ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

『橋下徹の政権奪取 』- 3 ( 政治を劣化させる、ブレーン集団 )

2018-05-23 15:29:26 | 徒然の記

 平成23年の11月、橋下氏は、大阪都構想の実現を目指し、3ヶ月の任期を残したまま知事を辞職し、大阪市長選挙に立候補しました。

 この時橋下氏は、誰にも応援を頼みませんでしたが、多くの政治家が駆けつけました。東京都知事の石原慎太郎氏と、副知事の猪瀬直樹氏、みんなの党の代表渡辺喜美氏と、幹事長の江田憲司氏、それと前宮崎県知事の東国原英夫氏でした。時の人となっていた橋下氏が圧勝するのは誰の目にも見えていました。

 前杉並区長の山田宏氏は、沢山の応援者がいるので、選挙応援にはいきませんでした。氏は当時、月に一度の勉強会を開いており、参加者は、民主党議員の前原誠司氏のほか、自民党からなど超党派の議員が5、6人でした。

 平成24年の1月に、前原氏の口利きで、橋下氏がこの会に初めて参加しました。この時の様子を、大下氏の著作から紹介します。

 ・会はいつも午後9時頃から始まり、終わるのは深夜零時近くなる。大阪から出てきている橋下だけは、会場近くのホテルに一泊する。

 ・山田は以前から親交のある橋下を、飲みに行きませんかと誘った。二人は酒を酌み交わしながら、他愛ないお喋りをした。そのうち自然と、どうしたら日本の国は変わるのか、という話になった。

 ・山田さん、大阪都構想を手伝ってくれませんか。貴方は、特別区長もやっておられた。

 ・これまで長いつき合いもあるし、できる限りやりますよ。

 大阪都構想は、大阪版の都区制度ですから、橋下氏は杉並区長時代の山田氏の経験を欲しがっていました。

 こうして山田氏は大阪市の特別顧問となり、「新な区、移行推進プロジェクトチーム」の座長に就任します。先の中田氏も特別顧問となり、市内24区の区長を全国公募するという計画を推進しています。

  昨年、小池氏が「希望の党」を立ち上げたときもそうでしたが、国民の人気が高まると、マスコミが大騒ぎして持ち上げます。すると、無視できなくなった既成政党が近づいていきます。

 橋下氏の周りには、自民党や公明党だけでなく、民主党やみんなの党や減税日本も近づきました。都知事の石原氏は、知事を辞め「太陽の党」を立ち上げ、積極的に橋本氏にエールを送ります。「国民の生活が第一」という奇妙な党を作った、小沢氏までが取りざたされました。

 橋下氏は、地域政党だった「大阪維新の会」を発展させ、国政政党「日本維新の会」をつくり、日本中の話題をさらいました。現在はどうなっているのか知りませんが、氏が特別顧問として集めた、他のブレーンたちの名前を、列挙してみましょう。

 原英二

  元経済産業省の官僚、渡辺喜美行革担当大臣補佐官、(株)政策工房社長

 堺屋太一

  元経済企画庁長官

 古賀茂明

  元経済企画庁官僚

 高橋洋一

  元財務省官僚 小泉・安倍政権で内閣参事官、(株)政策工房会長

 竹中平蔵

  元総務大臣、元財務大臣、

 平松市長時代には3人だった特別顧問が、橋下氏になり18人に増えました。類は友を呼ぶと言いますが、ブレーンは竹中平蔵氏や堺屋太一氏を筆頭に、全員自己主張、自己顕示欲が旺盛で、口達者です。

 「維新が目指す、道州制の狙い」

 「傷を恐れずに進む維新、揺れるみんなの党」

 「橋下徹の、政権奪取戦略」と、大下氏の著作は続き、橋下政権はあり得るという結論に達します。

 大阪府知事を辞め、大阪市長を任期満了で退任し、現在では政界からの引退声明まで出した橋下氏です。大下氏の予測が外れたことになりますが、「ねこ庭」が思い出すのは、鴨長明の「方丈記」の書き出しの一節です。

