まつたけ山復活させ隊運動ニュース

 松茸は奈良時代から珍重されてきたが、絶滅が心配される.松茸山づくりは里山復活の近道であり里山の再生は松茸復活に繋がる.

まつたけ山復活させ隊 NEWSLETTER 918 

2014年06月10日 |  マツタケの林地栽培 

≪安全でゆっくりと作業を楽しむ≫で行きましょうや! 

 私たちのこの活動は、この6月25日で10年目に突入する.アカマツも「グー」といっている(写真1).来年はちょっと規模を大きくして10周年記念をやろう!
                                                                                1
 参加者は、まつたけ山に復活させたいと作業にいそしんでいます.中には、「そんなに急いでどうするの?」と思える予定を組んで取り組む班もあります.
それは素晴らしいことですが、自分の作業現場の手入れが済んでもその向こうに放置里山林が見えます.これはどこまで行っても、日本列島の境目に到達する まで続いています.

この運動は、日本全体の今の里山を変えなければ、目的は果たせませんし、終わりもありません.もちろん私たちだけでできることではありません.この運動の広がりをどう作るかを考えていかねばならないでしょう.

 個人的には、暑い日も雪の日も出かけて、しかも週に何回も山の手入れをしたんだが、と思いますが、現状では、圧倒的多数の放置里山林の負の部分に埋没してしまいます.個人的楽しみの総和が、私たちの残した足跡です.これは岩倉全体からみてもほんの一部にしかなりません.京都、近畿、日本と考えると心中穏やかではありません.あせらず、体力も考え、無理のない予定で作業を楽しむべきである.それでよいではありませんか! 

 
 6月14日(土)は、まつたけ山復活させ隊第443回活動日です。午前10時に京都市左京区岩倉 村松138-20 香川山(自称)にお集まり下さい.活動の様子は、榎本 輝彦さんが当日夜、報告します。

  私たちは、昼食によってエネルギー+安らぎを与えられています.参加者の中にはこの昼食が楽しみで毎回来るようなもんだという方もいるくらい評判がよいようです.そんな食当の皆さんに少しでも感謝の意を表すために設けられた男厨派シェフが昼食を作ります.

 今日のメインシェフは川崎 泰弘さんです.他に応援シェフがいります.後片付け要員もいります.「オレは知らん!食うだけ」という方は、まつたけ山復活させ隊メンバーの資格はありません! でも、体力に合わせ、体調に合う活動は色々あります.それができれば立派なメンバーです.

熱中症やマダニなどに咬まれないように、そして事故に気をつけて、マツタケ山づくりを楽しみましょう! ツキノワグマ出現の可能性があるので歩行中の遭遇に注意しましょう! 残念ながら、熊より早く発見することは不可能です.

☆前回の活動報告
 ツキノワグマが、活動地点近辺に姿をたびたび見せています.京都府から熊情報も発信されていますが、私たちの活動エリア内の林道 繁見本線と支線の分岐点付近のヒノキをよじ登って枝上にねぐら風の物を作り、そこでクヌギの枝葉を食っています.幹に立てられた爪痕を御覧ください(写真2).

2 3
 相変わらずニホンジカの食害と角研ぎが激しい(3).こんな風では林業や農業のプロはたまりません.行政も、重い腰は上げているが、もっと素早く頭数調整・被害対策を取る必要があるのではないか!

 活動規模が大きくなると、個人持ち込みのチェーンソーなどが増え、消耗品需要もそれと同時に増える.それを支えてくれる薪づくりが盛ん(4,5).増えすぎると使用制限をせねばなりません.そんなことがないように配慮をお願いをします.香川山BC施設の補修も大変だ(6).

4 5 6

 新しい林業観の創生を試みている.ヒノキ林内で葉わさびやモミジガサの予備的栽培実験を試みている.まだまだであるが、成長はする.葉わさびに肥料を与えている(7).

7

 こんなお客さんもいる、ヒヨドリ(8).リョウブの花(9). 

