名将、上杉謙信は自らを毘沙門天の生まれ変わりだと云っている。
その軍旗は“毘”であった。
国を取るために戦うのではなく、後の利益にこだわらず、いどまれた戦いに勝つのみと語る。
クアトロの今日の魚は、カツオ・クロムツ・サワラ・ウチワエビ・シマエビなどなど、美食を競う。
その戦いに、この“毘”の旗印のもと、クアトロの父が挑む。
豪雪の地、妙高の麓からやって来たにごり酒がある。
鮎正宗の“毘”(びしゃもん)だ。
栓を慎重開けると、ボトル全体が雪に覆われたように真っ白になる。
そのにごり酒をグラスに注ぐと、パチパチと戦の合図のような発砲の音。
口に含むと優しい甘みと乳酸系の旨味に味覚を襲う。
このにごり酒が、クアトロの魚たちの旨味を包み込むことだろう。
いどまれた美食を堪能するのみ。
クアトロの父は語る。
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