チラシには「女性ならではの視点」「やさしいまなざし」で描いたとあるがこれには語弊がある。
かなり荒々しく濃いタッチでで厚塗り、激しさが勝るといってよい。
会場に「二十世紀抽象表現主義を先取りしたかのよう」とあるがこちらの表現のほうが正しい。
そこには僕には男性優位社会への抗いが感じられた。
何しろ、女性は私設の絵画教室で学ばなければならず、裸体モデルによる教育は受けられなかった時代だ。
そんな中紅一点第一回印象派展に参加したのだから男社会で力まずにいられないということだろう。
画家の名前はベルト・モリゾ、その回顧展を損保ジャパン美術館に観にゆく。
1879の「淡いグレーの服を着た若い女性」などグレーの殴り書きみたいな趣があり、印象派展が解散したあと、ベルギーの前衛グループレ・ヴァン展に招かれたのもむべなるかなだ。
この女性はかなり裕福な家庭だったらしく、またマネの実の弟と結婚したエリート女性で家はころころ買うわうらやましいほどだ。
中でもブーローニュの森はお気に入りだったという。
彫刻もやるがロダンやドガの助言を受けられる、繰り返すが本当にエリートだ。
しかしそんな彼女も晩年になると、流麗なタッチへと変化していく。
1889の「マンドリン」なんか流麗で美しい。
その他水彩画もやる、版画もやるとマルチ人間のようではある。
マラルメも高い評価をしたというし、晩年のモネもモリゾを思わせるタッチを使ったという。
解説も丁寧だし是非お勧めしたい展覧会だ、10/1は無料観覧日なので狙い目かも。