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お知らせ
1)2014年度日本菌学会第58回大会は2014年6月13日(金)~6月15日(日)の日程で石川県小松市で開催されます。 吉村代表がこのたび、日本菌学会教育文化賞を受賞します。それを祝う会を開催します。

 日時 平成26年6月25日(水)午後5時から約2時間ほどの予定 
 場所 祇園アパホテル2階の部屋を借り切ります(八坂神社石段下から四条通りを西へ110m南側) 
 会費 男性 3,500円、女性 2,500円  食べ放題・飲み放題

 多数のご参加をお待ちしております。出席申し込みは代表世話人ホリイ氏へ

2)玉城山・澤田山へのアクセスである林道(繁見本線)が昨年の大雨で崩れています.この度、林道の地権者が修理を決定されました.6月の16日から7月18日まで、人は通れますが車の進入はできません(裏から進入できます).

 

マツタケ山づくりの話19 
      <マツタケは、人による原生林の破壊によって登場し、人による里山林の破壊によってその生を終わろうとしている> 

マツタケとはどんなきのこであるのか、次いでその生息地であるアカマツ林が含まれる里山林の危機と進み、日本ならではの発想「マツタケの生活する里山林」づくりを担う市民の運動を紹介して参りました。
 
 前回まで、マツタケの出ている(orだろう)林を確保しよう! その特徴をまとめてみよう! と進んできました.では手入れを! と、はやる気持ちを抑えて、もう少しマツタケ山づくりの科学を学んで下さい.お急ぎの方は、トロント刊行の「マツタケ山のつくり方」を御覧ください。多くの図書館で購入戴きましたのでそこでお探し下さい。
 
 今回も、(株)トロント刊行(03-3408-1521)の「マツタケ山のつくり方」と岩泉まつたけ研究所の実践と大学の講義資料などを参照しつつ、その実際を書き進めます。 少し退屈で堅い話が続きますが、マツタケとアカマツのことをよく知って作業することが間違いのないそして早道です。目を通してください。

マツタケ山づくりの科学
アカマツとマツタケの関係
菌根性キノコが、菌根を形成すると宿主である樹木の生長を促進するとスミスとリード(1997)は述べている.両者の機能変化の分子生物学的メカニズムは、今はまだ解明されていないことが多い.
 
 菌根性キノコと宿主との関係を扱う実験でマツタケが宿主のパートナーとして用いられた報告例はない.それほどに扱いにくい材料といえそうだ.アカマツのマツタケ菌根も他の菌根菌と同様にアカマツ側にもマツタケ側にもさまざまな生理的変化を起こしている.恐らく、実験で確かめられた菌根性キノコと同様の現象が野外でも生じていると思われる.

 アカマツ林の生育に正の制御が菌根を形成することによって生じている.菌根性キノコが発生する森林は健全な森林なのである.菌根性のキノコが消失を始めた森林は疲弊が始まっている. 菌根性のキノコが樹木の根に感染することによって生じる相利共生的機能を極く簡単に列挙してみる.

1)アカマツの生長促進作用
a)根の生長
マツタケのアカマツとの菌根は植物ホルモンIAAを産生し、アカマツの吸収根の枝分かれを促進したり伸長させたりして表面積を増やす.

b)アカマツの耐乾性の向上
マツタケの菌糸はアカマツが萎れる風乾土壌状態にあっても水を吸引する能力があり、アカマツの耐乾性に寄与している.

c)根外菌叢はミネラル類を吸収
根外菌叢は有機酸や酵素を分泌し、リン、チッ素、カリウムなどの無機塩類を吸収.菌根を通じて宿主に渡している.

d)光合成能の向上
菌根感染樹木の光合成能が向上すると報告されている.

e)根と菌糸を病原菌や金属毒性から守っている
マツタケの菌根は抗生様物質を土壌に分泌し、多くの土壌微生物を根面もしくは根圏から排除するが、同様に病原性微生物も排除している(小原).外生菌根菌の感染は、Al、Ca,NiやZnの害から植物を守る(ヴァルムとホック 1998).

