Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

送別会と歓迎会

2008-09-30 09:35:38 | Weblog
昨日,前任校に向かう。学食で,鶏の唐揚げのカレー和えを食べるのは,これで最後になるのかどうか…。研究室の最後の片付けはすぐに終わった。「サービス」のパンフレット打ち合わせに続いて「脳」実験の打ち合わせに参加。その後鍵や駐車場のカードを返し,送別会に向かう。最近開店したらしい,オシャレな寿司ダイニングで10人強の「元」同僚と飲む。大半が経済学者だ。これからあまり経済学の悪口はいえない。

5年半勤めた職場。後ろ髪を引かれる思いは確かにある。だが,そんな感傷とは無関係に日々の業務は粛々と行われ,一方で組織の新陳代謝も着々と進んでいくものなのだ。とにかく,自分に与えられた「持ち場」で頑張るしかない。それにしても,終電の時間的制約があったおかげで,飲み過ぎをある限度までに食い止めることができた。ぼくが中座したあと,会がどこまで盛り上がり,燃え尽きたかは知る由もない。

今日は,新たな職場の教授会に初めて臨む。短い挨拶を行ったあと,自分の出席資格の承認が議題になる間,一瞬退席する。そのあと約2時間,会議が続く。毎回これぐらいなら,いいのだが・・・。前に座っておられた先生が「関係者」で歓迎会をしようと提案。ありがたいことです。

まず覚えなくてはならないのは,物品購入の仕方,出張手続き,図書館(特に電子ジャーナル)の使い方など。いまのところ,手続きは全般に,前の職場より楽になったという印象を受ける。とはいえ,いままでは経費で買えたが,これからは買えないものもある。どうして大学間でこういう違いが生まれるのか,不思議である。

秋です

2008-09-27 23:48:34 | Weblog
涼しくなってきた。そろそろ長袖を着たほうがよさそうだ。

昨日から統計学の講義の後半戦が始まる。商学・経営学を学ぶ学生にとって,将来使う可能性が高い手法は,何といっても回帰分析だろう。しかし,統計学の文系向け入門書を見ると,単回帰までしか記述されていないケースが多い。確かに線形代数や微積を使わずに重回帰を教えるのは簡単ではない。本講義で教科書に指定している南風原『心理統計学の基礎』では重回帰を扱っている。ただ,そこで採用されている幾何学的な説明が,わが受講者たちにどこまで受け入れられるか…。

2年生向けゼミでは『数学で犯罪を解決する』を読み始める。この本は,犯罪捜査という誰もが興味を持てるテーマに,様々な数量モデルを紹介している。文系学生に数量分析を学習する動機づけにならないかと考えて採用したが,学生たちに第1章の感想を聞いても,うーん…と唸るだけだ。まぁ,徐々になじんでいってもらうしかないんだが・・・。なお,この本では,数式が詳しく説明されているわけではなく,式に一部誤植と思われる箇所があることから,初学者より,ある程度心得がある人に向いているのは間違いない。

数学で犯罪を解決する
キース・デブリン,ゲーリー・ローデン
ダイヤモンド社

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今日は引っ越しで積み残した荷物を,新しい職場まで車で運ぶ。研究室の書架に本を並べてみるが,段ボールにして10箱ほどがあふれることが判明。本棚があと2つあれば何とかなるんだが・・・。授業の準備,調査や実験の準備,セミナーや学会・・・ それとともに,本を買ったり出張したりする「手続き」を新たに覚える必要がある。この10月はかなりヤバい月になりそうだ。

物理学と心理学の再結合

2008-09-26 10:18:32 | Weblog
昨日から授業が始まる。外書購読では,"How Breakthroughs Happen" を読み始める。著者は,エジソンやフォードの例を引きながら,イノベーションとは基本的に既存技術の再結合であると主張する。そして,その担い手としての technology broker という概念を提案する。そこでは複雑ネットワークの議論も意識されている。ネットワークとクリエイティビティを関連づけることで,どういう話が出てくるかが楽しみだ。

