Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ネットは「貧民の楽園」

2009-01-03 23:47:24 | Weblog
年末に,やっと光回線を自宅に引いた。ところが NTT に委託された業者が勝手に Nifty メールをすべてサーバに残さず Outlook に吸い上げてしまった。最近は,web メールばかり使っていたので,全く余計なお世話であった。Gmail にバックアップを取っていたから,そちらを使えばいいのだが… そうか,これを機に Gmail を中心に使おうかと思ったりする。

光のメリットはまだ実感できていない。工事費無料で,維持費用は ADSL と変わらないから正しい選択のはずだが,Google デスクトップ検索を起動するとネットに接続できなくなるなど,わけのわからぬトラブルも発生。簡単だといわれた AirMac (TimeCapsule) の設定にも失敗。トリセツにはほとんど何も書いていないし,ネットで調べてもチンプンカンプンだ。

インターネットを空気のように感じる生活を送っていても,ちょっとしたつまずきで,その前提が崩壊し,突然デジタル・デバイドということばが他人事ではなくなる。インターネットを操る知識やスキルには寡頭的な階層構造がある。ネット上の情報の大半は少数の人々によって担われ,そこから下位の多数派に知識がトリクルダウンしていく。

だが,そういった「指導的な」インターネットユーザが,eビジネスの優良顧客になるかというと,必ずしもそうではないようだ。以下の本は,ネットは「貧者の楽園」になっていると指摘する。多くのサービスが無料であるため,一定のネットリテラシーがあり,時間もたっぷりあるが,購買力はあまり高くない人々がネットを使いまくっているというわけだ。

情報革命バブルの崩壊 (文春新書)
山本 一郎
文藝春秋

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無料のビジネスモデルは広告収入によって支えられるはずだが,それが可能なのは実はアクセスが非常に多い少数のサイトだけである。では,なぜ無料サービスがこれだけ拡大したかというと,その背後には世界的なカネ余りがあり,マネーゲームによって高い株価が演出されてきた。だから金融のバブルが崩壊したことで,ITビジネスのバブルも崩壊したという。

著者は,これまで適正な収入を得てこなかったネットのインフラ業者やコンテンツ業者は,新たな課金の仕組みを構築する必要があると説く。広告モデルに限界があるとして,次に興隆するのは具体的にどんなビジネスモデルになるのか,ぼくにはよく読み取れなかった。アルファブローガーとして有名な著者だが,本書は素人にとって必ずしもわかりやすいわけではない。

この本によって改めて認識させられたのが,メディアのオーディエンスを顧客としての価値という視点で評価することだ。たとえば新聞の購読者が減少しても,購買力やステータスの点では,ネット利用者より価値が高いかもしれない。こうした視点に基づく評価手法がすでに実務で確立しているのなら何もいうことはないが,どうなんだろう…。