写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

新会員デビュー

2006年04月28日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画
 満開が過ぎた桜が、風もないのに、ちらりほらりと花びらを落とし始める頃であった。

 ブログでお付き合いのある、岩国のYさんのブログをいつものように開いてみた。

 雨の朝、バイクで出勤する途中、桜の花びらがヘルメットにまといついたさまを、300字余りの字数で感情豊かに表現していた。

 おっ、これは素晴らしい。時宜を得たいいエッセイだと直感した。それを読んだ朝も小雨が降っていた。

 その中を、Yさん経営の店に出かけていき、「これを250字にまとめて、是非毎日新聞『はがき随筆』に投稿しませんか」と薦めてみた。

 「やってみましょう」と快く、挑戦された。掲載されるかどうか、毎日心待ちしながら新聞を広げていた。

 1週間が経った日の朝、Yさんのエッセイが掲載されているのを見つけた。我がことのように嬉しく、すぐにお祝いの電話を入れた。

 原文にさらに磨きがかかり、見事なエッセイとなっていた。新聞掲載という実績を引っさげて「岩国エッセイサロン」に、またひとり若い新会員が加わった。

 Yさんの投稿エッセイ読んでください。Yさんのブログは以下のとおりです。
       http://blog.livedoor.jp/iwakuniyouth/
  (写真は、Yさんのブログにあった「ヘルメット」)
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         「心の天気予報」

 「いってきまーす」。花散らしの雨を降らす空を見上げながら玄関を出た。「ふー」と鼻でため息を吐き、スクーターにまたがる。

 シールドのついた、ヘルメットをかぶる。雨の日の通勤は心も雨模様だ。家を出て坂を下る。雨の滴がシールドをぬらし、いつもの景色がぼやける。

 桜並木の道に入る。雨の滴とは違うものが目の前に張り付いた。桜の花びらが一片、「連れてけ」と、しがみつく。小さなお供……。

 「おお、連れてっちゃるけぇの」話し相手の無い、通勤おやじライダーは答えた。心の天気予報が、雨のち晴れに変わった。
   (2006.4.26  毎日新聞「はがき随筆」掲載)