奥様はバンパイァ 48
○GとM、そして玲加が五月のバラの香りを胸いっぱいに吸いこんでいた。
でも驚いてはいけない。
あたりには誰もいない。
化沼の麻生家のバラ園では……? ない。
ここは神代バラ園。
開園までにはまだだいぶ時間がある。
○「なにか起きるっていうの」
玲加がまだ信じられない声でGに問いただす。
Gはなにを血迷っているのかしら?
「イメージがあった。バラ園が襲われていた。わが家のバラ園よりずっと広かっ
た」
それは数時間前のセリフだ。
「そして、わたしがしっているバラ園といえばここしかない」
これがいまの玲加の質問への回答だった。
ただそれだけ理由で夜を徹して高速で調布まできたのだ。
クリッパーのタイヤがバーンナウトしてしまうのではないかと心配なほどとばして
きた。
○コンクリートの天井に現れた3Dの古戦場、阿鼻叫喚の戦いを見た後なのでまだ混
乱しているのではないかしら。
玲加テキにはそう思っている。
死人の泣く声を聞いた。
恨みの叫びを聞いた。
凄惨な敗北の戦場だった。
その怨念がMのDNAに引継がれているというのがよくわかった。
そのあまりの悲しさ悔しさの現場を見て、感じとったのでGまでおかしくなってし
まったのではないか。
「神代バラ園がアブナイ」
ただそれだけの説明でわたしとMを同乗させここまでやってきたのだ。
○五月の薫風が凪いだ。
バラの花影がふいに色を失った。
バイクが騒音をあげてバラ園の裏側の林から現れた。
ラバーマスクは人狼のものだ。
でも玲加はしっている。
あれはマスクなんかじゃない。
ひきはがすことはできない。
かれらは人狼そのものなのだから!!
玲加はMに習ってリルケのバラの鞭をかまえた。
麻生家のバラ園から持参したものだ。
Mが丹精込めて育てている真紅の薔薇。
元の名前がわからなくなった。
Mはリルケのバラと呼ぶ。
真紅の薔薇を咲かせている。
人狼チェーンをジャラジャラさせて襲ってくる。
真紅のバラの鞭は金属のチェーンに勝てるのか。
リルケのバラ
pictured by 「猫と亭主とわたし」
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↓
○GとM、そして玲加が五月のバラの香りを胸いっぱいに吸いこんでいた。
でも驚いてはいけない。
あたりには誰もいない。
化沼の麻生家のバラ園では……? ない。
ここは神代バラ園。
開園までにはまだだいぶ時間がある。
○「なにか起きるっていうの」
玲加がまだ信じられない声でGに問いただす。
Gはなにを血迷っているのかしら?
「イメージがあった。バラ園が襲われていた。わが家のバラ園よりずっと広かっ
た」
それは数時間前のセリフだ。
「そして、わたしがしっているバラ園といえばここしかない」
これがいまの玲加の質問への回答だった。
ただそれだけ理由で夜を徹して高速で調布まできたのだ。
クリッパーのタイヤがバーンナウトしてしまうのではないかと心配なほどとばして
きた。
○コンクリートの天井に現れた3Dの古戦場、阿鼻叫喚の戦いを見た後なのでまだ混
乱しているのではないかしら。
玲加テキにはそう思っている。
死人の泣く声を聞いた。
恨みの叫びを聞いた。
凄惨な敗北の戦場だった。
その怨念がMのDNAに引継がれているというのがよくわかった。
そのあまりの悲しさ悔しさの現場を見て、感じとったのでGまでおかしくなってし
まったのではないか。
「神代バラ園がアブナイ」
ただそれだけの説明でわたしとMを同乗させここまでやってきたのだ。
○五月の薫風が凪いだ。
バラの花影がふいに色を失った。
バイクが騒音をあげてバラ園の裏側の林から現れた。
ラバーマスクは人狼のものだ。
でも玲加はしっている。
あれはマスクなんかじゃない。
ひきはがすことはできない。
かれらは人狼そのものなのだから!!
玲加はMに習ってリルケのバラの鞭をかまえた。
麻生家のバラ園から持参したものだ。
Mが丹精込めて育てている真紅の薔薇。
元の名前がわからなくなった。
Mはリルケのバラと呼ぶ。
真紅の薔薇を咲かせている。
人狼チェーンをジャラジャラさせて襲ってくる。
真紅のバラの鞭は金属のチェーンに勝てるのか。
リルケのバラ
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