毎年夫婦そろって人間ドックに入っている。昨年のことだった。妻の内臓に異常らしきものが見られるので、精密検査を受けるようにとの検査結果が送られてきた。
精密検査を受ける日まで、日夜陰鬱な時を過ごした。妻は、悪いように悪いように考え、身の回りの整理もし始めた。
翌日が検査となった夜、食事に出かけた。気疲れで食欲の無い私を尻目に、妻は「最後の晩餐だから」と言い大好きなステーキを、しかもその店で一番高いものを注文した。
妻の食欲はすさまじく、あっという間に全部食べ終えた。どこが悪いのだろうと思うくらいの食欲であった。
翌日朝早く病院へ連れて行った。駐車場で新聞を読みながら検査が終わるのを待った。穏やかな小春日和、雲もなく抜けるような青い空、そんな天気が恨めしく憎くさえ思えた。
12時のサイレンがなった。まだ出てこない。何かあったのだろうか。1時前にやっと出てきた。指でOKサインを出し笑いながら近づいて来た。
そのまま車を飛ばしてイタメシ屋に行き、豪華なランチを注文した。 とんだ見立て違いのお陰で、何日間も心痛し散財もしたが、分かったことは、「人間、食欲のあるうちは元気だ」ということである。
(写真は、ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」)
(2005.11.18毎日新聞「はがき随筆」掲載文)
精密検査を受ける日まで、日夜陰鬱な時を過ごした。妻は、悪いように悪いように考え、身の回りの整理もし始めた。
翌日が検査となった夜、食事に出かけた。気疲れで食欲の無い私を尻目に、妻は「最後の晩餐だから」と言い大好きなステーキを、しかもその店で一番高いものを注文した。
妻の食欲はすさまじく、あっという間に全部食べ終えた。どこが悪いのだろうと思うくらいの食欲であった。
翌日朝早く病院へ連れて行った。駐車場で新聞を読みながら検査が終わるのを待った。穏やかな小春日和、雲もなく抜けるような青い空、そんな天気が恨めしく憎くさえ思えた。
12時のサイレンがなった。まだ出てこない。何かあったのだろうか。1時前にやっと出てきた。指でOKサインを出し笑いながら近づいて来た。
そのまま車を飛ばしてイタメシ屋に行き、豪華なランチを注文した。 とんだ見立て違いのお陰で、何日間も心痛し散財もしたが、分かったことは、「人間、食欲のあるうちは元気だ」ということである。
(写真は、ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」)
(2005.11.18毎日新聞「はがき随筆」掲載文)