How Breakthroughs Happen: The Surprising Truth About How Companies Innovate

Harvard Business School Pr

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「Cマーケティング」の講義は後半へ。前学期は一般的な?マーケティング・サイエンス入門であったが,いよいよ「クリエイティブ」な側面を強めていく。10月は普及モデルとネットワークの話をする。11月は実務家を何人かお呼びし,Eマーケティングのアプローチを学ぶ。その後,デザインや消費者のクリエイティビティ志向を取り上げる予定。これらの話題を試験管に入れ,よく振って加熱したら「クリエイティブ」マーケティングのプロトタイプが出てくると期待している。再結合によるイノベーション… それをみずからも実践したい。

夕方から消費者間相互作用とダイナミクスの研究会。経済物理学の第一線にいる,京大の佐藤さんから最近の研究について伺う。話は人間の意思決定速度の計測から始まる。それよりも高頻度の膨大な量のデータが,金融でもマーケティングでも蓄積されつつある。それらを,従来の経済学のように人間行動に対する強い仮定をおかず,あたかも自然現象のように,その統計的なふるまいを分析するのが経済物理学だ。そこから観察されるパタンは,しばしば既存理論にとってのアノマリーになる。

なぜそうした現象が生じるのかを説明するのに,佐藤さんは感情や無意識の役割に注目する。そして主体間の相互作用が無視できないので,エージェント・シミュレーションを導入する。つまり,経済物理学者はまず,膨大なデータを骨太に分析して,マクロレベルで安定的に観察される規則性を見出す。次いでそのミクロ的基礎を経済学よりは心理学的な要因に求める。なぜそうするのかを一言でいえば,リアイリティへのこだわり,ということだろう。

二次会で佐藤さんを囲みさらに議論。まずはデータの観察から始まるアプローチは,数理ファイナンスの研究者たちには違和感を持たれるという。彼らは最初から最後まで数学的に議論することを望む。そこが,同じく数理モデルを使いながら,物理学者とは違うところらしい。一方,経済学者はいうまでもなく主体にもう少し合理性を持たせたいと願う。それは,極論すれば「思い込み」の違いでしかないが,それなりの伝統を踏まえたことでもある。僭越ながら,異なる立場で前向きの対話が起きるとより生産的だと思う。

エージェント・シミュレーションにも問題はある。一般にあまりに多くのパラメタを使うので,シミュレーション結果の一般性がどうやっても保証されにくいことだ。したがって,「予測」はもちろんのこと,「説明」に用いる場合でも,最尤推定のようなロジックを持ちにくい。そこで,「説明」「予測」に代わる原理として,「シナリオ」の有用性に注目する議論が,エージェントベースのコミュニティで登場している。ぼく個人もそれには同意するが,適切な評価尺度がないことがネックになっている。このあたりも,大きな課題である。

佐藤さんが冒頭に述べたように,巨大かつ精細なデータ群が登場することで,ここ10年ほどで,社会-経済物理学という新しい学問分野が発展してきた。従来からあるデータマイニングは,基本的にアドホックなルールやパタンを発見してきたが,経済物理学は,必ずしもすぐに使えるわけではないが,より一般性の高い知識を提供しようとする。米国の金融危機によって金融工学者たちにも強い淘汰圧が働く結果,新たなタイプのクウォンツたちが登場してくるかもしれない。

撤退作業,終わらず

2008-09-24 23:50:38 | Weblog
朝から旧・研究室の最後の整理を開始。途中で,宿舎の退去手続きに行く。管理人があちこちを「査定」し,業者がクリーニングや補修の見積もりを出す。大学に戻って,各種「機密文書」をシュレッダーにかける。あっという間にゴミ袋がいっぱいになり,何度も袋を代える。あともうひと束,というところで機械がオーバーヒートして動かなくなる。時間も遅い。後日,また来て作業することに。

昼飯をどうするか,ラーメンの「戎」「青葉」,カレーの「香辛飯屋」等々が候補にのぼるが,結局「いっとく」にした。中毒性のある独特のスープと太麺。店が売り物にする叉焼ではなく,いつものように「味付タマゴ」と「キャベツ」をトッピング。お勘定のとき「10月から値上げします」と申し訳なさそうにいわれ,少し複雑な思いに。

さらには,今月いっぱいの会費を払ってあるジムにもう一度行ってみたいとか,10月末に期限となるドラックストアのクーポン券や数千円は残っているガソリンスタンドの洗車カードを使い切りたい,とかいう思いに苛まれる。ちっちぇーかな,オレは…。

