Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ジョブズは何を遺したのか

2011-11-28 14:41:51 | Weblog
日経BPから出たスティーブ・ジョブズのムック。この類はすべて買い,そのうちエピソードを互いに照合して再構成したい。本書は「人」「仕事」「作品」「言葉」の4部構成だが,ぼくにとって興味深いのは「仕事」と「作品」だ。ジョブズと仕事をした何人かの日本人が登場する:

ソニー元社長 安藤国威氏 ・・・ソニーとアップルには知られざる交流があった。たとえば VAIO 上で MacOS が動いていたらどうなっただろう?(このエピソードからもジョブズがありとあらゆる試行錯誤を行っていたことがわかる)。

元アルプス電気 FDD開発責任者 広瀬康之氏 ・・・アップル創業期からの付き合い。ジョブズがアルプス電気で講演したエピソードなど。

元アップル日本法人 マーケティングコミュニケーション部長 河南順一氏 ・・・ジョブズがアップルに復帰,Think Different キャンペーンを皮切りに iMac を導入した頃のエピソード。

元アップル日本法人 マーケティング担当 外村仁氏 ・・・アップルに残った人々だけでなく,飛び出した「ジョブズ・チルドレン」が世界を変えるかもしれない,と。

日本にもジョブズの蒔いた種が育っているとしたら最高だ。

スティーブ・ジョブズは何を遺したのか (日経BPパソコンベストムック)
林信行(監修)
日経BP社
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ドラゴンフライ エフェクト

2011-11-25 23:33:57 | Weblog
著者の一人ジェニファー・アーカーは,ブランド論の権威である「かの」デビット・アーカーの娘であり,かつご自身もブランド・パーソナリティ等々の分野で知られたマーケティングと消費者行動の研究者である。その彼女が,コンサルタントをしているご主人と著したのが本書である。

本書を一般的なソーシャルメディア・マーケティングに関するビジネス書だと思うのはいささか早計である。副題の「ソーシャルメディアで世界を変える」(... Use Social Media to Drive Social Change)という一文が示すように,公益を目指したビジネスやキャンペーンに焦点を当てている。

ドラゴンフライ エフェクト:
ソーシャルメディアで世界を変える
ジェニファー・アーカー,
アンディ・スミス
翔泳社

ドラゴンフライトとはトンボのこと。トンボの4つの羽に「焦点 (Focus)」「注目 (Get Attention)」「魅了 (Engage)」「行動 (Take Action)」が対応する。略すと Focus + GET だというのはいいとして,トンボの比喩が出てくるのはよくわからない(・・・英語の語感がいいのだろうか)。

注目-魅了-行動というフローは AIDA (Attention-Interest-Desire-Action) と基本的に同じであり,その点で本書の発想はきわめて古典的といえる。情報過多な社会にあっては,何らかの仕掛けで「注目」を獲得しないとコミュニケーションは成立しないというのは,確かに首肯し得る。

それはともかく,興味深いのは著者たちが IDEO の「デザイン思考」に敬意を払い,ソーシャルメディアの活用に関する「デザイン原則」を提案していることだ。こうした整理の仕方は,アレグザンダーが提案し,最近では井庭崇さんが精力的に展開しているパタン・ランゲージに通じるものがある。

これらのデザイン原則は,より営利的なソーシャルメディア・マーケティングにも有用であろう。さらに本書は最新の心理学や消費者行動の研究を紹介しており,研究者にも参考になる。注(参考文献)だけでなく索引まであって,安直なビジネス書とは違う丁寧な本作りが素晴らしい。

一方,ソーシャルメディアそのものというより,それが可能にした新たなソーシャルビジネスに関するマニフェストとして本書を読むこともできる。いや,そのほうが本書の真価を語っているといえる。スタンフォード周辺では,ビジネス,デザイン,公益が一体となっていることが推察される。

最後に「魅了」や「行動」のデザイン原則をより深く理解したい向きに,以下の古典的名著をお奨めしておきたい:

