写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

露天風呂

2007年02月16日 | 旅・スポット・行事
 昨日(2月14日)は春一番が吹き、今日は春二番というのだろうか、昨日とは異なり北の風が強い1日だった。

 ハートリーとの3人連れで、西の軽井沢に出かけた。お目当ては、吉和村の魅惑の里という施設にある露天風呂「水神の湯」である。

 新鋭のカーナビによると、最短ルートで岩国より丁度50kmの北東にあたる。毎年この時期に訪れるのには訳がある。

 30kmも入ると雪景色に変わり、途中からはチェーンを巻いて走らなければいけない。土地の人ならいざ知らず、遠くからわざわざ雪道を上って来る客はいない。

 その客足が遠ざかった時期をあえて狙って、毎年この時期、しかも平日に訪れることにしている。

 ここも地球温暖化の影響だろう。毎年見る雪が、走っても走っても積もっていない。山陰に黒くなった雪が、申し訳程度にほんの少し残っているだけであった。

 チェーンを巻くこともなく1時間あまり走り、目的地に着いた。地のお年寄りの先客が1組、風呂から上がり休んでいる。

 ふんだんに蕨の入った山菜うどん定食でまず腹ごしらえをしたあと、ゆっくりと独り占めのお湯に浸かった。

 雪見露天風呂とはいかなかったが、冷気で頭を冷やしながら身体を温める。目の前の姫シャラの林の向こうに、静かな中国山地の山々が霞んで濃く薄く見える。

 話し相手もいない。誰もいない贅沢な時間がゆっくりと流れる。すぐに出るのがもったいなくて、いつもはカラスの行水の私は、我慢をしながら浸かった。

 十二分に堪能して上がったが、奥さんはまだ出てこない。しばらく待つと、髪まで洗い真っ赤な顔をしてふらつきながら出てきた。

 温泉に行くと、早く出るのが惜しく感じる。貧乏性のせいかもしれない。長く入っていれば元が取れるというものでもないのにと、ひとり苦笑する。

 車の中で待っていたハートリーを外で遊ばせたあと、汗を拭きふき満足の顔で帰路に着いた。

 この、季節限定・私御用達の「無人の湯」、いや「水神の湯」に皆さんも如何ですか。効能は病気になる?ではなく、病みつきになりますよ。
(写真は、廿日市市吉和村の単純放射能冷鉱泉「水神の湯」) 

雛壇

2007年02月15日 | 季節・自然・植物
 先日、友人から折り紙のお雛様を頂いた。何度手にとってみても優れものである。

 手持ちの白い紙箱を細工して雛壇を作り飾っていた。しかし華やかな内裏様が心なしかわびしく見える。

 折角のお雛様が気の毒に思えた。駅前の文房具店に出かけて、真っ赤な包装紙を3枚買い求めて帰った。

 ややいびつに出来上がった箱に、無骨な指先で丁寧に貼り付けていった。思った以上にきれいに出来上がった雛壇にお雛様を並べてみた。

 ウン、いい出来栄えだ。しかし、今ひとつ何か物足りない。やっと気がついた。内裏様の背後に屏風がない。

 孫が残した黄色の色紙を四つ折りして屏風にしてみた。置いてみるとそれらしく見える。やるべきことをすべて終えて完成だ。

 紙代100円の投資で、何十年も我が家にはなかった雛飾りが華やかにお目見えした。色鮮やかで精巧で、およそ折り雛には見えなくなった。  

 そんなことをしている時、時折強い南風が狭い庭を吹きぬけた。日本列島に春1番が吹き抜けたと、夕方のテレビが報じていた。

 2月14日、今年の春は、チョコレートを持って例年よりちょこっと早めにやって来たようだ。
  (写真は、緋毛氈に座る我が家の「お雛様」)

中学受験

2007年02月14日 | 生活・ニュース
 入学試験のニュースが流れてくるこのごろ、24年も前のことをいつも思い出す。

 長男が中学受験を迎えた6年生の4月、「この1年間はテレビを見ないことにしよう」と宣言をして、テレビを押入れの奥深くに収納した。

 小学1年生になったばかりの次男も、父親の方針に何も言わずに素直に従った。その年、私は会社で、ある大きなプロジェクトの一員として忙しい毎日を過ごしていた。

 家のこと・子供のことは奥さんに一任し、遅く帰る日が続いていた。入学試験まであと3ヶ月に迫った11月の初めのことである。

 塾の模試の成績を見ると、合否のボーダーラインにいることが分かった。これでは合格しないかもしれないと、少しあわてた。

 翌日より、夜の9時までには家に帰るようにし、毎晩3時間、息子と1対1の入学試験特別対策レッスンを始めた。

 中学受験の問題といっても、算数は解くことが難しい。方程式を使うことなく鶴亀算やニュートン算を解かなければいけないからだ。

 理科と言っても、半月が夕方6時に、なぜ真南に出るのかを理屈でもって理解させないと、夕方6時に満月がどこの空に上るかという応用問題に答えることができない。

 現在の私にとっても、頭の体操以上のことを毎晩遅くまで特訓する。あるときは本で頭を小突いたり、まだ若かった私の声も手も出た。

 クリスマスも正月もないこんな3ヶ月が経ち、2月の初めに入学試験が終わった。1週間後の発表の日、テニスをして遊んでいる所に息子が知らせに来た。

 塾から合格したとの連絡があったと言う。良かったと思ったのだろうが、何故かそれほどの感激はなかった。

 やっと家庭教師から開放されたという気持ちのほうが大きかったのか、そんなことよりも、まだやらなければならないプロジェクトのことが気になっていたからかも知れない。

 その1年前に、テレビを押入れに入れた家族の決意の結果は、ラッキーにも出すことが出来、テレビはまた茶の間に戻ってきた。

 その長男ももう35歳。4歳の息子を持ち毎日帰りは遅いようだ。正月に帰ってきた嫁から聞いた。「主人は、あの頃はお父さんが帰ってこなければいいと思っていた」と言っていたと。

