Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

雪に耐えて梅花麗し

2015-05-29 09:03:11 | Weblog
黒田博樹投手の座右の銘である「耐雪梅花麗」、西郷隆盛が詠んだ漢詩だという。それを表紙に掲げた Sports Graphic Number の最新号は「黒田博樹とカープの伝説。」を特集。黒田を迎えたわがカープは、当初の期待に反して最下位に甘んじる。ファンとしては「伝説」に目を向けるしかない。

ということで、黒田博樹の“男気”伝説とか、津田恒美の思い出、あるいは山本浩二と前田智徳の交流などの記事を読み耽ることになる。最も感動的だったのが、表紙の写真を撮影したカメラマンの「マイベストショット」。応援団員として市民球場に立つ父親の写真とエピソードが素晴らしい。

Number(ナンバー)878号 黒田博樹とカープの伝説。 (Sports Graphic Number(スポーツ・グラフィック ナンバー))
文藝春秋

この雑誌を、マンハッタンの紀伊国屋書店で購入した。米国の法律に触れるとかで付録が切り取られ、その分1割引になっている。一体どんな付録だったのか、なぜそのままこちらで販売するとダメなのかが気になる・・・ということで、日本の amazon にも同じ雑誌を注文しておいた。

雪に耐えているからこそ、梅の花が美しく咲くのだとしたら、付録付きの Number を私が手にする頃カープもまた美しい花を咲かせているのでは・・・という夢を描くことができる。だが、西郷隆盛の最期を思うと、この詩は悲劇的な結果を暗示しているのでは・・・と不安になったりもする。
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エージェントベース・モデリング入門

2015-05-26 18:01:00 | Weblog
複雑系とか複雑ネットワークとか進化計算に関する入門書に比べ、エージェントベースモデリングの入門書はそう多くないのでは。4月に発売された An Introduction to Agent-Based Modeling (MIT Press) は、その意味で貴重な本だろう。分厚いが、いかにも教科書的で読みやすそうだ。

An Introduction to Agent-Based Modeling: Modeling Natural, Social, and Engineered Complex Systems with NetLogo
Uri Wilensky, William Rand
The MIT Press

この本は、ABM 用の言語の1つ NetLogo の入門書でもあって、NetLogo のコードや出力されたグラフィクスが随所に挿入されている。ただし、本書には NetLogo ユーザでなくても、ABM の方法論について学ぶことができると書かれている。そのあたりは、実際に読んでみないとわからなない。

著者の一人、William Rand 氏はマーケティング・サイエンス界で ABM を用いる、数少ない研究者の一人。この本では自然現象から社会現象まで様々な話題が取り上げられ、特にマーケティングに焦点が当てられているわけではない。本の普及を考えると正しい戦略だが、個人的には少し残念である。

近いうちに読まなくてはならない本の1つである。
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ネットワーク科学の現状を知る

2015-05-20 08:51:07 | Weblog
社会ネットワーク分析や複雑ネットワークに関しては、すでにいくつも入門書が存在する。それらを読んでこの分野の概略を知ったつもりの読者にとっても、この本を読む価値はあるように思う。少なくとも私には、知らなかった既存研究との出会いがあった。

本書では自然現象から社会現象まで、幅広い事例が紹介されているが、私個人が興味を持つのは、あくまで社会ネットワークである。それにしても、本書を通じて、Milgram や Granovetter ほど有名ではないが重要な研究を知ることができたのは大きな収穫だった。

原書の出版は 2012 年なので「研究の最先端」とはいえないかもしれない。また、新書版なので取り上げているテーマの範囲に制約があることは間違いない。どの分野に関心があるかで違うかもしれないが、コンパクトな本なので、読んで損する可能性は小さい。

ネットワーク科学 (サイエンス・パレット)
カルダレリ,グイド & カタンツァロ,ミケーレ
丸善出版

本書には、新書には珍しい充実した参考文献が掲げられているが、それはなんと、訳者が独自に調べて付け加えたものだ。監訳者、訳者ともこの分野の第一人者であり、信頼して読むことができる。ネットワーク科学に関する知識の多寡に関わらずお勧めの好著だ。
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在外研究、始めました。

2015-05-09 16:31:15 | Weblog
4月から、ニューヨーク市立大学バルークカレッジでの在外研究を開始した。最初の数週間はアパート探しや生活環境の整備で忙殺された。予想外のことが次々起きて不安な日々だったが、ようやく落ち着いて本来の目的、「研究」に着手し始めた今日この頃である。

バルークカレッジはマンハッタンの東25丁目にある。写真のように、どでかいビルに多くの学部・学科が入っている。そういう点で、私の本務校である明治大学に似ていなくもない。それに対してNYUは多くのビルを持ち、コロンビア大学は広大なキャンパスを持つ。


ニューヨークはいうまでもなく刺激に満ちた街である。しかし、今回は長期の滞在ということもあり、これまでそんなに出歩いていない。研究に集中できる貴重な機会であり、そこで研究生産性をどれだけ高められるか・・・純粋に意志と能力が試されることになる。

そんなときに当面の目標があると便利である。幸い6月に Marketing Science Conference、7月に ICServeFrontiers in Service Conference があるので、それに向けた研究作業は待ったなしである。前者では、阿部先生、新保さんとのTwitter研究を発表する。

この研究は実は、昨年も同じ会議で発表している。今回はパラメタ推定法を改め、シミュレーションも発展させた。目標は、ネット上の少数のインフルエンサーのインパクトを測定すること。研究が活発に行われている領域なので、そのレビューも欠かすことができない。

7月の2つの会議(サンノゼ)では、JST/RISTEX 戸谷Gで行っている金融サービスに関する研究を発表する。顧客収益、顧客調査、従業員調査という多元的なデータを組み合わせたモデル構築を行い、顧客間取引データを用いてエージェント・シミュレーションを行う。

この2つが、学会発表が予定されているプロジェクトだ。昨年度行ったプロ野球ファンの調査についても、発表に向けた場づくりが進みつつある。分担者となっている有権者の経済政策・政治・消費に関する選好調査の科研費プロジェクトは、今年度で最終年度を迎える。

また、自身が代表者となった科研費プロジェクトも最終年度を迎える。そこでは、創造的・美的なるモノ(たとえばAppleやDysonの製品)へのテイストの測定が研究目標である。方法論では、社会学における文化資本や社会関係資本の研究にインスパイアされている。

自分のなかで、それと一体的に位置づけているのが、ストリートファッションの長期観察データの分析だ。ファッションを普及現象としてみると、成功例もあれば失敗例(一時的ファッド)もある。そのダイナミクスの理解に、社会ネットワークの観点が欠かせないと思う。

他にも、意思決定に関する被験者実験や、大規模マーケティングデータの分析に関して、かねてから第一線の複雑系研究者(物理学者)と進めている研究プロジェクトがある。お互いのコミュニケーションが取りにくい状況になったが、何とか前進させて行きたい。

その一方で、せっかくの機会なので、在米のマーケティング研究者と新たに共同研究の機会が得られないかとも考えている。テーマは上述のプロジェクトと関連しているとうれしいが、そうでなくてもよい。重要なのは、自分がそこでどんな貢献ができるかだが・・・。

実は、在外研究の最終目標としているのは Complex Modeling of Consumer Behavior の執筆だ。上で述べた活動もそこに落とし込めればよいが、全般的な研究レビューなど、自分の研究を離れて行う部分も少なくない。そのための時間確保も、いずれ大きな課題になるだろう。
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