なんと昭和七年以来の回顧展ということだ。
ほとんどの人は名前すら知らないだろう、都路華香、つじかこうー京都の人であるからなおさらだ。
その回顧展チケットが生活ガイド社から送られてきたので早速近代美術館へ赴く。
普通知らない画家といったら興味がわいてじゃどんな人か知りたいと思うはずだが、この国は知らないからみるまでもないという風潮が漂っているように思う、日曜の午後というのにがらがらだ!
自ら禅の修行をした人で寒山拾得やら、十牛図は繰り返し表す。
後者は悟りの境地にいたるまでをあらわしたものだが、カラー版で彩色を施し念を入れる。
波の表現にもこだわった人のようで、展示34「緑波」は平原を表したようでよく観ると水面をあらわした絵だ、この人は水の中の魚とか奇妙なものにこだわる。
朝鮮に旅行しいろいろ描くが、翌年依頼画は描かないと宣言するなどまあ風変わりな人物でこれまで埋もれていたのも仕方がないという感じだ。
さて展示を一応観てどうも物足りない、展示数が少なすぎるのだ!
カタログ二千円に収まる出品数なのに前期後期と展示替えをして、東京不出品の作品もかなりある。
美術館の思惑は明らかだ。
企画展示のスペースの一部に横山大観の「生々流転」を一挙展示することによって人を呼び込もうというのだ。
実際工芸館の松田権六をチケットを買って鑑賞した人は本館の常設展示を無料で観られるという仕組みがある。
松田権六はだいぶ繁盛しているようでカタログを抱えたお客さんが常設展示会場にかなりいた。
運営面を考えればやむをえないかもしれないが、それが美術界のためになるかは疑問だ。
帰りに神保町で「アエラ」を求める、皇太子夫婦の本当の仲とかこの新聞社は好きだねえ。
それなら都路華香の展覧会をピックアップしてもバチは当たるまい。
新聞の美術面でこの展覧会は取り上げられるのであろうかー。