田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

超短編32 フカイツリー/ネコ族の滅亡

2013-02-26 17:07:22 | 超短編小説
32 フカイツリー/ネコ族の滅亡

けっして、スカイツリーの誤りではナインジャ……ニャン。
だいたい爪をたててわがネコ族が、
はい上ることのできない木なんかあって、
たまるか!!
ニャンニャンゴロゴロニャン。
吾輩はおこっているんジャ。
そこで不快ツリー。
とこうくるんだ。
たかが、高い鉄骨の塔をたてたぐらいで、
おおさわぎする人間てな動物の気がしれないね。

窓を開ければ、ツリーが見える。
フカイツリーの灯が見える。
ここは立石。
ちがうってば。
力石ジャナインジャ。
あれは、漫画。
『明日のジョー』のキャラ。
いや、まてよ、まんざら無関係でもないニャン。
立石は畏れ多くもかしこくも元WBCフライ級王者内藤大助の住んでいる街だ。

焼き鳥がうまいぞ。
安くてうまいぞ。
道まではみだして半透明ビニールで囲った『二毛作』なんか、
もう絶品。
酔客がいいね。
おいらをかわいがってくれる。
串からなんとなく、
さりげなく、
気づかれないようにトリをおとしてくれる。
粋だね。
うれしいじゃないか。
お酒を、焼酎をうまそうに飲んでいる。
猫にも『二毛作』なんて憩いの場があるといいのにな。
三本毛がふえれば、猿じゃないが猫ももっと人間らなれるのかな。
おいらも、裏作には人間になりたいよ。
ハヤクぅ人間になりたい。
たらふく酒なるものをのんでみたいな。
匂いをかいで酔っただけでもこんなにいいきもちなんだもの。

分けいっても 分けいっても トリの匂い。

とくらあ……あれ……ココへんだぞ。
『闇市横町』なんてきいたことないよ。
そりゃ、むかしはこのあたり一帯、闇市として発展してきたのだろうけど――。
おいら、このあたりのボス猫だから歴史にも地理にもくわしいんだ。
そういえば、
ここは地図にはない路地かもしれない。
他国からの流民が住んでいる。
おいらのマーキングの臭いはする。
外国語がみだれとぶ。
おいらがはじめて迷いこんだ路地であることはたしかだ。
おいらの臭いがする。
ガールフレンドのだれかがやはり迷いこんでいるのだろう。
三毛ちゃんかな。
ブラッキーチャンかな。
はやめに、フライングゲットしておいた子猫ちゃんたちだ。
まあ、あらかじめ、
ツバをつけとくってことかな。
でも。
なにか。
異様に危険なかんじ。
これって肉切り包丁の臭いだ、
ニャン。
ヤバ。
超ヤバ。
〈どれを食べても、穴あき50円〉と歌い文句で売り出し中の外人の焼き鳥やのある路地だ。
GFのことは気になるが、
逃げた。
色気づいて、フケテて鳴いている場合じゃない。
ふけるんだ。
逃げろ。
おいらは、その肉屋でおいらのマーキングの臭いをかいだ。
怒り心頭に発した。
怒髪天を突き、
でも、
逃げた。
生死の分かれ目。
逃げた。
肉切り包丁が追いかけてくる恐怖。
こわい。
こわい。
こわい。

うしろからボーリングのボールが転がってきた。
いやブラッキーちゃんの頭だ。

「ボス。逃げて。アイツラ、悪魔よ!! ボス。逃げて―」

猫は七つの命がある。
首を切られたことくらいでは死なない。
怨念となって復讐だってできる。

待ってろよ。
ブラッキー。
この敵はかならずうってやるから。
おいらは、
くやしくて涙がぽろぽろとこぼれた。

敬天愛人。

天を敬い、
人を愛する。
そんな理屈はあの包丁やろうにはつうじないのだ。

お日さま、SUN,SUNの日向でからだをすりよせあって、
うとうとしていた幸せな日々はおわったのだ。
ついに悪魔が動き出した。
テロもおきるかもしれない。
パッと曲がったら――いつもの『二毛作』の前だった。
でもはしりつづけて、
二坪ほどの空き地に出た。

日が照っている。

ひとりひっそり放浪猫

ごろり寝ころべばオレヒトリ

からだすりよせて、
ねそべって、
日向ぼっこのしあわせは消えた。
追いかけてくるもの。
おいらを拉致しょうと、
せまってくるものがいる。
だれがが、
わがネコ族の皆殺しをはかっているのだ。

おいらは、ぬくぬくとしだ陽射しをあびて、たった一匹だった。


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