眠い

2008-09-23 23:29:09 | Weblog
木曜から授業が始まる。その準備があるのに,今日はやたらと眠い日であった。昨夜遅くまで,転職のご挨拶をメールで送信すべく,過去のメールを検索しながら名簿を作成したせいだろうか。あるいは,たまった疲れのせいか…。

挨拶メールに,何通もお返事をいただく。それぞれのコメントが,その方のお人柄を反映している。たまにしか会わない間柄でも,気の利いたメッセージをいただくと非常にうれしい。自分もまた,そうしたことができる人間になりたい,

日中車を運転していると,ラジオで西武ライオンズが優勝目前,球場にはまだ空席があるので,お近くのファンの方はぜひ球場へ,と告げていた。結局は楽天に逆転されたが,こんなとき急遽駆けつけることができる,余裕ある生活がしたい。

  西武ファンではないものの…

明日は前任校に行き,研究室の最後の整理と掃除を行う。

Preference Management

2008-09-21 23:12:48 | Weblog
このところの「引っ越し騒動」の間に届いた重要な本が The Construction of Preference だ。選好は可塑的であり,状況のなかで「構築」ないし「構成」される,と主張した Payne, Bettman and Johhnson 1993 以降の研究の到達点がここにある。前半は preference reversal (選好の測定方法による非一貫性)に関する論文が収められているが,後半はより広範な話題が取り上げられる。そして結びの章は,preference management に捧げられている。つまり,このテーマこそ,今後の課題として最重要であることが示唆されている。

The Construction of Preference

Cambridge University Press

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このような消費者行動研究(CB)の発展に,モデリングを旨とするマーケティング・サイエンスはどう応えるのだろうか。ぼくの知る限り,主流派はほとんど目もくれていない。そんな話は,CB の連中が大好きな重箱の隅をつつく議論にすぎない,選好が不安定で状況依存的だなんてことになると,せっかく「精緻に」測定した消費者モデルが使えなくなる,冗談じゃねぇ,といったところだろうか。しかし,現実のマーケティング環境の変化に目を向けると,そうとばかりいっていられないはずだ。

マス・マーケティングの場合,個々人の選好に多少のゆらぎがあっても,集計レベルの反応関数が安定していれば問題はない。しかし,121マーケティングでは,個々人の選好の不安定性や変化は,そう簡単に無視できない問題ではなかろうか。優れたセール(ウー)マンは,選好の可塑性をむしろ自分に有利なように利用する。相手の様子を見ながら当意即妙の応答をしつつ,満足いく領域に着地させる。こうした preference management をどう「科学」するか,そういう研究をしようという人がもっと増えるとうれしいんだが…。

日本発の経営研究とは

2008-09-20 20:29:57 | Weblog
最近,本や雑誌を捨てることばかり考えているが,一方,新たな文献を買わなくては,知識は更新されない。最近買ったものに,以下の2つの雑誌がある。まずは,一橋ビジネスレビュー… 経営学で 21世紀COE をとった一橋大,神戸大,東京大が順に特集を組む。今回はその最終回。そのタイトルは「日本発ものづくり経営学」だ。
一橋ビジネスレビュー 2008年夏号

東洋経済新報社

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日本が独自の経営学を持つとしたら,「ものづくり」に注目するのは当然だろう。その典型は自動車産業であり,製造業だ。しかし,そこを越えていかないと,日本経済にも日本の経営学にも未来はない。だからこの特集でも,具承桓他「ものづくり概念のサービス業への適用」のような方向性が示されている。「ものづくり」をシステム論的に捉えるならば,サービス業への拡張はごく自然な流れだ。最近,経産省が力を入れる「サービス工学」も,基本的に同じ方向を目指している。

だが,既存のものづくりノウハウを転用することで,日本のサービス業が高い付加価値創出力と国際競争力を持つようになるかというと,それだけで十分とは思えない。それは,強いといわれる日本の製造業もまだ実現できていないものであり,製造業/サービス業という産業分類を超えた,共通の目標といってもよい。ただし,リーマンの破綻を見ていると,米国のサービス産業が盤石だとも思えない。その意味で「日本発」というこだわりには価値がある。

