田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

夕日の中の理沙子 32   麻屋与志夫

2008-12-09 07:20:01 | Weblog
みんなが帰った。

みんな安心して帰った。

わたしはのこった。

「キヨミ……あんただからさ……ただじゃないわよね」
「あら、なんのことざーますか」
「唇にチャックの、交換条件よ」
「さすがー。やっぱり宇都宮操女子高ね」
「はぐらかさないで……」
「推薦で」

キヨミがわたしを招く。

うんうんと耳をよせる。

「あんたと同じ宇都宮の……。
私立下野高校に推薦入学、キメチャッたぁ」
「おどろいた、やったわね。キヨミ。
トウキョウボイをなでぎりにするのは……。
おあずけね」  
「災い転じて福となす」
「骨折して、推薦をとる」

キャハハハハハハハハハハハハハハハとふたりで笑いころげた。


つかれた。

夢で、こうじに会いたい。

わたしの日記チャン、Dear my Diary。おやすみなさい。

その夜。

日記をとじたあとで。
たいへんなことがおこった。

北の方角、木工屋さんのおおい。
御成橋の方角に火の手があがった。

闇が赤く燃えていた。

火事だ。

消防車のサイレンが幾重にもかさなりあった。

けたたましい、夜をきりさく音が。

くりかえし鳴りながら通り過ぎていく。

消防車のゆくての空があざやかな朱色にそまっていた。

またあらたな火の柱があがった。

燃えながら、なにかがはじける音がする。

ひとびとのざわめきが伝わってくる。

わたしはベランダにでて北の真っ赤な空をみていた。

犬がときならぬ火事におどろいて吠えている。

火の粉が夜空にまいあがっている。

かなりの火勢だ。

「火もとは岩村材木だって」

母が起きだして、電話でたしかめたらしい。

高見建具。コウジの家のちかくだ。





one bite,please. ひと噛みして!! おねがい。
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ああ、快感。


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