写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

連日花見

2006年04月08日 | 旅・スポット・行事
 
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 桜咲くシーズン、我が家の夕食は、錦帯橋河畔の桜の下が食卓となる。今日も暖かい一日だった。

 夕方、ブログに向かっている私の後ろで、妻が夕食の支度をしている。メインディシュはメバルの煮付けだという。  

 家の食卓で食べるメニューをタッパーウエアーに詰め込み、缶ビールを1本持って、いつもの3人で出かけた。

 週末とあって、人出は多い。思い思いの場所に、2,3人連れの小グループが、弁当を広げて静かに花見をしている。

 一昨日、3分咲きだった花は、どの木もみな9分9厘咲きになっていた。あっという間の、開花スピードである。その速さにただ驚く。

 人ごみを避けて、錦帯橋の下流側土手にござを敷いた。離れたところから、花の下をそぞろ歩く人を眺めながら、弁当を広げた。

 花見弁当に似合わない、メバルの煮付けも、川を眺めながら食べるとまた違う味がしておいしい。

 ハートリーには、むすびをおすそ分け。まるで、桃太郎と家来である。日が沈む。さすがに風が冷たく感じる。これでは缶ビールも完飲できない。

 ふと川辺を見ると、外人の子供達が菜の花の中で遊んでいる。ハートリーをつれて近づいてみた。

 1、2年生くらいの小さな子だった。どこの学校に通っているのか訊いてみると「ベース」と答える。岩国基地の米兵の子だ。

 何年生かと英語できくと「2年生」と日本語で答えてくれた。かわいいアメリカ人のバイリンガルであった。ハートリーと一緒にデジカメに入ってもらった。

 土手の上を見ると、少し離れたところから青い目の両親が心配そうに私の方を見ている。わたしが笑うと、向こうも笑った。

 時々、肌寒い川風がそよと首筋をかすめていく。そのくらいの風では、咲いたばかりの花は、ひとひらすら舞ってはいかない。 
 
「もろともに あわれと思え 山桜 花よりほかに 知る人もなし」前大僧正行尊

 錦帯橋の桜は幸せものだ。知る人もない山桜に比べれば、毎日こんなに多くの人が押しかけてくれるのだから…知る人もない行尊に、今の私を重ねてみる。
  (写真は、週末夕の「錦帯橋」と「バイリンガル」)