日本発の経営学あるいはマーケティングが究明すべきかを考えると,やはり,藤本-Clark がかつて指摘したインテグリティ(integrity)という概念に回帰する。それは,単に製品の技術属性を超えて,サービスやセールス,マーケティング・コミュニケーションにまで及ぶべきものだ。したがって,サービス業にとっても,施設や機器という「もの」をシステムの一部に含むインテグリティを考えることができる。

マーケティング・サイエンスにとって,インテグリティという概念を追求することは,大きな挑戦になる。なぜなら全体が部分の総和ではない,という言い古された命題を受けとめざるを得ないからだ。たとえばブランドという本質的にインテグラルなものを,どういう方法であれ,多次元的な尺度の加重和で評価しようとするのではその真価を見失う。もっともぼく自身,これまでそういうアプローチに親しんできたし,そこから脱却する正しい方法を確立しているわけではない。

2冊目に買ったのは,アテスという雑誌だ。そこでは「トヨタの秘密。」が特集されている。そこで紹介されているトヨタの様々な姿は万華鏡のようで,何がトヨタかを一言で語るのは簡単ではない。興味深いのは,表紙にも使われている,劇画に描かれたトヨタ車の姿である。クルマ好きの人々にとって,トヨタとは何だったのか,そこから読み取れるかもしれない。時間がとれたらそれらの劇画を「大人買い」してみようかと思う(趣味と実益を兼ねたフィールドリサーチだ!)。

ATES (アテス) 2008年 10月号 [雑誌]

阪急コミュニケーションズ

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特集のなかに「トヨタ本」の紹介記事がある。国際的にも有名な,門田安弘『トヨタプロダクションシステム』が含まれていないのはどういうわけだ? ともかく,トヨタがつねに将来に危機感を抱き,安住ということばを知らない企業だとすると,現在のシステムを絶賛する本をいくら読んでも,トヨタの未来は読めないはず。トヨタは今後,ものづくりにこだわりながら,一方でますます「サービス化」の様相を強めていくと思われる。そこからどんなインテグリティが生まれるか,そこまではこの特集に書かれていない。


新しい研究室へ

2008-09-19 23:16:35 | Weblog
新しい職場の研究室に荷物を搬入した。まずは2台のPCを設置する。マルチスレッドの時代に物理的「マルチタスク」は意味はあるのか… プリンタも2台ある。カラー/両面印刷できるマシンはトナーが高いから,ローエンドのレーザープリンターも併用しているが,これもあんまり意味がないかも… と思いつつ,まずは過去の環境を復元することに努める。山積する仕事を円滑に片づけるのには,環境に断絶がないほうがよい。

PC を LAN につなぐが,それだけではインターネットにつながらない。初期設定が必要だが,手元にマニュアルがないので,サポートの方を呼ぶ。丁寧にいろいろ説明してくださる。この大学では,LAN に固定的につながる PC はすべて登録しなくてはならない。セキュリティがかなり厳しく設定されている。研究室へ深夜出入りできなさそうなことも辛い(これまでが,おおらか過ぎたのだろうけど…)。

背が高めの本棚が4段。これ以上増設は許されないとのこと。半分以下に減らしてきた本だが,とてもすべて並べきれないので,新たなる絞り込みが必要だ。手放しがたいが,当面/しょっちゅう見ないものは,ダンボール箱に入れておくしかない(その結果,まず開かれることはなくなるだろうけど…)。それにしても,大量の蔵書を保有するというのは,とてつもなく贅沢なことだと思う。論文のように電子化できれば,そんな問題は霧散するのだが…。

だが,書架の整理ばかりしてられない。来週から授業と演習が4コマが始まる。その準備だけで日々忙しいはず。「サービス・イノベーション」は,いま休止しているデータ分析とともに,次の調査の準備がある(調査会社が近くなったのは好都合だが…)。「クルマ」プロジェクトのほうは,今月中に取材先へコンタクトを! そして JIMS 研究大会の報告準備など。まだ,文房具その他が前任校の机のなかに残っており,残務処理はまだ終わっていない。

昼食は,駅前の「ゴーゴーカレー」。初めて食べるが,「どこかで食べたことがある」感のある,コクのある味に病みつきになる予感。キャベツのお変わりができるのもいい。その意味ですずらん通りの裏通りにあった「タカオカ」が懐かしい。あの酸っぱいカレー,油漬け?キャベツ…。この界隈は,B級グルメの宝庫であったが,いまもそうなのか,今後じっくり「検証」しよう!

