Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

通にしか分らない質と価格

2014-09-16 | 試飲百景
グランクリュ試飲会の週末を無事終えた。昨年度より体調は良かった。日曜日の帰宅後にまた半分以上「フリューリングスオエレッツヘン」を開けれたのでそれが証明されている。但し歯にだけは堪えた。第二日目のヴァッヘンハイムでの試飲会を纏めておこう。

つまらないワインは飲まないことにして、オルツリースリングから始めた。先日開けたばかりのヴァッヘンハイマーからである。自宅での第一印象は新鮮味が落ちたかなと思ったが、こうして飲めばとても活き活きとしていて、前日のシェーンレーバー醸造所の大人しいワインとは大分異なる。バランスが重いなどと評価するのは知らないのだ。こうしたワインが天然酵母百パーセントの自然発酵で出来ていること自体が奇蹟である。からくりは分っているから驚きはしないが。

三つのオルツリースリングを比較する。最も魅力が無いのはルッパーツベルクであり、最も酸が弱い分、誰にでも薦められるリースリングである。反面リースリング通には物足りないのは、格落ちさえ予想されている現時点ではグランクリュ扱いとなっているライタープファットに代表される土壌感である。なるほど殆ど赤土の泥のようなそれは強烈な個性としてリースリングに表れるが、テロワー表出における土壌の差異を示すことの使命を終えた今日のグローセスゲヴェックスにおいては、その個性が厳しく吟味されることになる。それは好みと言う嗜好でもあるかもしれないが、リースリングにおける土壌の反映となると次のような考察が必要となる。

つまり、土壌の主組成である雑食砂岩の土壌感としてこうした粘土質のそれが適当であるかだ。嘗てのプファルのワインとして印象付けられた果実風味は全くその土壌感とはかけ離れる訳で、リースリングの土壌としてのスレートや石灰などに比べて峻厳な雑食砂岩感はここからは求めようも無いからである。その意味からすれば、ガイスボェールよりもライタープファットの方が価値が低いのは致し方ない。

もう一つのフォルストのそれは徐々に良くなってきていて、フォン・ブールのそれが培養酵母臭いのとは異なり、綺麗に土壌感が出てくるようになってきている。その価格差が5ユーロほどでしかないので可也お得なリースリングとなっている。

さて地所ごとのリースリングつまりプリュミエクリュでは、最後の十本に手をつけてしまったのでここでは幻となってしまい、ルッパーツベルクからホーヘブルク、ヴァッヘンハイムからゴルトベッヒャエル、レッヒベッヒャル、ボェーリックの計四種類のみの試飲となる。それに長期醸造のアルテンブルク2012年が並ぶ。

最初のものはルッパーツベルク風であるのは当然であるとして、ヴァッヘンハイムの隣り合う三種類の差異は、なんらの手を加えられない葡萄の差異としてとても興味深いもので、その区画を歩き回ってもなかなかその差異の理由付けなどは見つからないものに違いない。

お待ちかねのグローセスゲヴェックスの御披露目である。ここでの予約してあるペッヒシュタインは売り切れ、カルクオーフェンも売り切れ、イエズイーテンガルテンは十年休止、キルヘンシュトュックは来年までと刃毀れ状態である。私が二本ペッヒシュタインを予約したのは、一本は試飲に使うからだった。50ユーロの試飲である。幻のリースリングである。

それでも最初のガイスボェールの酸も悪くは無く、とてもバランスの良いホーヘンモルゲンも大人気であった。この辺りが一般受けするワインであって、普通の人は石灰が入ることの不利などは一切考えない。石灰が入っているとしてもランゲンモルゲンは昨年までのPCとはことなるGCとしての迫力を見せていた。ナムバーツーのティロル親方に尋ねると、前処理の落とし方も違うようで、なるほどこれならば昨年までは16ユーロで買えていたものが50ユーロしてもある程度は納得できるだろう。最後のウンゲホイヤーの残糖からすると一寸色気が出てきたのも事実である。

昨年の2012年、どちらかと言うと個性が弱くて開き切っていなかったそれは残しておけと言われた。恐らく、実験的な面もあって、手が込んでいたのだろう。かなり清潔感が溢れていて面白みが無かったのは事実だから、十年ほどすると可也開くのかもしれない。

古い年度からは2007年のレッヒベヒェル、恐らく自宅でも飲んでいるだろうが、大分黄色くなっていた。2010年のゲリュンペルのマグナムも可也色が付いていて文句をつけたぐらいだ。石灰臭さは無かったが、2010年の処理が若干悪影響している感じがある。2009年のガイスボェールはとても熟れていてよかったが酸が弱い分やや物足りない。現時点では万人が美味いと言うに違いない。2004年のペッヒシュタインドッペルマグナムは更に若返った感じで、私の普通の瓶ももしかすると若返っているかもしれない。2002年のキャラメルのライタープファートはペッヒシュタインのそれとは比較にならないのは当然である。ペッヒシュタインの甘口二種類、試さなかったと記憶する。

その後、ラインガウのブロイヤーのワインなどを試したが、これに関しては日曜日のレープホルツの試飲会と絡めて述べよう。その後食事を取りに座った席で元裁判官の夫婦と同席した - スパイヤー在であるからベルドールトの顧客でもある。椅子を取られたので最初は怒ったのだが、これまた面白い親爺だった。彼の友人の名前で地元割引が効くのだが効かなかったとかで、私の名前で割引させた。その嗜好を色々聞いてみると普通の俗受け向きだったが少し教授してあげた。「現金な」もので彼は安売りの聞くヴァッヘンハイマーにルッパーツベルクから乗り換えたのだ。また話にならないからと、フォン・ヴィンニゲン醸造所の地所を見てみろとか、酵母の使い方なども示唆しておいた。全くワインの質とかそういうことが分らないと価格の意味やお得や割高などが全く分らないのだ。

なるほど官能テストの訓練を積めば少なくとも亜硫酸臭や酵母臭の減点は出来るようになるだろうが、そのワインの将来性や瓶熟成の可能性などはそこからではわからないのである。実際に熟成させてみて呑んでみなければ質と言うものが分らないのである。専門家と言われる人でもそれが中々分らないのは、よい醸造所で買い込んで修行を積んでいないから仕方ないのである。そうしたワインを醸造していない醸造所でも分らないのだから、当然のことなのである。グラスのワインを燻らして悦にいっている姿を想像してみるがよい。如何に馬鹿げた痴態であるかがこれで分るだろう。

イタリア人の親方と、先日行ったフランケンの岸壁などについて話した。石灰であるから彼にとってはドロミテとの比較になるだろうが、スポーツクライミングとしてのその程度に感動していた。一段落付いたら今年は彼ともう少し一緒に登れそうだ。勿論内部情報も楽しみだ。



参照:
雨のナーヘの谷を回遊 2014-09-14 | 試飲百景
'12年グローセゲヴェックセ? 2013-09-11 | 試飲百景

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