ネットの無料を語るのに、ソクラテスが登場する本書。しかし、話題になるのはギリシャ哲学にとどまらず、モースの贈与論から現代の心理学や脳科学の研究まで渉猟される。前著にも増して、著者の該博さに驚かされる。
ソクラテスがアテナイで異端視されたのは、知識を無料で提供したからだという。つまり、彼は「無料」の先駆者であった。しかし、すでに教育も貨幣経済に組み込まれている社会で、それは挑戦的な行為であった。
もちろん、それが贈与であるのならよい。贈与は返礼を伴う。しかし、ソクラテスが無料の理由として挙げたのは、自分の知識は無価値だから,というもの。それは、他の「価値ある」知識への挑戦状と受け取れる。
現在のネット上の「無料」は、なぜ成り立っているのか?実は代価として個人情報が提供されている。したがって、ユーザ側がそのことを理解していないこと、またそれを理解させようとしない企業に著者は苦言を呈する。
本書の射程は無料(フリー)に関する議論を超えて広がっている。ルディーさんの著書やブログ記事は、ビジネスのみならず最新の心理学や脳科学の研究がふんだんに紹介され、消費者行動の研究者にとっても得るものが多い。
![]() | ソクラテスはネットの「無料」に抗議する (日経プレミアシリーズ) |
ルディー和子 | |
日本経済新聞出版社 |
ソクラテスがアテナイで異端視されたのは、知識を無料で提供したからだという。つまり、彼は「無料」の先駆者であった。しかし、すでに教育も貨幣経済に組み込まれている社会で、それは挑戦的な行為であった。
もちろん、それが贈与であるのならよい。贈与は返礼を伴う。しかし、ソクラテスが無料の理由として挙げたのは、自分の知識は無価値だから,というもの。それは、他の「価値ある」知識への挑戦状と受け取れる。
現在のネット上の「無料」は、なぜ成り立っているのか?実は代価として個人情報が提供されている。したがって、ユーザ側がそのことを理解していないこと、またそれを理解させようとしない企業に著者は苦言を呈する。
本書の射程は無料(フリー)に関する議論を超えて広がっている。ルディーさんの著書やブログ記事は、ビジネスのみならず最新の心理学や脳科学の研究がふんだんに紹介され、消費者行動の研究者にとっても得るものが多い。