夜,コンピュータ産業研究会@MMRC で,構造計画研究所の服部社長の講演を聞く。企業やプロジェクトには,円滑なコミュニケーションが成り立つ適正な規模がある。そのなかで多様な事業領域を持ち,成果主義と長期雇用を両立させる。中期的な視野で学界と連携し,新事業を育てると。改めて同社のビジョンを聞きながら,経営とは revolution ではなく evolution であり,そうでなくてはならないと感じる。

捨てて捨てて捨てて・・・

2008-09-18 04:53:47 | Weblog
研究室の引っ越しが明日(現時点では今日の午後)に迫ってきた。図書資料を事前に整理・梱包していたとはいえ,それ以外の荷物が予想以上にある。特に「論文」。pdfへの移行の過渡期にあるから(またすべてオンラインで入手できるわけではないから),紙のストックをすべて捨てるわけにはいかない。とはいえ,引っ越し先のキャパは現在の3分の1以下になると思われるので,図書と同様,バサバサ捨てることにする。

結局「選好形成」に関する「本命の」論文群と,最近興味が強まってきた「イノベーション」関係はほとんど残したものの,「コンジョイント」「スキャナーパネル」など,これまで縁がいか深かろうとも,関心が遠のいたものは大半を捨てた(大事な論文は覚えているから,いざとなれば,もう一度探せばよい)。まして「価格」「プロモーション」「チャネル」「市場構造」「戦略」といった,これまで,これからも縁の薄そうな分野の論文は,ほぼすべて廃棄(いつ興味を持つか,わからないが,そのときはそのとき)。

研究上の関心を絞りこむことで,研究生産性をもっとカイゼンしたい。過去にコピーした論文を取捨選択しながら,これからの研究戦略について思いを巡らせる(・・・なんてことをしているから,梱包生産性が低くなってしまう)。だが,深夜2時を回ると,さすがにいろいろ考えて選んでられない。何も考えずに段ボール箱に注ぎ込む。なんとか明日(今日の午後)搬出に間に合わせたい。部屋には大量の不要物と,予想以上の梱包し忘れが残るだろうから,作業は来週まで持ち越されそうだ。

 ふだんから,きれいにしておけばよいことだが・・・

ネットへの接続機会が減るので(「母艦」は先方で無事つながるだろうか・・・)迷惑をおかけする向きもあるかもしれない。

〈生〉への反省的想像力

2008-09-16 19:08:45 | Weblog
Life という英語に対応する日本語は「生命」「生活」「人生」・・・ 関連しつつも,かなり意味が違うものと日本人は考えている(はず・・・)。しかし,最近社会学者は Life をあえて分節化せず,「生」ということばで一括することによって,何かを見ようとしているようである。畏友・藤村正之の近著『〈生〉の社会学』は,まさにそれを試みた著作である。一定水準以上の本屋では平積みされていることが多く,「一般読者」を獲得するという意味でのメジャーデビューの気配である。
〈生〉の社会学
藤村 正之 
東京大学出版会 

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しかし,著者は筋金入りの社会学者なので,それなりの思考様式を共有しない読者には,すらすら読める本ではない。本書は「日常生活で反省的な想像力を働かせ」ることを主張する。これは,日々の〈生〉から目をそらし,自分にとっては「高尚」な目標を追い求めつつ,ふだんは日常の表層を刹那的に楽しんで生きるという,よくある凡庸な研究者の類型とは対極にある(つまり,ぼくとは対極の・・・)。

そんな比較は僭越だが,ぼくと著者の研究上の方法論はかなり違う。しかし「日常生活で反省的な想像力を働かせ」ることをは,ぼくにとっても重要だ。消費者行動のモデル化において,消費者が語ることばや,既成の理論の示唆をそのまま受け取ることはしない。コンピュータ・シミュレーションやデータ解析は,自分と世界の接点に潜む可能性に想像力を働かせることなしには成功しない。

