花耀亭日記

何でもありの気まぐれ日記

森洋子「ブリューゲルの世界」を読んだ。

2017-04-30 23:31:38 | 読書

話題のとんぼの本、森洋子「ブリューゲルの世界」(新潮社)を読んだ。感想をサクッと...(^^;

最新のブリューゲル研究動向を踏まえながらもコンパクトに構成されており、難し本苦手の私にもわかり易く読めたし、「バベルの塔展」による新しいブリューゲルファンにとっても格好の入門書だと思う。 

森先生のブリューゲル偏愛の愛に満ち溢れ、本当に勉強になる内容満載だったが、私的に特に興味深かったのは、去年プラドでしみじみ観た《聖マルティンのワイン祭り》(保存状態が悪かったことが良くわかる画面だった)で、その真作発見経緯がなかなかに面白すぎて、学者さんたちにとっての「真作発見」インパクトの大きさを改めて窺い知ったような気がする。 

で、蛇足ではあるが(汗)、この本にも紹介されているブリューゲルのお墓があるノートルダム・ド・ラ・シャペル聖堂には、私もブリュッセルに行った折訪れた。 

 ノートルダム・ド・ラ・シャペル聖堂

 矢印の先がピーテル・ブリューゲルの墓碑銘

ブリューゲルが40歳半ばで亡くなったのは、彼の素晴らしい画業を想うにつけ、本当に早すぎる死であったと思う。

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東京都美術館「バベルの塔」展の感想(7)

2017-04-29 23:08:42 | 展覧会

今回、嬉しいことにヒエロニムス・ボス作品が2点来日している。

ヒエロニムス・ボス《放浪者》(1500年頃)ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館

ヒエロニムス・ボス《聖クリストフォロス》(1500年頃)ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館 

ボスや作品についての解説は公式サイト(見難いけど)に書いてあるのでご参照あれ。

で、今回も私的にしみじみ凄いと思ったのは、やはりボスの線と点と色彩についてだった。去年のプラド美術館「ボス展(EL BOSCO)」を観ながら、真作と模作の違いを自分の眼(美術ド素人眼だけど)で確かめようとしたのだが、ボスの迷いのない鋭い極細線描にこそ「ボスらしさ」があるのではないかと思えた。

ボスの描く植物でも怪物でも、曲線の先端は硬質で鋭く尖がっており、指で突いたら刺さりそうな程だ。ボスの鋭い神経が先端まで張り巡らされているのだ。その線と同じように極ミクロ点描が造形を色彩と共に装飾する。その造形感覚も色彩感覚もやはり「奇想」と表現するしかないだろう。これは誰にも真似ができない。

例えば、今回展示されている《聖クリストフォロス》を観て欲しい。壺の家のある木の枝の鋭く伸びた先端表現を、熊の吊るされた木を。また、クリストフォロスの前垂れの濃紺色から淡珊瑚色に微妙に溶け合う色調の美しさ、それを装飾する超ミクロ点描の効果!こんな胸がざわざわするような描写ができるのはボスしかいないのだ。

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東京都美術館「バベルの塔」展の感想(6)の付録?(^^;

2017-04-27 23:41:32 | 展覧会

ヘラルト・ダーフィットGérard David ,1450 – 1523年)の自画像を紹介したい。

実は、ネットで自画像を見て、あっ!と思った。出典がルーアン美術館《処女たちの中の処女(聖母)》(1509年)だったからだ。

http://mbarouen.fr/fr/oeuvres/la-vierge-entre-les-vierges

ルーアンで観た当時は気付きもしなかったのだが(汗)、ダーフィットは彼女たちに紛れて一番左上に居る(ズルくない?)(^^; 

ちなみに、私がルーアンで撮った写真は…

 右の黒い紐はデジカメの紐(^^;

当時のデジカメの性能もだが、自分のカメラマンとしての腕って酷いと思う(>_<)

でも、カラヴァッジョ《円柱のキリスト》だけは上手く撮れたのだった(^^;

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東京都美術館「バベルの塔」展の感想(6)

2017-04-26 22:53:16 | 展覧会

ヤン・ファン・エイクに連なるフランドル絵画の巨匠たちの系譜を見れば、ロヒール・ファン・デル・ウェイデン~ハンス・メムリンク~ヘラルト・ダーフィットと続く燦然たる伝統がある。その細密な写実描写と質感表現は驚きと共に目を楽しませてくれる。

今回展示されているヘラルト・ダーフィット《風景の中の聖母子》もフランドル絵画らしい細部が目を魅了してくれた。

ヘラルト・ダーフィット《風景の中の聖母子》(1520年頃)ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館

