田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

洋子の誘拐 6 奥様はバンパイア 麻屋与志夫

2009-08-23 07:16:20 | Weblog
奥様はバンパイァ34

○武がどう動いたのかわからなかった。

「美智子」とわたしには警告を発するのがようやくだった。

部屋の隅に移動したカミサンの前に武がのっそりと立っていた。

美智子は平然としてそこに微笑んでいた。

わたしには、彼女がとうとつに時間を遡行したように見えた。

知りあったころの若やいだ姿で彼女はそこに存在していた。

彼女には年をとるということはないのかもしれない。

○美智子は両手の平を真っ直ぐに武に向けていた。

すうっと武の精気を鼻腔で吸収して体に溜めいっきに「気」として伸ばした腕から

掌から武にたたきつけた。

○「発勁よ」美智子が解説するようにわたしにいった。

いまの美智子の技におどろいているわたしをいちはやく感知していたのだ。

○「わたしたちの一族は唐をへて日本にたどりつく過程でそのルートにある闘技を

学んできたの」

○「いままでは戦う必要がなかったから……。ダーリンには発披露ね」とおどけ

る。

この余裕はどこからくるのか。

武は壁までふっとばされた。

どんという響きが粗末な小屋を揺るがした。

○美智子は部屋の隅に置いてあった段ボールの空き箱を払いのけた。

みよ、床に取っ手がはめこんであった。

○「無防備ね。もっとも人狼のアジトを襲うものがいるとは、想定外だったのね」

カミサンと玲加がダッと階段をおりていくのを見下ろした。

わたしは部屋に残った。

この隠し収納庫の扉を閉められでもしたら危険だ。

武はおのれの凶悪な害意をそのままたたきつけられたショックから立ち直れないで

いる。



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