1週間のツアーから戻る

2008-09-12 23:57:34 | Weblog
まる1週間,毎朝ホテルでバイキングを食べる日々を送った。ツアーの最後を締めくくるのは,山本屋本店の味噌煮込みうどんだ。値段は高いが,かつて食べた味噌煮込みうどんより,はるかにうまい! ビールにも合う。「チーム」メンバーと小1時間ほど会食。もっといろいろ名古屋グルメを楽しみたいところだが,新幹線を予約しているし,自制する。自宅に帰ると,健康診断の結果が届いていた。「要精密検査」… はぁ…。

iPhone ビジネス市場へ

2008-09-11 23:09:25 | Weblog
非常勤最終日。iPhone 3G 再活性化戦略の提案を学生4チームから受ける。ターゲットを誰にするのか,ケータイ文化にどっぷり浸かった10代は無理そうだから,20~30代を狙おう,あるいはビジネスユースを狙おう,という意見が多い。帰りの飛行機で読んだ日経に,iPhone 3G の需要が一巡して,ソフトバンクは今後,大企業向け需要を開拓しようとしている,という記事があった(ウェブ上にも記事あり)。ほほう,学生たちの提案と同じではないか・・・ いやいや,彼らはこうした動向を,すでにネットでキャッチしていたのかな・・・。

そっちの方向へ行くとしたら,競争相手は当然他のスマートフォン,とりわけ BlackBerry になる。見た目は iPhone ほどカッコよくないが,実用性はありそうだ。この強敵とどう差別化し対抗するか,特に購買の意思決定者が法人になったとき,それはなかなかの難問だ。実用性には多少目をつぶってでも,クリエイティブな雰囲気づくりを重視する企業が存在するか否か。「クリエイティブ・クラス」論の真骨頂が問われる ・・・かどうかはともかく,デザインやインターフェース以外に,他にはない強力なアプリがないと辛い気がする。

夕刻羽田に到着,品川から新幹線に乗り,名古屋に入る。夜の「打ち合わせ」のあと,東君から iPhone のアプリの説明を受けながら,iPhone の成否は,App Store の役割に負うところが大きいという説を思い出す。「研究」のためにも,自分のためにも早く無線LAN に入らねば・・・(悩むようなことなのか?)。なお,名古屋に来たのはもちろん,iPhone の勉強のためではない。

長崎という「世界」

2008-09-10 23:49:10 | Weblog
昨夜,河又さんに「吉宗(よっそう)」に案内される。シメサバとか茶碗蒸しとか,日本中どこでもありそうなフツーなメニューだが,中身が全然違う! 長崎はただものではない。二軒目は,最近オープンしたというジャズのライブハウス「Body II Soul」へ。ギターを抱えた中年シンガーが,入れ歯をしているかようなモゴモゴした歌声でビートルズナンバーなどを熱唱。ただ,そのなかで「想い出枕」の歌詞とメロディが,なぜかその後も印象に残る・・・。後半は,その傍らでタバコをプカプカ吸っていた若い女性が,突然ぶりっ子アイドルに変身して歌い始めた。最後はそのノリでジョニーBグッドを・・・。長崎の音楽シーン,恐るべし。

長崎とは何なのかを,河又さんと語り合う。長崎はほかの九州の都市と同様,観光資源への期待が大きい。佐世保方面のハウステンボスを含め,韓国や中国からの観光客誘致に熱心である。ハウステンボスにカジノを作るという構想もあるらしい。すでにカジノを持つ韓国や中国から集客できるのだろうか・・・。ハウステンボスはオランダ文化を模しているわけだから,現代のオランダあるいはアムステルダムにならって,飾り窓,大麻,同性愛の結婚などを認める「特区」にしたらどうか・・・ などという不謹慎なアイデアが思い浮かぶ。

もう少し現実的なことをいえば,長崎の最大の観光資源は,歴史に埋め込まれた「国際性」だと思う。17世紀,この地に基盤を築いたキリスト教は,仏教,神道との間で一種の「宗教戦争」を起こす。だが,その後厳しい弾圧を受け「隠れキリシタン」として数百年間,その信仰を持続させる。このような宗教に基づく紛争や,抽象的な価値への非妥協的な帰依は世界的には珍しくはないが,日本の歴史では稀有のように思える。そうした一種の「国際性」が,当時,少なくともこの地に存在したことが興味深い。