美術ド素人の私には所謂「薔薇園の聖母子」なのではないか?とも思われたのだが、中世の「授乳の聖母」であり、原罪の果実を持つ故に「悲しみの聖母」でもあるらしい。 

遠景風景の細やかな描写、聖母の純潔を表す赤薔薇と白百合が咲き誇る庭園の緻密な描写の麗しさ!(赤薔薇や紫色のアイリスはキリストの受難をも表すらしい)。

香しき緑の風景の中に座る聖母の赤い衣の何と美しき輝き、観る者の方を静かに見つめる愛らしき幼児の仕草など、宗教的な意味を超えても、なお観る者の眼を喜ばせてくれるのだ。

だが、ダーフィットに影響を与えたと思われる先行作品がある(^^;

ロヒール・ファン・デル・ウェイデン《聖母子》(1433年頃)ティッセン=ボルネミッサ美術館

 

ハンス・メムリンク《薔薇園の聖母子と二人の天使》(1480年頃)プラド美術館

メムリンクもウェイデン作品を基にしたそうだし...

(↑ はネットで拾った画像 :ウエイデン(?)《The Virgin and Child With Two Music-Making Angels》: 制作年も所蔵先も不明で、もしかしたら信用性の低い画像かもしれない(^^;;)

フランドル絵画の伝統はこうして受け継がれ、ダーフィットの次はアドリアーン・イーゼンブラントへと引き継がれて行くのだろう。帰属作品ではあるが国立西洋美術館《玉座の聖母子》もその一例だと思うのだ。

http://collection.nmwa.go.jp/P.2005-0008.html

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東京都美術館「バベルの塔」展の感想(5)

2017-04-25 22:31:34 | 展覧会

前回も触れたが、ハンス・メムリンク《風景の中の二頭の馬》も今回展示されていた。この作品の対になる作品がメトロポリタン美術館にあり、家庭用祭壇画の一部と見られている。

左:《ピンクの花を持つ若い女性》(1485-90年)メトロポリタン美術館

右:《風景の中の二頭の馬》(1490年)ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館 

左翼パネルの女性は理想化された寓意的な女性像で、ピンクの花(赤いカーネーション)は婚姻を象徴し、「真の愛の徳とそれが克服しなければならない障害を表している」らしい(MET解説)。 

右翼パネルの《風景の中の二頭の馬》はフランドル絵画らしい風景が背後に広がっており、前方には白馬と栗毛の二頭の馬が描かれ、白馬の背には猿がいる。猿は恋する男のシンボルであり、白馬は欲望を栗毛は誠実を象徴するようで(相反する象徴ね)、猿と栗毛は女性の方を見ている。もちろん、女性の方もだが。

寓意の内容はともかく、フランドル絵画の巨匠メムリンクらしい静謐で緻密な画面を眺められるのは嬉しかった。

ちなみに、図録には「ニューヨークにある女性を描いた同じサイズの板絵」としか書いていないし、図版も載っていない。今回の図録はボスとブリューゲル以外は全体的にあっさりしていて...要するに読み応えがちょっとね(^^;

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東京都美術館「バベルの塔」展の感想(4)

2017-04-24 23:59:34 | 展覧会

今回の展覧会を観るにあたって、ボイマンス美術館で撮った写真をチェックしてみたのだが、その中の1枚に今回の展覧会でも展示されている2作品が上下に並んでいた。2点とも15世紀後半に描かれたネーデルラント代表画家作品であり、その緻密な表現にはヤン・ファン・エイクの残響が感じられる。

上にディーレク・バウツ《キリストの頭部》(1470年頃)、下にハンス・メムリンク《風景の中の二頭の馬》(1490年頃)。 

バウツのキリストの眼は静かに力強く観る者を射る。祈念画としての迫力を感じさせてくれる作品である。図録に拠れば、キリストの「真顔」として流布された原型作品らしい。それにしても、襟元の金糸や宝石の描写表現も見事であり、素人眼にはふとファン・エイクを想起してしまうのだ。

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東京都美術館「バベルの塔」展の感想(3)

2017-04-23 23:53:04 | 展覧会

今回、私的に特に目を見張ったのはヤン・ファン・スコーレル《学生の肖像》だった。図録によれば「弟子のマールテン・ファン・ヘームスケルクが描いたのかもしれない」とある。 

ヤン・ファン・スコーレル《学生の肖像》(1531年)ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館

この色彩と光のバルールを見よ!!この作品は明確にヘンドリック・テル・ブリュッヘンを予告しているように思われる。更に言えば、帽子の赤、衣服の黒…光への感性がカラヴァッジョと共通している。そしてペンと紙を持つ手の描写はラ・トゥールをも髣髴させるのだ。(美術ド素人の暴走をお許しあれ(^^;)

スコーレルはヤン・ホッサールトに学んでいるし、ドイツでデューラーの影響を、ヴェネツィアではジョルジョーネの影響を受ける。1521年、ローマではユトレヒト出身の教皇ハドリアヌス6世に招聘され、ミケランジェロやラファエッロからの影響も受けたようだ。ちなみに、ヘームスケルクはユトレヒトでスコーレルに学んでいる。 

