回のつくば~笠間~つくばの旅のような機会を人生に織り込んでいく必要がある。