クチコミに対するマーケティングサイエンス(というよりぼく個人?)の夢は,実社会の消費者間ネットワークをまるごと再現し,そこで情報伝播~意思決定のシミュレーションを行なうことだ。だが,そんなことが可能なのか?学校や企業,あるいはソーシャルメディア内の社会ネットワークはうまくすれば観測できる。しかし,たとえば日本の消費者をすべてカバーする大規模ネットワークを把握することができるだろうか?
本書では,一種のスノーボーリング・サンプリングを組み込んだ消費者調査を用い,複雑ネットワークの理論に基づきながら,大規模な社会ネットワークを人工的に構成する方法が提案されている。そのうえでマーケティング戦略のエージェント・シミュレーションを行なう。この研究は東大の池田謙一研究室と日本電気の共同プロジェクトとして,かなりのコストをかけて行なわれた模様。その概要が公開されたことを喜びたい。
たいした研究費のない大学の研究者が,単独で同じような研究をすることは無理だが,潤沢なマーケティング R&D 予算を持つ企業の協力があれば,同様の取り組みは可能だろう。その際,この研究をどう超えていくかが目標となる。本書に示された先駆的な挑戦に敬意を抱きつつ,残された問題をどう解決するかを考えねばならない。最大のポイントは,消費者調査から構成される大規模社会ネットワークの妥当性である。
その意味で,発想を大幅に転換して,既存の調査資源を用いて「同じ目的を果たすモデル」を開発することも視野に入れるべきだろう。簡単ではないが,不可能ではないと思う。
本書では,一種のスノーボーリング・サンプリングを組み込んだ消費者調査を用い,複雑ネットワークの理論に基づきながら,大規模な社会ネットワークを人工的に構成する方法が提案されている。そのうえでマーケティング戦略のエージェント・シミュレーションを行なう。この研究は東大の池田謙一研究室と日本電気の共同プロジェクトとして,かなりのコストをかけて行なわれた模様。その概要が公開されたことを喜びたい。
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たいした研究費のない大学の研究者が,単独で同じような研究をすることは無理だが,潤沢なマーケティング R&D 予算を持つ企業の協力があれば,同様の取り組みは可能だろう。その際,この研究をどう超えていくかが目標となる。本書に示された先駆的な挑戦に敬意を抱きつつ,残された問題をどう解決するかを考えねばならない。最大のポイントは,消費者調査から構成される大規模社会ネットワークの妥当性である。
その意味で,発想を大幅に転換して,既存の調査資源を用いて「同じ目的を果たすモデル」を開発することも視野に入れるべきだろう。簡単ではないが,不可能ではないと思う。