5月19日
ためらいがちななにか救いを求めるような手のひらが、
ルナのやわらかなレッドダビーの体に触れた。
かすかに苦悩がうすらぐような兆しがして、わたしはそのままルナに触れていた。
「便座のなかはゲリラ豪雨だ」と妻にジョークで報告する気力はあったものの、
暗黒の中におちこむようにルナとともにベッドにころがりこみ、
えもいわれぬ恐怖におそわれそこからぬけだそうとルナにすがっていたのは、
父が直腸癌で下痢をつづけて、
部屋中父の排泄物の臭いがみちみちてくる過去の悲惨な生活を思いだし、
それがいま現実のものとなったらどうしょうと、
意識が過去に飛び破局がおとずれるのか、
この歳まで生きてこられたのだから余り生に執着しないほうがいいいと、
わたしをつつみこむような恐れと戦う気力を、
ルナのあたたかなはだざわりからうけとっていた。
ルナにはとかく萎えがちなわたしの気力に精気をふきこんでくれるような、
癒しの効力があるのだと悟っていた。
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父が直腸癌で下痢をつづけて、
部屋中父の排泄物の臭いがみちみちてくる過去の悲惨な生活を思いだし、
それがいま現実のものとなったらどうしょうと、
意識が過去に飛び破局がおとずれるのか、
この歳まで生きてこられたのだから余り生に執着しないほうがいいいと、
わたしをつつみこむような恐れと戦う気力を、
ルナのあたたかなはだざわりからうけとっていた。
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