かなり多くの鑑賞者がメモを取っているのには驚いた。
地味な展覧会だ、出光は「やきものに親しむー青磁の美」の展覧会だ。
僕もメモを取りつつ廻ったが、青磁は宋代まで宮中の御用陶磁器もつとめていたという。
越州に生まれ、北方にも広まり、北宋時代に龍泉窯で完成をみた陶磁器だ。
まあいろんなものが展示されるが、この展覧会の趣旨は、中国で至高のものとされていた「玉」を焼き物で再現したものが青磁ではないかということらしい。
珍しくカタログを買わなかったのでこの仮説がどこまで学問的に確証されているのかは知らない。
面白いのは青磁が外国に輸出されたそのいろいろだ。
たとえば奄美大島の倉木崎というところの海底から日本向け輸出の陶器が発見されたとかー何も言わずにずっと長いときを海のそこで眠っていた陶器たちを発見した人はどう思ったろう。
あるいは西アジアでは大皿が好まれたという。
食べ物を盛ってスルタンたちが宴をしたのだろうー海のシルクロードを伝わって世界各地へ青磁は輸出されていったのだ。
会場が余るので第三室では日本の屏風ー盆栽図屏風など奇妙な屏風と、板谷波山の青磁も展示される。ちょうど二十世紀初頭の中国古美術ブームと西洋的アールヌーヴォーという時代の波の中で創られた作品だ。
しかししばらく行っていなかったら出光は変わった。
「総合案内」なるものもできたし、ミュージアムショップもリニューアルだ。
ここは「陶片資料室」なるものも前からある。
ぶらぶらしていると、越州の青磁のかけらとか展示室で見たものが又あるのが面白い。
出光は作品がガラスケースの中にあるためか、監視員もおらず筆記用具は鉛筆かなどと尋問してこちらの気分をそぐ人がいないので自由にメモが取れるーこの雰囲気は変わらない。
次回は風神雷神図屏風とかー間違えなく人が入るだろう。