影響力の武器[第二版]
―なぜ、人は動かされるのか
ロバート・B・チャルディーニ
誠信書房

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またまたジョブズで恐縮ですが・・・

2011-11-16 08:52:40 | Weblog
WIRED の最新号(Vol.2)で特集する「スティーブ・ジョブズが遺した14のレッスン」は,ジョブズ論の整理に役立つかもしれない:

01: 「いま」を考えるな
02: 価値があれば、もっと売れる
03: 人を繋ぐ
04: ビジネス・マスターへの道
05: ボトムアップで行こう
06: 物まねするな、解釈せよ
07: デザインがすべて
08: オーディエンスを幻惑せよ
09: ビジネス金言集
10: 期待を裏切れ
11: 己の競合たれ
12: 再起動、再起動、再起動
13: 盛大なお披露目こそ最大の広告である
14: ハングリーであれ、愚かであれ

各項目が別の人々(たとえばガイ・カワサキやジェフ・デービス)によって書かれている点も面白い。

WIRED (ワイアード) VOL.2
(GQ JAPAN2011年12月号増刊)
コンデナスト・ジャパン
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スティーブ・ジョブズ I・II

2011-11-14 20:06:29 | Weblog
有名な伝記作家であるアイザックソンに,死を予感したジョブズが依頼して書かれた伝記。本人や家族,アップルの幹部社員たちが取材に協力しているだけでなく,彼のライバル(ビル・ゲイツが筆頭!)からジョブズのおかげで酷い目に遭った人々まで,広範かつ重層的な取材を行っている。

そこで描かれるスティーブ・ジョブズ像は単純ではない。彼の「悪い面」も「良い面」も,これまで語られてきた以上に凄まじい。その振れ幅は尋常ではない。ジョブズという症例は,作家にとっても心理学者や精神科医にとっても非常に興味深い人間研究の対象であることは間違いない。

スティーブ・ジョブズ I
ウォルター・アイザックソン
講談社

スティーブ・ジョブズ II
ウォルター・アイザックソン
講談社

一方,本書はアップルの製品開発やマーケティングの内奥を知る経営書として読むこともできる。アップルに張り巡らされた機密保護の壁は厚く,これまで同社に関する本格的な研究はほとんどない。本書はそこに風穴を開けた。当事者への聞き取りが多面的に行われており,史料価値は高いと思う。

もう一度読み直して整理してみたいが,いま感じているのは,アップルのイノベーションはジョブズを一種の触媒としつつ,様々な人々が化学変化を起こして生み出した結果ということだ。なかにはジョブズに隠れて準備されたものもあるし,ジョブズが部下に反論されて渋々受け入れたものもある。

したがって,すべてジョブズが考え出したかのように神格化することは誤りだが,ジョブズ抜きでイノベーションが進行したと考えるのも誤りである。そこで起きているインタラクションの全貌を把握することは不可能だが,本書によって少なくともその断片を窺い知ることができるのはありがたい。

製品開発だけでなく,アップルの有名な広告キャンペーンが策定されるプロセスも興味深い。ジョブズは基本的に広告制作のパートナーを代えていない。彼らを罵倒し,むちゃくちゃ口を出しながら,彼らのクリエイティビティを引き出していく。インタラクションというにはあまりに苛烈だ。

彼は絶対「美」感とでもいえる感覚を備えている。世のなかには美しいものと醜いものしかなく,後者には耐えられない。厳しい要求を突きつけて,エンジニアやクリエイティブから「だったら自分でやってみろ!」と罵られても怯まない。その独特の説得力こそ彼の持ち味なのだろう。

その対極にあるビル・ゲイツは,ITのモジュール化を前提に,より多くの業者を仲間に入れる戦略で成功した。著者のインタビューに対して,ゲイツはアップルが統合性の追求で成功したことを認めつつも,それはジョブスあってのことであり,今後持続する保証はないという趣旨のことを述べている。

それを聞いたジョブズは反論する。
「そういう形で優れた製品を作ることは誰にでもできる。僕だけじゃない」
 では、エンドツーエンドの統合を追求してすごい製品を作った会社はほかにどこがあるかとたずねてみると、ジョブズは考え込んでしまった。ようやく返ってきた答えは、
「自動車メーカーだな」
 だった。しかも,一言、追加される。
「少なくとも昔はそうだった」
徹底して美を基準にした統合的アプローチをとる企業がほかにないのか,今後も現れないのかどうかは,われわれに投げかけられた問いでもある。ビジネスにおけるイノベーションがよりクリエイティブであることを願う者にとって,本書は何度も読み直す価値がある。

