だらだら日記goo編

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異国情緒漂う町で

2005-05-30 22:12:43 | アート・文化
週に一回は横浜に行っているが、時間の関係で今まで観られなかった美術展がある。
今日は四時前に用事が終わったのでそれ、といってみた。
横浜美術館は「ルーヴル美術館」の展覧会だ。
ルーヴルの膨大な所蔵から19Cに的を絞った展示だが、会場出口にアンリ・フォションという人の「激動の19世紀は、人間そして芸術家を根底まで揺さぶり、不安を目覚めさせ、好奇心をあおりー」と掲げられていたごとく、展示は歴史画やら風景画より、時事的絵画を扱ったコーナーや風俗画のコーナーが面白い。
時事的絵画ではナポレオンをたたえたピエール・フランクの「エジプト遠征からのボナパルト帰還前のフランス国家の寓意」が素晴らしい、素晴らしいというよりあまりの大作に度肝を抜かれる。
フランス国家が女性に扮してナポレオンに救いを求めている絵だが、図録では雰囲気がわからない、ともかく本物の絵の前に行くと圧倒される!
風俗画では「四時、サロンにて」が面白い。これはルーヴルのギャラリーの閉館時間をあらわした絵というが、鑑賞者はごった返した室内で退場する気配もないーまあいつの時代も同じものだと感じる。
もう一つ目だった絵はジェリコーの「賭博偏執狂」、この画家は自身うつ病になったそうで、そのため晩年は精神を病んだ名もなき人の肖像を描いたという。
「精神病」というジャンルが確立される近代という時代を映す絵である。
ともあれ、幕末海外に門戸を開いたこの横浜でルーブルの名画に出会ううれしさを感ずる展覧会だ。
ところで、会場で例によってメモを取っていたら、鉛筆の芯が折れてしまった。
そこで監視員に申し出ると羽ペンを貸してくれたが、退室するとき別の監視員に返そうとしたら「どうぞおもちください」といわれた。つまりこのペンはもらえるということだ。
そう思って振り返るとこの美術館のスタッフの対応はとてもよい。
入り口で展示リストを手渡してくれるし、カタログを買うと「雨が降ってますので」とビニールをもう一枚つけてくれた。
常設展示を見終わって出口に行くお客に「ありがとうございました」と声をかけるのも親切だ。
ルーヴルという大美術展とスタッフのとても丁寧な対応が見事にマッチして好感もてる。
やはり図録では特に大作はその真価がなかなか判らないので、ぜひ観にいかれることをお薦めします。




アントワープの栄光

2005-05-29 23:07:41 | アート・文化
ベルギーの都市アントワープの繁栄をまざまざと見せ付ける展示だ。
印刷博物館は「印刷革命が始まった」、プランタンの出版事業を振り返る展示だ。
まずはルーベンスによるプランタンの肖像が眼を引く。
プランタンという人をあまりよく知らないが、ルーベンスが描いているのだからやはり大物なのだろう。
展示の多くは聖書にかかわるものだ、ヘブライ語の聖書はモロッコで需要があったとか多言語対訳聖書ーギリシア、ラテン、ヘブライ、カルディアなど眼を引く。
驚くべきは当時の知識量の多さだ。
世界初の地図「世界の舞台」が出版されたのは1570年、すでに日本は北海道の形こそないが島として描かれている。
1583/1/1から採用されたグレゴリオ暦のカレンダーを早速プランタンは印刷した。
ノストラダムスまである。
といっても預言書ではなく、「化粧品とジャムの話」という本だ。
医者としてのノストラダムスは当時から有名でノストラダムス本は16Cだけで170近くあったという。
これは売れるとプランタンは見込んで出版したようだ。
日本では預言書しか知られていないノストラダムスだがもっと見直されて良い。
そのほか、七ヶ国語会話集などもある、商人や旅行者に愛用されたとか、当時のアントワープの繁栄が良くわかる。
はっきり言って展示品のほとんどがラテン語なので理解できないのが残念だ。
ルーベンスの描く肖像画でプランタンは右手にコンパス、左手に書籍を持っている。
「精励と不動」これが彼のモットーだそうだ。
最後はその時代を生きたルーベンスやブリューゲルの絵で展示は締めくくられる。
古典的な絵を描いていた画家の背後に躍動する社会と印刷文化があったーそんなことを感じるいい展示だ。
展示は7/24まで、飯田橋の印刷博物館にて。


