Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

JIMS部会「最後の晩餐」

2015-04-20 00:21:06 | Weblog
ほぼ1ヶ月前の出来事になるが、JIMS 部会についてはこのブログに必ず記録してきたので、相当遅くなったが投稿したい。私が在外研究の機会を得たことから、座長を務めてきた日本マーケティング・サイエンス学会(JIMS)のマーケティング・ダイナミクス部会の活動を終了した(厳密には6月まで存続)。

この部会を始めたのが2005年の3月なので、ちょうど10年目になる。基本的に年7、8回は研究会を開いてきたので、他の部会に比べて活動は活発なほうでなかったかと思う。参加者は学会員に限らず、メンバー外の発表者を積極的にお招きしたが、それが学会の方針に沿っていたかどうかはわからない。

最後の部会は、韓国からのゲストスピーカーとして KAIST の Minki Kim 先生をお招きした(下の写真の1枚目の右奥に座っている方)。Kim さんはシカゴ大学で経済学の博士号(産業組織論)を取得、マーケティング・サイエンスの一流誌に論文を何本も掲載してきた、まさに新進気鋭の学者である。





今回、Kimさんが話したのは、Twitter での影響伝播に関する実証研究である。実は、昨年のMarketing Science Conference での私と阿部誠先生の共同研究の発表を彼が聴いていたのが、今回のセミナーを開くきっかけになった。幸いにも学界・産業界の双方から多くの皆様に参加いただいた。

この研究は最終的にシミュレーションを行い、少数のインフルエンサーへの働きかけ(seeding)がやり方次第で効果的になることを示している(と私は理解した)。その点は、阿部先生との共同研究とも一致するので、心強く感じた。と同時に、自分たちの研究の今後について焦りを感じてもいる。

研究会の後半では、私と石田大典さん(帝京大学)が行った、プロ野球ファンの意識調査の分析結果を報告。第1に、ファンと球団の適合性とファンと選手の適合性がともに高め合ってファンとの関係性を強めるという、助成いただいた吉田秀雄記念事業財団への報告書の骨格になった研究である。

この研究では、どの球団を応援するにせよ、ファンの意識構造に本質的な差はない。しかし、追加で行った分析では、巨人・阪神・広島のファンの間で求める価値が違うことが示されている。そこでベースにしたのは、有名なロジェ・カイヨワによる遊びの類型化(競争・偶然・模倣・眩暈)である。

Kimさんの研究で取り上げられたのは音楽アーティストに関するツイートなので、音楽とスポーツの話題でこの部会の活動を締めくくることになった。2年後、このような研究会を JIMS 部会として復活させるかどうかはわからない。自分の研究をどういう場で進めていくのが好ましいか今後熟考したい。

この10年間、さまざまな時期に参加いただいた皆様、ご発表いただいた皆様には厚く御礼申し上げます。大変勉強になりました。それが、JIMS であるかどうかはともかく、どこかでまたお会いしたいと思います。ありがとうございました!