 「行く川の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。」

 「よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとゞまることなし。」

 政界という大河には常に水が流れていますが、もとの水ではありません。川の淀みに浮かぶ泡も、浮かんだり消えたり、長く止まるものがないという有名な文です。

 橋下氏の「維新の党」も、「みんなの党」も、「民主党」も、政界の淀みに浮かぶ、泡の一つに過ぎませんでした。

 つまらない本でも、私が感謝しているのは、氏が教えてくれた、「ブレーン」( 特別顧問 ) と呼ばれる人々の存在です。元官僚が多いのですが、新しく作られる党に集まり、知恵を授けたり、支援したり、リードしたりしています。

 彼らは、党の垣根を越え、自分の「ノウハウ」を売っています。

 それはちょうど、選挙の専門家が政治家に高給で雇われ、選挙の企画から実行まで請け負うのと似ています。

 彼らは、「みんなの党」のブレーンであると同時に、「維新」のブレーンでもありました。竹中平蔵氏などは、小泉政権でも安倍政権でも重用され、橋下氏にも協力しています。

 いつから政党が、このようなブレーンを活用するようになったのか知りませんが、米国式の制度でないのかとそんな気がします。

 「選挙に勝つ」、「政権を取る」、「相手陣営を叩き潰す」と、ブレーンたちは知恵を凝らします。ここでは歴史への理解や、文化や文明への敬意はなく、目前の勝負に勝つことだけが求められます。

 私たちの知らない間に、政党の浮き沈みや選挙活動などが、米国式のプレイに限りなく近づいていたということなのでしょうか。最近の政党が、歴史観も文明への理解も薄くなり、ただ相手を非難したり攻撃したり、そんなことばかりしている理由が、分かった気がします。

 反日左翼の思想だけでなく、政治そのものをプレイ化する「ブレーン集団」の台頭にも、注意を払う必要が出てきました。氏の著作そのものは、レベルの低い読み物でしたが、「ブレーン集団」を描きだしたところに、強い関心を抱かせられました。

 この本は資源ごみとして活用するしかありませんが、氏が教えてくれた事実は、大切に、「ねこ庭」の記憶の箱へ仕舞うことにします。

 著書は資源ごみへ出しても、やはり氏には感謝しなくてなりません。

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4 コメント

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支持を集める「ぶっ壊す」 (成田あいる)
2018-05-24 20:55:57
この一連のエントリを拝見しています。

小泉元総理の「自民党をぶっ壊す」ではありませんが、「改革」を訴える者は、「ぶっ壊す」路線だと思います。
また、その「ぶっ壊す」路線が時に大衆の支持を大きく集めると思います。
橋下氏もまた「大阪府」を、そして日本も「ぶっ壊そうと」していたように感じます。

この前のエントリにもありましたが、公務員は何かと、「ルーチンワーク」だけやって定時上がり、生活も保障、官僚も「やりたい放題」で「責任逃れ」、と言うところが批判の的となりがちです。
良く選挙で「官僚政治の打破」、いわば「官僚政治を」ぶっ壊すを「公約」に掲げる候補者が多く、それが国民の耳目と支持を集めやすいと思います。

小泉元総理は、「郵政」を「ぶっ壊して」くれたので、ある程度の「成果」はあったように感じます。
が、橋下氏は「ぶっ壊す」前に自滅してしまったと思います。

そして「野党」にありがちな、「華々しいのは一時だけで、あとは『撃沈』『泥船』」の末路を、例外なく「日本維新の会」も辿って行ったと思います。

竹中平蔵氏は何かと、「日本を貧困に陥れてくれた」と非難が高いですが、なかなか「篤い」ところがあると思います。
麻生氏も安倍総理の「ブレーン」だと思いますが、逆風吹き荒れる中乗り切っていただきたいと思います。
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ぶっ壊す (onecat01)
2018-05-25 00:39:40
成田あいるさん。

