田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

下痢35  麻屋与志夫

2019-12-01 11:25:23 | 純文学
35

 後ろからポンと肩をたたかれた。
 ――お先。
 彼女がぼくを追いこした。
 
 ――大阪から追いかけてきたの?
 ――東京からよ。
 
 門前に妻が二人の娘とぼくを待っていた。
 
 妻が手をふっている。
 
 妻とぼくを結ぶ直線上を彼女は小走りに進む。
 
 彼女が妻と重なった。
                                      未完。





作者注。
 「下痢」という小説の題としてはあまり芳しくない拙作ご愛読ありがとうございました。
冒頭で述べましたが、老人医療が二割負担になりそうですね。これは老人医療制度のない時代の物語です。あまり直接的に、リアリズムで書いてはあの苦しい時代をおもいだしてしまうので、こうした作品になったのでしょう。初出は同人誌「現代」です。1976年です。大幅に改訂しました。文章が支離滅裂。精神的な苦労のあとがみられました。
 時系列に従った語り口ではなくてごめんなさい。
 直腸癌で亡くなった父の闘病、ぼくら夫婦の生活苦との戦いを書いたものです。貧困のどん底生活。でも誤解されると困るので、書いておきます。その当時の平均的サラリーの二倍も医療と家政婦の支払いを成し遂げていたのですよ。苦しかったです。
 どうにか、この歳まで生きてきましたが、医療費が二割り負担になったらどうしましょう。もう死んでいくしかありません。悲しい話です。



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