「研究の第二段階」〈「派閥・長老」と「裏金問題」〉の続きです。
「総裁選の鍵を握っているのは、麻生氏と菅氏だ。」「二人の動きが、次の総理を決定する。」
「派閥の力学」が丸見えになったと述べている理由は、マスコミの報道にあった上記の言葉にあります。「裏金問題」で主要派閥が解散するまでは、自由民主党内に大小を合わせ、6つから7つの派閥がありました。
総裁を選ぶ選挙は自由民主党の議員が、それこそ政治生命をかけて戦います。日本の政治を動かす人間になるには、議員は政府内の椅子を獲得しなければなりません。総裁だけでなく、首相、大臣、副大臣、政務次官、あるいは幹事長、政調会長、総務会長など、政府か党内の役職につかなければ国政参加の夢が叶いません。
・どの候補者につけば、自分の夢が実現できるのか。
露骨に行動すると「風見鶏」「コウモリ議員」などと顰蹙を買いますが、「ねこ庭」は政治家であれば当然の動きと肯定的に見ています。
報道されませんが、この時期は現金の受け渡しや、政府のポストの約束などと、自派の候補者を当選させるための推薦人議員の獲得競争が行われているはずです。
議員にとっては国政選挙だけでなく、総裁選挙も命懸けの戦いです。派閥に属するメリットが、この時実感できるのではないでしょうか。派閥は全体が一つになって行動するので、候補者の選定は派閥の長がします。
他派閥との調整や駆け引きなど、戦いの前面に立つのは派閥の長の仕事ですが、所属議員たちは長の指示に従い、自分たちレベルでの他派閥との調整と戦いをします。約束したり破ったり、一人と手を握ったかと思えば別の議員と握手したりと、私たち庶民には想像のつかない悲喜劇が繰り返されていると聞きます。
総裁選挙前から派閥の動きが活発化し、告示の日までには候補者の顔ぶれが絞り込まれ、今回のように12名も乱立することはまずありません。候補者が乱立した原因は、主要派閥が解散し、派閥の長が他派閥との調整力を失ったためです。
「小石河」の3氏を最初から強く応援しているのが菅氏のグループで、河野氏は麻生派にも属していますから、従来の「派閥の力学」で見れば、河野氏が候補者のトップに来るのは当然の成り行きです。
乱立を許しているもう一つの要因は、麻生派の長である麻生氏氏が明確な意思表示をしていないところにあります。
「河野デジタル大臣を、同志としてしっかり応援していきたい」と述べる一方で、「派閥の所属議員がほかの候補者を支援することも容認する」と発言しています。総裁選立候補者は、推薦人を20人集めるため四苦八苦していますから、56人の議員を抱える麻生氏が一本化して候補者を支援すれば、それだけで総裁選のトップに躍り出ます。
官僚を怒鳴りつける傲慢な河野氏が、麻生派を離れず、麻生氏の機嫌を伺っているのにはこうした計算があります。そんな河野氏を菅氏が支援しているとなれば、菅氏の意向も無にできず、親しく会食をする時間を作り周囲にアピールします。
菅氏は15人の小グループで、「小石河」の3議員を支援していますから、河野氏はどうしても麻生会長の確約が必要になります。
しかし麻生氏も党内の政争を生き抜いてきた政治家ですから、簡単に約束をしません。相手を焦らせて恩を売り、当選後の有利な地位を狙います。他の派閥が健在であれば、派閥の長が同じ動きをしますから、党内の戦いと駆け引きが熾烈になります。
今は麻生派と菅グループしかないので、二人は文字通り「キングメーカー」の位置にいます。従ってメディアの報道も、麻生氏と菅氏の言動を追って発信されるため、国民に不人気の「小石河」3氏が有力候補として脚光を浴びます。
建前では解散していますが、旧派閥も水面下では生きていて、「勝ち馬に乗ろう」と議員たちが動いています。派閥を取りまとめる長がいないため、個々の議員が自分の考えで動いていますから、総裁選の予測を一層困難にしています。
9月12日の告示の日が、一つの区切りになります。各候補者予定者はこの日に20人の推薦人と共に記者会見を行い、20人を集められなかった候補者が失格となります。
候補者の中には「当て馬」と呼ばれる議員もいて、20人集められる当てがないのに、反対候補を不利にする目的で立候補している者もいると言われています。誰がそうなのか、なんとなく分かりますが、こういう議員が選挙を混乱させ、更に予測を難しくしています。
今日が9月5日ですから、12日の告示の日まで1週間あります。一頃より衰えましたがコロナもまだ終息せず、酷暑も加わり、自由民主党の議員諸氏には厳しい日々が続いています。
告示が終わって候補者が何人か残ったら、そこからが更に過酷な選挙が待っています。「党員による投票」と「議員による投票」が行われ、過半数を獲得した議員が総裁になります。
過半数を獲得する議員がいなかったら、最後に決戦選投票となりますので、候補者たちにはまだ過酷なハードルが残っています。
総裁選挙の大変さが分かりましたが、だからと言ってキングメーカーとなっている麻生氏と菅氏を是とするのかと言いますと、そうはなりません。
特に菅氏については、なぜ国民に不人気の「小石河」3氏を支援するのかという疑問が膨らみます。答えが出るか出ないのか分かりませんが、次回は「菅元総理の研究」をしてみようと思います。
「裏金問題」については、その後で取り上げます。