このところ、経済学に関連する一般向けの本を猛烈な勢いで上梓されている橘木俊詔氏。この5月にも『プロ野球の経済学』が出版されている。すでに齋藤隆志氏との共著で『スポーツの世界は学歴社会』という本もある橘木氏だが、甲子園球場のそばで育ち、根っからの阪神ファンだという。
本書の前半では、日本のプロ野球の歴史が、明治時代の野球の導入期に遡って概観されている。部分的にはすでに知っている事項があるとしても、歴史を全体として包括的に展望するのによい機会となる。日本のプロ野球の現状を理解するには、積み重ねられてきた歴史に関する知識は必要だ。
しかし、本書独自の部分は、プロ野球における労使関係、そして選手の給料の適正水準を論じる後半にある。米国での事例を参照しながら、ドラフト制度は職業選択の自由を妨げるのか、また参入が制限されたリーグ制は競争政策上問題ないのか、などが経済学的な観点から論じられる。
最後に日本のプロ野球の将来、望まれる改革の方向などが議論される。主な案として入場料の引き上げ、観客動員数の増加、試合数の増加が検討されるが、特に2番目の課題については、マーケティングが貢献すべきだろう。また、入場料の引き上げについても、何か方法があるかもしれない。
ところで、以前に本ブログで紹介した『野球人の錯覚』も、著者は経済学者であり阪神ファンであった。『歴史学者プロ野球を語る』の著者は経営史が専門だが、やはり阪神ファンであった。社会科学的にプロ野球を見るには、阪神ファンの持つ批判精神が必要なのだろうか。
そうだとしたら、阪神ファン以上に異端的な広島ファンこそ、深く鋭い研究を切り開くかもしれない。その点については後日、報告することにしたい。
![]() | プロ野球の経済学 |
橘木俊詔 | |
東洋経済新報社 |
本書の前半では、日本のプロ野球の歴史が、明治時代の野球の導入期に遡って概観されている。部分的にはすでに知っている事項があるとしても、歴史を全体として包括的に展望するのによい機会となる。日本のプロ野球の現状を理解するには、積み重ねられてきた歴史に関する知識は必要だ。
しかし、本書独自の部分は、プロ野球における労使関係、そして選手の給料の適正水準を論じる後半にある。米国での事例を参照しながら、ドラフト制度は職業選択の自由を妨げるのか、また参入が制限されたリーグ制は競争政策上問題ないのか、などが経済学的な観点から論じられる。
最後に日本のプロ野球の将来、望まれる改革の方向などが議論される。主な案として入場料の引き上げ、観客動員数の増加、試合数の増加が検討されるが、特に2番目の課題については、マーケティングが貢献すべきだろう。また、入場料の引き上げについても、何か方法があるかもしれない。
ところで、以前に本ブログで紹介した『野球人の錯覚』も、著者は経済学者であり阪神ファンであった。『歴史学者プロ野球を語る』の著者は経営史が専門だが、やはり阪神ファンであった。社会科学的にプロ野球を見るには、阪神ファンの持つ批判精神が必要なのだろうか。
そうだとしたら、阪神ファン以上に異端的な広島ファンこそ、深く鋭い研究を切り開くかもしれない。その点については後日、報告することにしたい。