ただし原書もそばに置いておきたい。ジョブズが気にくわないものに投げつける罵りのことばや,その対極にある絶賛のことばを原文で読むのも味わい深いはずだ。

Steve Jobs
Walter Isaacson
Simon & Schuster
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よくわかる経営管理

2011-11-12 19:13:00 | Weblog
「ぬるま湯」「やり過ごし」といったユニークな概念を研究され,また『虚妄の成果主義』で日本企業の人事制度に関する議論に一石を投じた高橋伸夫先生(東京大学)が編著者となった,経営管理に関する包括的な教科書が出版された。分担執筆者は高橋先生の薫陶を受けた若手の研究者である。

よくわかる経営管理
(やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)
高橋伸夫 編著
ミネルヴァ書房

ぼくにとってなじみのある「マーケティング」の章では,STP,マーケティングミックスから始めて,インターネットマーケティングやブランドまでカバーしている。その内容も含めきわめてオーソドックスに要点を押さえている。自分にとって専門外の他の章も手堅く書かれているに違いない。

広義の経営学について基本的な知識を概観するには最適な一冊であろう。教科書として順に読んでいくのもよし,事典代わりにつまみ食いするのもよし。ご恵投いただいた稲水,桑島両先生に深謝。自分よりはるかに若い研究者の活躍を喜ぶとともに,自分の生産性の低さに反省しきり。
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スティーブ・ジョブズ 100人の証言

2011-11-08 16:29:14 | Weblog
スティーブ・ジョブズと何らかの形で関わった人,元部下やライバル,同業者,あるいは直接関わりがないが同時代を生きた人々として熱狂的なユーザから距離を置いて評論家的に語る人々,有名人から知る人ぞ知るの人まで,ともかくありとあらゆる100人の証言が集められている。

個人的に面白かったものの1つが Mathematica の開発者スティーブン・ウルフラムの証言。何と Mathematica と命名したのはジョブズだという。ウルフラムはさらにジョブズが語ったネーミングの秘訣を紹介している(あとは本文で^^)。

もう一つ面白かったのが,ウルフラムが新著の推薦文をジョブズに依頼したとき返ってきたことばだ。これは引用しておこう・・・「 アイザック・ニュートンの本の裏表紙に推薦文なんて載ってないだろ。何でそんなものがいるんだよ?」

スティーブ・ジョブズ 100人の証言
(AERA Mook)
朝日新聞出版
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JACS@関西大学(高槻)

2011-11-07 18:32:42 | Weblog
この土日は消費者行動研究学会(JACS)に参加した。場所は関西大学・・・といっても「関大前」のキャンパスではなく,高槻ミューズキャンパス。社会安全学部という新設学部の入っている真新しい豪華な建物で行われた。ちなみに大阪で生まれ育ったぼくだが,高槻で降りたのは初めてである。

様々な発表に刺激を受けたが,白眉は2日目の午後に行われた招待講演ではないかと思う。講師の西尾久美子先生(京都女子大学)は京都花街への参与観察を行い,興味深い知見を得ている。そこでは顧客が舞妓・芸妓を育てるとともに,逆に顧客も育てられる。関連業者間の相互評価も厳しい。

「一見さんお断り」は単に金持ち相手の秘密クラブを作るためではなく,顧客とともに育っていくシステムとして機能している。クローズドなシステムが先細りになるのを防ぐため新規顧客を獲得する努力が種々なされているし,また舞妓を全国から採用・育成していくシステムも整備されている。

人気のある芸妓さんの特徴は「座持ち」という言葉に集約される。その状況に合わせ,いかに隅々まで気を配り,顧客を満足させるか。顧客の情報を徹底的に集めて分析するというより,何気ない仕草や会話の一端から深い洞察を得る。そこでは経験と想像力の役割が極めて重要だと想像する。