 非力な庶民は、「ぶっ壊す」という、威勢の良い言葉に、どうしても心を動かされます。

 自民党の組織であったり、官僚組織であったりすれば、ぶっ壊すという人間をつい応援してしまいます。

 民主党のおかげで、国まで「ぶっ壊されてはたまらない」と、私たち庶民は学習しました。反日左翼は、みんな国をぶっ壊すことを狙っているのですから、うかつに、騙されてはいけません。

 小泉氏や竹中氏についてのご意見は、私とは違っていますが、同じ保守思考でも、評価の基準が異なっているのでしょうね。

 いずれにしましても、マスコミが煽っている、モリカケや、セクハラのスキャンダルごときで、総理や副総理が辞任するような前例を作ってはいけません。

 選挙で選ばれた議員を、マスコミが扇動することで、辞職させるというのでは、民主主義の破壊でしょう。こんなスキャンダルに踊らされ、世界の危機を忘れるようでは、国民も、馬鹿の仲間だと言われても、しかたがありませんね。

 「逆風吹き荒れる中乗り切っていただきたいと思います。」・・これは、同じ気持ちです。

 コメントを、ありがとうございます。
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橋下元大阪市長の魅力とは (HAKASE (jnkt32))
2018-05-27 02:08:35
遅くに失礼します。拙者、日頃より(貴方のお叱りを
覚悟で)橋下元市長には、好意的な視線を向けている
のを 自覚しておりまして。

成田あいるさんのご解説で概ね得心した所ですが、や
はり霞が関を頂点とする官僚・公務員の硬直した組織
や機構のあり方に 何とか風穴を開け、公益に近づけ
るべく変革を図る姿勢が、周囲そして国民市民の憧憬
と支持を 一定は集めたのだと心得ます。

勿論、橋下、中田の両元市長や山田元特別区長、それ
に東国原元知事らの目指した改革志向は、小泉~竹中
ラインのそれ同様「絶対の正義」と見るのも拙いと心
得ます。ここは貴記事の通りで「改革には、副作用が
付き纏う」からです。

橋下元市長が取り組んだ、公務員機構の健全化は、次
は霞が関で実行されるべき事共かもですが、そこはや
はり、真に日本及び日本人の健全なこれからの歩みに
資するのか、我々国民市民が常に注意して見守り、時
には勇気を以て「No! 」を言う気概を持ちながら、
向き合う必要を感じる所です。

又、橋下元市長の政治姿勢も、我々が前述の様な 少
し緊張感ある向き合いをした方が より魅力を増す様
な気がします。これは、安部現政権に対しましても 
本当は同様に接すべきなのかも知れませんが。
これ、特定野党向けには 行っても無意味なのは、各
位ご存じの通りです。今回も、長々と失礼しました。
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反日の左翼でさえなければ (onecat01)
2018-05-27 11:13:19
HAKASEさん。

 今日わ。今の日本では、反日の左翼を支持するのでなければ、私は、どなたが誰を、支援されましても、自由だと信じております。

 成田アイルさんにしても、私の嫌悪する竹中平蔵氏を、プラス評価されています。自分の国を憎んだりせず、大切にするという根本があれば、みんな仲間でしょう。

 日本中を走る電車は、あなたのブログで、いつも素晴らしい写真として紹介されます。電車には、赤や白や黄色やグリーンなど、様々な色があります。電車は、日本全国どこにあっても、人々を運び、物を運び、黙々として国のため役立っています。

 電車は、自分のいる国を憎んだり、蔑んだりしません。私たちも、そんな電車のような庶民だと、そんな気がしませんか。

 いろいろな色と形をしていましても、みんな仲間です。今でも私は、あなたのブログを「トレインのの落書き」と、間違ったまま、心に刻んでおります。
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