田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

裏鹿沼(6)/三億八千万年の孤独 麻屋与志夫

2011-04-23 12:10:36 | Weblog
6

美智子からのメール。

ジイチャン。
直人が逝ってしまったよ。
残酷すぎる。
悲しいよ。
涙もかれて、もうでない。
塩っ辛くて目が痛い。
痛いよ。
でももう涙はでない。
こういうのって、血の涙をこぼす。
というのよね。
ジイチャンに聞いたことがある。
どんなに涙こぼそうとしても。
どんなに悲しくても。
涙は。
もうでない。
目がちりちり痛い。
直人がもういないなんて信じられない。
まだ出会ったばかりだったのに。
これからいっぱいたのしいことが待っていたのに。
これから――なんどもなんどもデートして。
愛を深めていくことができたのに。
……直人が、滑落事故で死ぬなんて。
予想もしなかった。
わたしはこれからどう生きればいいの。
ジイチャン、教えて。おねがい。

このメールを受け取ったときも。
麻耶は自由が丘の娘、里恵の家に駆けつけた。

あのときは孫娘、美智子を慰めるためだった。
こんどは危険な予感、孫にオニガミの影がおおいかぶさるような。
孫が命を狙われているような。
悪意が迫っているような。
予感がする。

それにしても、また覚醒した。
すっかり忘れていた感覚だ。
いまごろになって。
どうしてなのだろう。
麻耶は心を落ち着けるために、
さらに美智子のべつのメールを読みすすめた。



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