田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

吸血鬼/浜辺の少女

2008-05-17 08:30:03 | Weblog
5月17日 土曜日
吸血鬼/浜辺の少女 41 (小説)
「ジャマするな。こいつはおれのエモノだ」
「おれがせんくちだ」
高野と遠山が、獲物を前にしたハイエナのようにいがみ合っている。
どちらが先に獲物に食らいつくか争っている。
「うるさい。ジャマだ!! どけ」
ぎらりと抜いた。真剣の光にうたれて遠山が飛び退いた。
「そそれは」
高野は日本刀だった。と遠山が気付く。
「バカが、おまえらの道場剣法とちがうっうの」
遠山に高野が威嚇の打ちこみをみせる。
高野の攻撃をうけて遠山が顔面蒼白。
それでも剣のとどかない距離に飛び退いた。さすがだ。
そのすきに、隼人は武器になりそうなものを探した。
いつでも、引き抜くとのできるポールがあるとはかぎらない。
「トウウウ」
高野の気合がPキングの車の窓を揺るがす。
遠山と共に隼人を追ってきたシナイの面々は高野の剣気に怯えてMTD。
見てるだけ。
族。バンパイアのメンバーもMTD。
ケントを含めて、神妙にことの成り行きを見てるだけ。
「差しの勝負だ。手をだすなよ」
と高野に厳命されている。
肩へ振り下ろされた剣を隼人は辛うじて避けた。
後ろに4メートルも飛び退くことが可能だった。
また、夏子にプリントされた能力に助けられた。
だが肩に斬りこまれたより激しい痛みが走った。
高野の邪悪な剣気は、それほどのものであつた。
普通の人ならその剣気にうたれて動けなくなる。
易々と切り倒されていた。それほどの太刀筋だ。
隼人が飛び退いた地点に鬼島がいた。
ブルックスの黒のポロシャツを着ている。
道場での戦いでかなりのダメージをうけているのに。
五体満足だ。
どこからみても、だだのチンピラにしか見えない。
この男が吸血鬼の先鋒とはだれも信じないだろう。
コイツラの裏の顔を感知できない。だから人は平穏無事な日常を生きていけるのかも知れない。
(やはり。そうだ。夜の一族の歯牙はキャンパスにまで及んでいるのだ)
隼人の鼓動が高鳴る。しかしそれは心の乱れではない。
大学にまで吸血鬼の支配の悪しき波が打ち寄せている。
それを知ったためだ。夜の一族が大学にまで侵攻してきた。
それを知ったためかえって隼人には平常心がよみがえった。
心の平静さをとりもどした。落ちついて立ち向かえばいい。
剣道で鍛えた心と体だ。すぐに平静な心になれる。
道場をおそった吸血鬼を撃退した。それが自信となっている。
「姫がいないと、逃げるだけかよ。喧嘩一つできないのか」
「おまえこそ、のこのこ白昼出回って……いいのか。日焼け止めでも塗ってきたのかな。黒こげになるぞ。田村のヤツはどうした。再生できなかったのか。おれの友だち、遠山になにをしたのだ。目的はなんだ。象牙の塔の征服か。世界征服なんてバカなことを鹿人と本気で考えていないよな」


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