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「ミイマ。神代寺に連絡できない。だれも電話に出ない。モニタールームからかけても、プラツクアウトしたままなの。どうしょう」
玲加が青ざめている。
体力を消耗した。だからソファで休んでいた。ミイマは起きあがった。
どういうことなのだろう。
だれも電話にでないなんて……まだ夜は始まったばかりだ。
でも、この時間にはみんながバラ園で働いているということはない。
ミイマはふいに心拍の速まるのを感じた。
こうしてはいられない。
「どういうこと? なにが不安なのだ」
GGが寄ってくる。
青ざめた顔で隣室のソファで横になっていたはずのミイマ。
「ミイマ。どうした」
「いままで気づかなかった。狙いは……わたしたちかもしれない。わたしたちが狙われているのかも……」
「いくか!」調布へという言葉をGGは省いた。
ミイマは部屋をでたときからその気だ。
GGに皮ジャンを投げてよこした。
不安をかかえて、向こうからの連絡を待つより――こちらからかけつけたほうが速い。ミイマは翔子のバイクのシートに。
GGは純の。
玲加と百子はそれぞれのバイクにとびのった。
百子はクノイチガールズに「神代寺バラ園の緊急集合。緊急集合」と呼びかけた。
GGも「アサヤ塾」ネットワークに連絡する。
調布近辺にいる卒業生は思い当たらない。
でも連絡しないではいられなかった。
ミイマの予感はよく的中する。
あのあわてかたは異常だ。
バラ園でなにか起きている。
起きていないことを、願うより、起きてしまっていることを確信しているGGだった。
バラ園は静まりかえっていた。
鋳鉄製のフェンスから中をのぞいていた男がふりかえった。
「おひさしぶりです」
「川田誠。マコチャンか」
背広の男がほほえんでいる。
「調布署のいまでは刑事です」
百子はガールズのバイクに取囲まれていた。
「みんな、いくわよ」と百子。
ミイマが門扉のキーを開ける。
バラ園は静まりかえっている。
散水のホースがのたくっていた。
水が奔流している。
バラの鉢がいくつか倒れている。
なにものかに不意を襲われたのだ。
そうとしか思えない。
「どういうことなのですか」
誠がGGに訊いている。
「ここはカミサンの実家なのだ。なにものかに襲われたようなのだ」
だれもいない。
ミイマは声に出して叫びたいのを必死でこらえた。
真紅のリルケのバラが小道に落ちていた。
切り花にでもするつもりで切ったのかしら。
わたしがこのバラの名前がわからないので「リルケのバラ」と仮に名付けて「このバラの名前は」父にくつたものだ。
父にはもちろん、正確なバラの名前はわかつている。
それでもやっと娘がばらに興味をもってくれたことを記念してくれた。
リルケのバラの咲き乱れる一隅をつくってくれた。懐かしい思い出だ。
バラの切り口が奥の雑木林の方角を指している。
それに気づいてミイマは小娘のように走りだした。
「パパ。パパ」
ミイマはつまずいた。
つまづいたものは――仰向けに倒れた作業員だった。
一族のものではない。
一般の作業員だ。
抱き起す。
首筋から血があふれている。
まだ固まっていない。
生きている。
霧状に喉の奥から血をふきだした。
「しっかりして。いま救急車をよぶから。だれかついていてあげて」
おとこは林の方角を指している。
口はきけない。
ゴボッとまた血を吐きだした。
ミイマのほほに血が飛び散った。
リルケのバラ
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「ミイマ。神代寺に連絡できない。だれも電話に出ない。モニタールームからかけても、プラツクアウトしたままなの。どうしょう」
玲加が青ざめている。
体力を消耗した。だからソファで休んでいた。ミイマは起きあがった。
どういうことなのだろう。
だれも電話にでないなんて……まだ夜は始まったばかりだ。
でも、この時間にはみんながバラ園で働いているということはない。
ミイマはふいに心拍の速まるのを感じた。
こうしてはいられない。
「どういうこと? なにが不安なのだ」
GGが寄ってくる。
青ざめた顔で隣室のソファで横になっていたはずのミイマ。
「ミイマ。どうした」
「いままで気づかなかった。狙いは……わたしたちかもしれない。わたしたちが狙われているのかも……」
「いくか!」調布へという言葉をGGは省いた。
ミイマは部屋をでたときからその気だ。
GGに皮ジャンを投げてよこした。
不安をかかえて、向こうからの連絡を待つより――こちらからかけつけたほうが速い。ミイマは翔子のバイクのシートに。
GGは純の。
玲加と百子はそれぞれのバイクにとびのった。
百子はクノイチガールズに「神代寺バラ園の緊急集合。緊急集合」と呼びかけた。
GGも「アサヤ塾」ネットワークに連絡する。
調布近辺にいる卒業生は思い当たらない。
でも連絡しないではいられなかった。
ミイマの予感はよく的中する。
あのあわてかたは異常だ。
バラ園でなにか起きている。
起きていないことを、願うより、起きてしまっていることを確信しているGGだった。
バラ園は静まりかえっていた。
鋳鉄製のフェンスから中をのぞいていた男がふりかえった。
「おひさしぶりです」
「川田誠。マコチャンか」
背広の男がほほえんでいる。
「調布署のいまでは刑事です」
百子はガールズのバイクに取囲まれていた。
「みんな、いくわよ」と百子。
ミイマが門扉のキーを開ける。
バラ園は静まりかえっている。
散水のホースがのたくっていた。
水が奔流している。
バラの鉢がいくつか倒れている。
なにものかに不意を襲われたのだ。
そうとしか思えない。
「どういうことなのですか」
誠がGGに訊いている。
「ここはカミサンの実家なのだ。なにものかに襲われたようなのだ」
だれもいない。
ミイマは声に出して叫びたいのを必死でこらえた。
真紅のリルケのバラが小道に落ちていた。
切り花にでもするつもりで切ったのかしら。
わたしがこのバラの名前がわからないので「リルケのバラ」と仮に名付けて「このバラの名前は」父にくつたものだ。
父にはもちろん、正確なバラの名前はわかつている。
それでもやっと娘がばらに興味をもってくれたことを記念してくれた。
リルケのバラの咲き乱れる一隅をつくってくれた。懐かしい思い出だ。
バラの切り口が奥の雑木林の方角を指している。
それに気づいてミイマは小娘のように走りだした。
「パパ。パパ」
ミイマはつまずいた。
つまづいたものは――仰向けに倒れた作業員だった。
一族のものではない。
一般の作業員だ。
抱き起す。
首筋から血があふれている。
まだ固まっていない。
生きている。
霧状に喉の奥から血をふきだした。
「しっかりして。いま救急車をよぶから。だれかついていてあげて」
おとこは林の方角を指している。
口はきけない。
ゴボッとまた血を吐きだした。
ミイマのほほに血が飛び散った。
リルケのバラ
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