Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

究極のデジタル化

2004-11-29 | テクニック
美しいレコードプレーヤーの写真が新聞を飾っている。懐かしい「アナログ信奉」の話ではない。デジタルPCM技術については、映像であろうが音響であろうがその優越性に異論を挟む余地はない。美学愛好家も一般的なデジタル技術の進展を体感しているので、現状の量子化の精度には不満でも将来に期待している。全ての分野においてデジタル化は、其の解析、処理、記録の合理性ゆえに急速に普及した。

一方オーディオアナログLPの発売数は、ラップミュージックのDJの活躍の余勢を駆って2001年後には1997年のそれから倍増した。其の発売数は、SACDとDVD-AUDIOのニューメディア全てのタイトルを合わせた数の倍という。量は僅かといいながら、このドイツ国内の統計は無視できない。

今でも円熟したアナログ技術が珍重される場合がある。当然の事ながら膨大なアーカイブを持つ放送局などに行くと、そこのエンジニアー達は将来のアナログ素材の運用を不安がる。博物館や図書館等も同様である。貴重な文化遺産を管理して利用していくために、如何してもハードの面でのバックアップが必要となる。しかしアナログ技術による記録の利用方法は、新素材媒体などの開発が無ければ技術革新する可能性は無い。

個人のアーカイブのデジタル化などの需要も多いという。しかし趣味性や耐久性が高い分野(書画骨董以外にも書籍、書類、写真、LP)では、個人のアーカイブの整理・保存そして利用が多くはアナログ媒体のまま図られる。

過去の充実した技術が新しい技術に取って替えられることは、革新として認められる。古い技術はノスタルジーと栄誉に輝いて博物館に展示される。新しい技術は駆使されなければならない。もちろん此処では古典的なヴァルター・ベンヤミンの複製技術の美学的考察も再審査しなければいけない。しかし何よりも最優先されるのは、現時点での汎用デジタル化技術の限界と可能性の評価である。

上述の新聞の記事は「ニュウメディアにとって厳しい数字」と云う。しかしこうして推考すると、冒頭に述べたようにこれは「デジタル信奉」の一現象である事に気づく。究極のデジタル化を彼方に、それをアンチテーゼと見做すことが出来る。
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4 コメント

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gamma@m3.dion.ne.jp (GAM)
2004-11-30 22:44:38
pfaelzerweinさん、こんばんは。デジタル話、拝見しました。実は、僕は一応、ラジオ制作をやっておりまして、デジタル化の多大な恩恵を受けています。前は夜中までスタジオにこもっていた時「自分のスタジオを作りたい」とまで思っていたのが、今やPCとDAWソフトがあれば、どこでも番組の制作が出来てしまいます(出張先のホテルででも!)。しかも、アナログと違って一旦データにしてしまえば何度もやり直しがきくし、音質の劣化も極めて少ない、そしていつでも同じ条件が再現できる。素晴らしいですね。



ただ、自分の「趣味」としてはアナログ万歳で、今でもLP盤でレコードを聞くのが大好きです。
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真剣に議論すべきテーマ! (pfaelzerwein)
2004-12-01 07:56:02
AMさん、「現場」の声有難うございます。仰るように制作側の立場は明白なんですが、趣味としては捨てられないというのがありますね。写真のプリントとか、書籍とかを全てデジタル化してアナログを廃棄出来るかどうかの問いは、過去何十年間も繰り返されています。反対にデジタル製作品をアナログ保持するというのは過渡現象だと思います。日進月歩のアナログのデジタル化技術は、其々がもっと真剣に議論すべきテーマだと思っていますが、如何でしょう?
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アーカイブの世界 (国際資料研究所)
2004-12-01 12:04:11
TBありがとうございました。

DJIレポートは、アーカイブの専門誌でして、、、もう10年もアーカイブのことばっかり扱ってきています。個人の思いで保存とか、組織の記録保存とか、最近では放送番組保存、新聞保存、建物保存、景観保存、その延長線上には、地球環境の保全という人間の存在にかかわる問題もそろそろ見え隠れしてきました。技術は人類の繁栄をもたらし、その技術は地球を滅ぼしそうな勢いです。普通の記録保存がこんなとこまで発展するとは思っていませんでしたが。

それから、デジタル化のことなんですが、当ブログのライフログ「電子記録のアーカイビング」では、現代は未来から見たら記録の暗黒時代??とコメントしています。デジタル情報は長期に保存していきにくいです。このコメントだって、簡単に消せるし。
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朽ちて土に返るのも自然 (pfaelzerwein)
2004-12-02 05:19:50
コメント有難うございました。サイトを改めて一通り拝見しました。予想はしていたのですが、ありとあらゆる分野と交差していて膨大な範囲のようです。デジタルの保存に関しても、生産者は当初からハードウェアーの耐久性に十分な経年を考慮していないことは聞いておりました。確か画家のデューラーが自分の油絵は500年後にも健在だとか言っておりますが、500年先への資料提供ということだけでも可也難しい取捨選択が必要でしょう。それ以外の溢れる商品等は現時点での自然破壊の要因でもあり、朽ちて土に返るのも自然かと思います。恐らく専門の立場からすると未分類のアーカイブというものは記録でなくて将来の発掘に相当するのではないかと推測します。それだけに、サイトの未分類というカテゴリーを見つけ楽しませていただきました。
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