京都花街の経営学
西尾久美子
東洋経済新報社

京都の花街というのは,歴史的にも地理的にも特殊であり,その単一事例からどれだけ一般的な教訓が得られるのだろうか。事例研究を支持する立場では,特殊事例を掘り下げることでこそ(ある種の)普遍性に近づくことができると考える。最近,ぼくもこの考え方に共感するようになってきた。

貧困を救う寄付を求めるのに,客観的な統計数字より,たった一人の貧窮した子どもの事例を見せたほうが成功率が高いことを示した実験がある。人間はより具体的なものに説得されると。ということは,人間は稀少だが具体的な事例から「本質」を学ぶ能力を持っているのではないだろうか。

この学会の研究報告には統制実験を行ったものが多い。実務的な問題意識から出発して抽象的な仮説を立て,それを検証するために何か具体的な刺激を構成する。たとえば広告における色彩の効果を検証したいのなら,何らかのフルカラー広告を提示し,その白黒バージョンと効果を比較する。

確かに図柄が同じなので色彩以外の要因は統制されているように見えるが,配色の仕方は一様でないし,図柄との交互作用がある場合は得られた結果を一般化できない。したがって実験の再現性は必ずしも高くならない。そこで結果のばらつきを説明する別の要因を加える方向で研究が進展する。

そうした努力の結果,再現性の高い命題に到達できるのならいいが,実際には議論が細分化・複雑化していくことが多いように思える。だから,そうした実験は無意味だといいたいのではない。それは特定の具体的状況における1つの「事例」を研究したと理解すればいいのではないか。

実は実験もサーベイ調査も,大量データのモデル分析でさえも高度に複雑な現象の一断面,1つの特殊事例を研究しているにすぎないのでは。鍵はそこから普遍性に迫れるかどうかだ。一見矛盾しているようだが,人間は進化の過程でそうした能力を獲得したのではないかと思う(検証不能だが)。

もうひとつ,西尾久美子先生の講演,また前日の和田充夫先生の発表を聞いて感じたことは,自分の好きなこと,燃えることを(ある程度内在的に)研究することこそ,素晴らしい研究成果を生み出すのではないかということだ。和田先生の場合,いうまでもなくそれは宝塚ファンの心理である。

ぼく自身は今回「アフィリエイト広告」についてブロガー側の意識調査をショートで発表した。自分自身ささやかなアフィリエイトではあるが,それほどのめり込んでいるわけではない。いい研究をするためにはもっとブロギングやアフィリエイトに燃えなくてはならないのかな・・・。

・・・などと,個々の研究発表からかけ離れた妄想に浸ったという意味では,刺激的な学会であったといえる。
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ネット・マーケティング進化の果て

2011-11-04 08:53:20 | Weblog
月曜の JIMS 部会では,インターネット・マーケティング最先端の話題を取り上げた。まず,ソネット・メディア・ネットワークスの磯崎直樹さんから「アドネットワーク広告におけるオプティマイズ戦略」と題する報告。想像していた以上にネット広告業界が「進化」しているのを知り驚いた。

インターネットの世界はデータで満ちあふれている。そこに統計分析,データマイニング,最適化手法等が動員されるのは自然の成り行きだ。問題はいかに個人を識別するかだが,その技術も日進月歩で,様々なデータが紐づけされていく。広告のなかで,ネットだけが異常に「高度化」している。

興味深かったのは,広告主側とサイト側にそれぞれ支援サービスが生まれてきていること。そこから複雑な「カオスマップ」が生まれている。複雑に入り組んだサービス主体が競争の結果どのように淘汰・統合されていくのかは,産業組織や経営戦略の立場から研究しても面白いだろう。

広告主とサイト(メディア)側の利益はしばしば対立するので,ゲーム論的なアプローチが有効である。プレイヤーの多い非常にダイナミックなゲームなので,エージェントベース・シミュレーションの格好の対象となるはずだ。そこからどんな帰結が得られるだろうか・・・。

次に成蹊大学の山本晶さんによる「ソーシャルメディア・マーケティング再考」。最近の Facebook の動向を見ると,個人情報の「共有」があまりに行き過ぎではないかと山本さんは危惧する。そしてソーシャルメディア・マーケティングとは消費者負担型マーケティングではないかと喝破。