 酒の飲めない長男だから、一杯やりながら話したことはないが、いつも帰省してくるところを見ると、今では感謝しているのだと、私は勝手に思っている。
  (写真は、あの頃を思い出す「家庭教師」)

隠し撮り

2007年02月13日 | 生活・ニュース
 3日前より庭にメジロのつがいが来るようになった。ダイニングルームから細いブラインド越に、置いているミカンをつつくのを眺めて楽しんでいた。

 その距離4m、見るにはなんら不足はないが、デジカメで写すと、11倍ズームにしても大きくは写せないばかりか、色が白っぽくなる。

 今朝、一計を企てた。餌を居間の窓から1mしか離れていないテーブルの上に置き、閉めたカーテンの隙間にカメラをセットしておいた。

 コーヒーを飲みながら新聞を読んでいたとき、メジロが朝食を食べにやって来た。いつものように1羽ずつが、ミカンをつつく。

 チャンス到来。そっと居間に移動し、カメラのスイッチを入れた。たった1m先にいるメジロが、液晶画面に思った以上に大きく写った。

 連写でパチパチ撮る。食べている所・辺りを見回しているところ・振り向いているところ・餌をくわえているところ・飛び立ったところと多彩である。

 デジカメのズーム倍率を変えようと思って手を伸ばしたとき、それが目に入ったのだろうか、逃げていった。

 こんなことをしていると、ズーム倍率が大きく、遠隔操作の自動シャッターが装備された一眼レフの高級デジカメが欲しくなる。

 いやいや望遠だけでなく、最近はマクロ撮影も0cmから写せるデジカメもある。あることはよ~く知ってはいるが、稟議書を提出するほどの購入必然性の説明がまだ出来ない。

 メジロの写真を投稿でもして入賞くらいすれば説得力はあろうが、そんなことはあるはずもない。

 しばらくは、こんな息を凝らしての隠し撮りで、メジロの生態を楽しむことで満足することにしよう。

 しかし、見ていると、メジロのように野生の生き物の警戒心は大変なものであることに驚かされる。

 ミカンをついばむ時間に対して、辺りをきょろきょろ見回して警戒する時間のほうが10倍以上も長い。
 
 まったく警戒心の衰えた近頃の人間様との違いをつくづく痛感する。振り込め詐欺・悪質リフォーム・ぼろ儲け話・ねずみ講。少しはメジロを見習いたい。
 (写真は、ミカンの実をくわえた「メジロのつがい」)

悪質商法

2007年02月12日 | 生活・ニュース
 「悪質商法にご用心! こんどはあなたが狙われているかもしれない」

 お年寄りへのボランティアの定例会で、各人が5枚ずつこんなパンフレットをもらった。気になるひとり住まいのお年寄りへ配ることにしている。

 市の消費相談窓口への相談件数は、この5年間で10倍近くにも増加しているという。悪質な商法に引っかかるお年寄りが多いようだ。

 その代表的なものとしては、「床下の点検を無料でします」」と言って、床下換気扇・耐震補強金具・調湿剤などの契約をすすめる。

 「いい物をただで差し上げます」と言われて会場に行くと、高額な布団・磁気マットレス・健康器具などの契約をすすめる。

 「新聞の勧誘に来ました]と言って、洗剤や電子レンジも景品でつけ、何年も先に入り始める契約・数年間分の長い契約・他紙と重なってもすすめたりる。

 ざっとこのような類の勧誘をしてくるという。では、ひとり身でどう断れば良いのか。次の通りである。

 1.きっぱり「いらない」という。 2.「いいです」「結構です」など承諾にとれる返事をしない。 3.家にいる時でも、できるだけ鍵をかけておく。

 また、被害にあわないための5か条は、
  1.「うまい話はない」と肝に銘じる
  2.相手の名前と用件を確認する
  3.契約書をよく読む
  4.契約を急がせたり、不安にさせるセールストークには要注意 
  5.すぐ契約せず、家族や知人に相談する。
ということである。

 それでも万が一契約をしてしまい、あとで「納得できない!」「しまった!」と思ったらすぐに、「クーリングオフ」をすることである。

 
 「クーリングオフ」とは、契約内容の書かれた書面を受け取ってから、8日以内であれば無条件で解約できる規定のことである。

 ただし、必ず書面で契約の解除を連絡しなければいけない。詳細は、消費相談窓口に相談すれば良い、と書いてある。

 売り込んでくるほうはプロ、受ける側はよく分からないお年寄り。世間話の相手をしてもらっている内に、ほだされることもあろう。

 隣近所を見渡して、そんなお年寄りがおられたら、このパンフレットに書いてあることをお伝えください。そういう私自身も、危ない。ご用心、ご用心。
  (写真は、悪質商法の「ご用心パンフレット」)