そして長崎は1945年,キリスト教国・米国から原爆を投下される。しかも皮肉なことに,浦上天主堂の真正面が爆心地となる。長崎の「国際性」とは牧歌的なそれではなく,悲惨さに満ちている。だからこそ,それは世界に通じる力を潜在的に持つのである。「潜在的に」というのは,まだまだその資源が活用されていないと思うからだ。そういえば,マーティン・スコセッシが遠藤周作の「沈黙」を映画化するという話は,どうなっているんだろう。そこでどこまで普遍的なテーマが見いだされるかが,一つの試金石になるのではないか。

長崎 4年目

2008-09-08 23:57:57 | Weblog
長崎での非常勤集中講義が始まった。今年で4年目になる。今回は大浦に宿泊・・・ オランダ坂のすぐそばで,大浦天主堂やグラバー園にも歩いて行ける(長崎チャンポンの元祖といわれる「四海楼」もそばだ)。初日に集まった受講者は20人ほどで,女性比率は4分の3近い。競争と顧客の分析について初歩的な枠組みを講義したあと,チームに分かれて課題に取り組んでもらう: 今回は,日本において iPhone 3G を成功に導くにはどうすればいいか,である。

学生たちに聞いてみると,iPhone ユーザがいないのは当然としても, iPod のユーザが半分もいないのは意外だった。他の携帯オーディオを使っているわけでもなく,そもそも携帯オーディオを使っていないようだ。もちろん,携帯電話利用率は100%近い。いずれにしろ,賽は投げられた。

行動計量学会@成蹊大

2008-09-04 09:53:41 | Weblog
昨日は成蹊大学で開かれた行動計量学会で「好みの計量」セッションのコメンテータを行う。そこに含まれた6つの発表の方法論は様々だが,マーケティング実務に役立てることを目指す,という点で共通している。そこで,実務的な意味での妥当性検証をどうするか,という共通の問いかけをすることにした。答えるのは大変だが,聞くのは簡単だ。

学術的な研究であれば,方法論がその前提を満たしているか,発見されたパタンの再現性が高いか,競合する理論よりも単純に事象を説明しているか,などが妥当性の基準となる。他方,実務的な方法論の提案であれば,目的を明確にした上で,既存手法を上回る水準で目的が達成されたか,費用対効果はどうか,などが問題となる。

ウェブ広告やECサイトでのレコメンデーションの場合,競合する手法を顧客ごとに無作為に割り当てて,効果を比較することができる。そして,その結果は瞬時にわかる。しかし,たとえば新製品開発の手法で同じことができるだろうか? 比較のため複数のチームを作る,なんてことをすると膨大な費用がかかるし,たとえそれができたとしても,統制できない要因が山ほど残る。

それが非常に難しいことがわかっていながら,あえてこんな問題を提起したのは,そもそも学会という場で発表する以上,知識の客観性をどう担保するかを考えることが重要だと思ったからだ。しかし,そんなことはもはや古臭い象牙の塔的発想で,中身がたとえブラックボックスでも「使えそうだ」という直感を実務家に共有してもらえればよいのかもしれない。

実務家にとっては,学会は知識の面白さや美しさに触れる場などではなく,まして容易に結論にたどりつかない議論を楽しむ場でもない。そこは,使えそうな専門家なり機関なりを見つける場だということは,かつて企業にいた人間として,十分理解できる。だから二次会でも「営業」にいそしむ人が現れたりするわけだ…。

ところで,今回は MacBook Air 上で Keynote を使ったプレゼンのデビューとなった。そして同じ日に,吉祥寺駅前で iPhone 3G を購入。手にした質感,鮮明な画面,さくさく動くタッチパネルはなかなかいい。ただ,指による文字入力はまったくダメ。店頭で延々と聞かされた,アップルのサービスポリシーも傲慢すぎる。

今日は大学に戻って,来週から始まる長崎での非常勤の準備をしなくてはならない(実はそれが iPhone をあわてて買った理由でもある)。そして「引っ越し」準備はまだ終わっていない。