多くの企業が Facebook マーケティングに乗り出し,「いいね!」を押させることが最大の KPI になっていたりする。確かにそれによって認知の拡大を達成できるかもしれないが,購買まで導く効果はそう強くないという研究報告もある。「いいね!」の効果をきちんと見極める必要がある。

ソーシャルメディア・マーケティングを研究し続けてきた山本さんだけに,最近の「バブル」に対しては厳しい目で見ている。原点に返って,消費者のコストとベネフィットを整理すべきだと提言されている。このあたり,体系化な思考を迫られ得る研究者が貢献すべき課題といえよう。

お二人の話を踏まえ,インターネット広告やソーシャルメディアの「進化」をどう考えるのか,議論はいつものように二次会に持ち越された。そしてあまりに議論が白熱したせいか,あるいは別の理由のためか,半数近い参加者が終電を逃してしまうという顛末になった。主催者として反省・・・
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経営情報学会@愛媛大学

2011-11-01 23:59:13 | Weblog
10月29日~30日に愛媛大学で開かれた経営情報学会に参加した。愛媛大学のキャンパスは道後温泉の隣り,松山城のすぐ北という絶好の場所にある。この学会はITに重点を置いた戦略論・組織論からマーケティング,あるいはエージェントベース・モデルまでさまざまなセッションがある。

素晴らしいのは東日本大震災の復興問題を取り上げていること。特別講演に sinsai.info を運営する関治之さんを呼んだほか,「震災と復旧」と題するセッションもある。経営学系の他の学会は知らないが,少なくともマーケティング系の学会ではそうしたことは行われていない。残念なことである。

関尚之さんは優れたエンジニアであり,IT系ベンチャー企業の経営者であるが,震災直後に「クラウドソースによる復興支援プラットフォーム」sinsai.info の立ち上げに参画する。ジオメディアという技術(あるいは発想)を生かし,地図上に震災情報をユーザーが投稿していく仕組みである。

関さんは次いで,Hack For Japan という活動を紹介する。所属企業を超えてエンジニアたちが集まり,復興の支援につながるアプリを開発する。こうした企業横断的活動以外に,アマゾン,グーグル,ヤフーなどで,エンジニアたちが会社の許可を待たずに支援活動に乗り出した例もある。

そうした行動を許容・促進する組織風土も非常に興味深いが,ぼくとしてはむしろ,そうした行動をとる個々人の価値観やライフスタイルといった,よりミクロな側面に興味がある。クリエイティブ・クラス論等々をさらに先に進めた,新しい地平に立つ人々が現れていると直感する。

他にも面白い報告をいくつか聴いた。個人的な関心に応えるものとしては,早稲田大学スポーツビジネス研究所の藤原哲郎氏による「スポーツビジネスのウェブサイト戦略:プロ野球のウェブサイト比較から」。先行研究やサイトの評価の仕方など,いろいろ参考になった。

実は昨年卒業したゼミ生が同じテーマで卒論を書いている。今回の報告にあった,全般にパリーグのほうがウェブの活用に積極的という点は同じであった。その背景として,パリーグでは球団を超えたマーケティング会社が設立されていることが指摘された。セでは意外にも阪神の成績がよい。

もう1つ,早稲田大学の釜池聡太氏による「 ソフトウェア市場におけるplatform envelopmentの研究:マルチデバイス環境における検討」も興味深かった。platform envelopment はプラットフォーム包囲と訳される。IT業界のプラットフォーム間競争を理解する鍵となる概念だ。

日本大学の根本忠明氏による「ソニーとアップルの明暗を分けた物作り戦略」も非常にタイムリーな話題を取り上げている。根本氏は背景として,日米の著作権制度の違いなども指摘されていた。ということは,単に企業間競争に「負けた」だけでなく,国レベルの制度競争で負けたことになる。

ぼくにとってふだん戦略論の議論に触れる機会が少ないので,そうした研究を拝聴できたのは大変ありがたかった。もちろん,なかには全く頭に入ってこない発表もあって,他分野の研究成果を聴くことは容易ではない(同じ分野でもそういうことはしばしばあるが・・・)。

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