歓びの歌

2005-05-27 23:22:49 | アート・文化
鑿の跡すらまざまざと判る木彫りの仏たちー。
一体何を考えて作者はこの仏たちを作っていたのだろうかー展覧会場でずっと抱いていた疑問である。
手のひらに乗るような小ぶりな仏像から等身大の大型の仏像まであれこれあれこれ。
作者の名前は円空、今いってきた横浜はそごう美術館の展覧会だ。
帰ってきて、梅原猛さんがカタログに寄せている解説を読んでなるほどと思った。
「円空は山のいたるところに神を見て仏を見ていたのである。そして彼の見た神や仏を型にして掘り出す」
なるほど、会場には実にいろいろな神や仏がいた。
不動明王やら観音菩薩はもとより、阿弥陀仏、春日大明神から住吉大明神ーなんか目に付くものすべてを彫り上げたといった感がある。
円空が常に神や仏と対話していたと考えれば納得がいく。
梅原さんの言葉の続き。
「彼は一生乞食をして、ボロの袈裟を着て、人里はなれた洞窟にすみ、食にさえ不自由する日が多かった。それなのに彼の人生は実に楽しいのである。それは法悦の喜び、創造の喜びといってよいであろう」
そうなのか、そうであればあの、鑿のあとは歓びの歌でもあったのか。
そういう意味で円空の創造は、みづからを版画でなく板画と呼んだ棟方志功のそれに似てくる。
会場には円空が挿絵を描いた「大般若経」も展示されていたが、その挿絵が棟方のそれと似ているのは偶然ではない。
それにしても生涯に十二万もの神仏の像を創った円空、ただものではない。
それには神や仏が人間のすぐそばにいたという彼の生きた時代もあるのであろう。
今年は彼の没後310年、没後300年には大規模な展覧会も開かれたろうが記憶にはない。
ともあれ一見の価値ある展覧会だ。
横浜はルーブルの宣伝がすごかったが帰りがけにぜひこちらも。


美術館の開館時間

2005-05-26 19:31:37 | アート・文化
今週はどうも具合が悪く美術館へ行く気になれない。
休みでも昼ごろまでごろごろしている、さて動こうと思っても美術館は閉館している時間だ。
それで思うのが美術館の開館時間だ。
たいていの美術館の開館時間は午後五時までとか六時までだ。早いところでは四時半にしまる。
しかし都心で仕事を終えてから美術館に行きたい人や夜型の人間には不便でならない。
夜八時まで開館しているのは、知っているだけでオペラシティのアートギャラリーとうらわ美術館と三鷹の美術ギャラリーくらいだ。
生活が夜型の都心で生活するものには不便極まりない。
だからデパートの展覧会は重宝なのだ、夜八時ごろまでやっていて無休だ。
まあ美術館側にしてもいろいろな事情があろう。
長期展示だと照明やそもそも外界にさらすことによる作品劣化もある。
だから横山大観記念館などは月火水と休む。
しかしそれを差し引いても新しいお客さんや若いお客さんを誘致するにはもっと努力が必要だろう。
今のままなら確実に美術館はおばさんやらおじいさんおばあさんの溜まり場だ。
若い人を仕事帰りにふとよって見させようという気にさせる工夫がほしい。
その意味で六本木の森美術館の夜十時までの開館は新鮮だった。
しかし老舗の美術館にもっと工夫がほしい。
2007年にはサントリー美術館がやはり六本木の近くに再オープンする。
新しい国立の美術館もオープンする。
金曜夜間開館だけでなく、老舗の美術館にも都市型美術館としていろいろ工夫を求めたい。


モノとしての美術作品

2005-05-22 23:06:05 | アート・文化
今日は町田市国際版画美術館へ「マルチプル・ショー」の展覧会へ。
同じものが複数つくられた作品を集めた展示、版画なら複製品は当たり前だがなぜか現代の立体作品の展覧会。
ご存知デュシャンのひげのついたモナリザから始まって、マン・レイの彫刻、クリスト、ウォーホルなどいろいろ並ぶ。
展示図録とは別に作品解説が配られるので、現代美術といってもその意図がよくわかるのがいい。
面白いのはウィリアム・コプリー編集の「S.M.S」という作品集。「Shitはとめなければならない」という意味だそうでShitとは人前では慎むべき言葉とか。
しかしながらおよそ70名もの作家がかかわった作品集で、日本では河原温「100年カレンダー」とか、オノ・ヨーコ「ジョンのための修復作品」などが展示されている。いわゆるフルクサス運動ともかかわるものか。
ヴァザルリの「J.S.バッハ」も面白い。バッハのヴァイオリン曲が実際に流れる中、そのレコードジャケットやら曲をイメージした版画が並ぶ。解説集にはそれぞれの作品が何部製作されたかが示されている。
唯一性の芸術から大量生産の芸術へ時代の流れを感じる展覧会だ。
その意味でよく判らないのはクリストの「包まれたニューヨークタイムズ」だ。
クリストとその妻は同じ年同じ日に生まれている。で、二人合わせて百歳の誕生日を記念して新聞を梱包したのだが、そういう記念作品に複製品をつくったのだろうか?これは一回限りの作品なのではないかと思う。
ともあれ現代美術というものがモノの複製と特徴付けられることが良くわかる展示だ。
お客さんも少ない。ゴッホの招待券は無駄になったがこういう展覧会もまたいい。
しかしながら久しぶりに町田市街を歩いたがずいぶん変わったものだ。
リトル渋谷とでも言おうか、ゲームの店、漫画喫茶の店などがやたら目に付く。
町田は犯罪都市としても有名だ、新興住宅街が並び若者も多く、いろいろ犯罪が多発していると聞く。
そんな中での現代美術の展覧会、なかなか面白いものがあった。