要するに、スコーレルもヘームスケルクもユトレヒト派カラヴァッジェスキの前の世代にあたるのだ。もしかして、美術ド素人の妄想ではあるが、テル・ブリュッヘンがこの作品を観ている可能性はあるかもしれない (^^;; 

※自分用覚え書き

Jan Gossaert(1478頃 - 1532年)

Jan van Scorel (1495 -1562年) 

Maerten van Heemskerck(1498 - 1574年)

Abraham Bloemaert(1566 - 1651年)

Hendrick Jansz ter Brugghen(1588 - 1629年)

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東京都美術館「バベルの塔」展の感想(2)

2017-04-22 22:41:22 | 展覧会

ボイマンスでこの《バベルの塔》を観た時、あまりにも細密緻密な描写に目を奪われつつ、その朱赤の持つ色調の不穏さが物語の結末を暗示しているのではないかと思った。 

  サイズ:60 x 75 cm

ピーテル・ブリューゲル《バベルの塔》(1568年)ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館 

しかし、今回の展覧会で、なんと朱赤が煉瓦の色であり、引き上げに伴う砕片粉末が付着したものだということを知った。多人数の白い人影も漆喰用の白粉を被った者たちだったとは!! だが、ブリューゲルの激リアリズムによる煉瓦色や白であると知っても、やはり暗雲の上に更に高く築かれようとしているバベルの塔は依然として不穏なのである。

ちなみに、解説に拠ると、美術史家でも「いつの日か罰せられる傲慢の象徴とする見方もあれれば、他方には仲違いによって分裂が応じる以前の調和を描いたものとする見方もある」らしい。

私的にはボイマンス作品に先行するウィーン美術史美術館《バベルの塔》(サイズもずっと大きい)の方がなにやら平穏に思えるほどなのだが(^^;

 サイズ:114 x 155 cm

ピーテル・ブリューゲル《バベルの塔》(1563年)ウィーン美術史美術館  

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東京都美術館「バベルの塔」展の作品リスト。

2017-04-21 22:51:52 | 展覧会

「バベルの塔」展の「出品作品リスト」だが、PDFは公式サイトではなく、東京都美術館サイトに貼ってある。英語表記が併記されていないのは少々残念だ。

http://www.tobikan.jp/media/pdf/h29/20170413_babel_worklist.pdf

ちなみに、今回の公式サイトは見難いし(内容的にもイマイチで)サイト利用者に不親切だと思うのだよね(^^;

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東京都美術館「バベルの塔」展の感想(1)

2017-04-20 23:40:39 | 展覧会

東京都美術館「バベルの塔」展を観た。今回の展覧会は、ピーテル・ブリューゲル《バベルの塔》を広告塔としながらも、どちらかと言えば、ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館所蔵の15-16世紀ネーデルラント美術の紹介であり、副題の「16世紀ネーデルラントの至宝-ボスを超えて」がキモである。故にボス作品が断然存在感を放ち、ボスの奇想を模した画家でもあったブリューゲルへと収束する流れが基底に見える。 

思うに、ボスもブリューゲルもロマニストに染まらぬ故に、個性の発露の勝利と言うべきなのだろうなぁ。

 ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館を望む

さて、展覧会構成は… (カッコ内は独り言(^^ゞ)

Ⅰ)16世紀ネーデルラントの彫刻 (教会装飾用木彫彫刻が中心)

Ⅱ)信仰に仕えて (15世紀末-16世紀のキリスト教美術が中心)

Ⅲ)ホラント地方の美術 (マンデル「北方画家列伝」を想起(^^;)

Ⅳ)新たな画題へ (フランドル絵画の巨匠たち登場♪)

Ⅴ)奇想の画家ヒエロニムス・ボス (真打登場!!)

Ⅵ)ボスのように描く (ボスの奇想には及ばないのだけど(^^;)

Ⅶ)ブリューゲルの版画 (Bunkamuraでも観たよね)

Ⅷ)「バベルの塔」へ (愛する神は細部に宿り給う)

私的にとても好感が持てたのは、オープニングが彫刻作品から始まり、当時の教会装飾としての木彫彫刻の重要性を再認識させてくれたところだ。今回の展示作品はマニアックなドイツ彫刻よりも素朴さが感じられるところが良い。もちろん、ネーデルラントにも超絶技巧作品はあるだろうし、そちらもぜひ観たいと思わせてくれた。 

 美術館入口

日本で北方美術作品がまとまって展示される機会は少ない。今回の展覧会はネーデルラント絵画の2大巨匠ボスとブリューゲルの傑作を中心に、眼も大いに喜んだし、フランドルとホラントの美術傾向も知ることができたし、色々と勉強できる展覧会となった。それに、久々にロッテルダムを思い出すことができたしね。

ということで、続く... (「大エルミタージュ展」の感想の続きも忘れてはいないのだけど(^^ゞ)

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