昨夜の出来事。仕事が終わり看板を仕舞っていると、外に貼りだしてある「猫、探してます!」の貼り紙を見ている猫がいる。おっ、貼り紙の“じゅじゅ”によく似た猫だ。クアトロの父に緊張が走る。「おいで、おいで」と手を差し伸べるとその猫はクアトロの父の手の中に入ってくるではないか。人なつっこい猫だ。「じゅじゅ」と呼ぶと「ニャー」と答えるではないか。店内に拉致監禁し、クアトロのシェフと相談を始める。
貼り紙の写真と見比べると、「うむ」よく似ているのだ。シェフは猫を裏返し、写真には猫の腹に黄色い斑点があるが、この猫の腹にも確かに黄色い斑点があるという。シェフも興奮している。すでに、深夜12時を回っているが貼り紙の主に電話をする。さすがに、この時間では電話には出ない。クアトロの父は、この猫を探している家に直接出かける。猫は、シェフがミルクを与えて店で待機する。
『確かにじゅじゅです、クアトロさんには何とお礼を申し上げたらいいのやら』などと豊四季のヒーローになることを夢想しつつ、猫を探しているその家に着く。父は深夜にも関わらず自信を持って玄関のベルを鳴らす。二度も鳴らす。家の方が出てきた。クアトロの父は大きな声で「じゅじゅと思われる猫をクアトロで確保しております、確認にいらしてもらえますか」
すると「じゅじゅはもう家に帰っています」
『ガーン』
クアトロの父の声はとたんに小さくなる「そうでしたか、それは良かったです、遅い時間に済みませんでした」
店に戻ると確かに、毛並みが写真より貧そうである。“じゅじゅもどき”君は素知らぬ顔でミルクを飲んでいる。「まあ、お前には責任ないし、勝手にこっちが勘違いしただけだもんな」ミルクをたっぷり飲んで帰ってもらった。
クアトロの父が店から帰るとき、物陰から父を見送る“じゅじゅもどき”君の顔が見えた。