2)マツタケはアカマツの糖をもらう
マツタケは光合成産物をアカマツから貰う.多くの樹木でラジオアイソトープを用いた実験で確かめられている.

3)土壌の富栄養化はマツタケの感染を拒否
 貧栄養状態のアカマツ林土壌とマツタケが発生していない富栄養土壌でアカマツ実生を育て、両者にマツタケ菌糸を接種すると富栄養条件では、菌根形成率が低下する.

4)マツタケがつくるネットワーク
a)アカマツ-アカマツ
マツタケの一つのシロの菌根形成に関与するアカマツは 1本に限らず、複数である.林内のアカマツが地下部でマツタケのシロを結節環としてネットワークを形成し、水やチッ素や糖類をやり取りしていると考えられる.アカマツやマツタケ以外で確かめられている.

b)アカマツ-ネズ-アカマツ
アカマツ林でアカマツ以外の宿主としてネズがあるが、アカマツ-ネズ-アカマツ、ネズ-ネズ間で物質が移動する回路がa)のように存在するかもしれない.宿主の片方の養分蓄積が低下すると豊富な宿主から物質の移動が生じるといわれる.

マツタケの栽培法
 マツタケの栽培法は2通りある。一つは温度,湿度,培養基の性質など物理的要因や化学的要因を制御した環境で,マツタケの胞子や培養菌糸を培養基に接種してマツタケ子実体を得る方法である(狭義の人工栽培).二つ目はアカマツ林をマツタケの生活しやすい環境に整え,マツタケ子実体を得る方法である(林地栽培).

 前者の方法は,100-200回に1回くらいの割合で親指大のマツタケ子実体が得られるが,マツタケ子実体がなぜ得られたのか、またはなぜ得られないのか解明できず再現性を欠いている。
 後者は,アカマツ林を健全に誘導する効果もあるため,全国的に森林の放置が進み森林機能の低下や生物の多様性の喪失を来している現状を改善する必要性からも,最も望ましいマツタケの栽培法である.マツタケが発生しているアカマツ林に正しいマツタケ発生環境整備を実施した場合(単に昭和30年以前のアカマツ林に戻すことである),その効果は100%である。

 マツタケ未発生林の場合,失敗例が少なからずある。この原因は,一つには、発生環境整備を初年度に実施し,その後,林を放置することにある。マツタケ発生環境整備事業には公的資金の補助制度があるが,たとえば,2週間で作業が完了する計画なら,人は2週間しか山に入らない。
 
 補助金制度に問題があるにせよ、これは作物の栽培者のすることではない。翌年の補整作業を怠ると、以前のアカマツ林の状態と比べて、よりマツタケの生活に不向きな林となるので補整作業は必ず実施する.

 二つ目に、土壌の富栄養化が進んでいる林(肉眼で区別しがたい微生物活性の高い土壌があることに注意)を選んだことによる.

 岩泉まつたけ研究所の試験林(25年ほど放置状態)に植生の調節と地掻を実施した.尾根筋当たりにはマツタケのシロが2つ形成されたが15mも下がったところでは微生物活性は徐々に低下しているが、12年経ってもマツタケのシロは形成されなかった.一度富栄養化した土壌の改善には相当の時間を要すると思われる.
 
 マツタケの林地栽培法は,森林生物(植物と微生物)や森林土壌の物理・化学性のコントロール(林つくり,土つくり,根つくり)である。土壌微生物には,マツタケの生活に有利なグループと有害なグループと無関係なグループとがある。アカマツ林に手を入れると、それらの関係がうまくコントロールされ,マツタケがアカマツ林(天然あるいは人工林)で栽培できるのである。

マツタケ発生アカマツ林の場合
 手入れは、ゆっくりと環境の変化を与えたが良いので、ここでは5年計画の例を示そう.マツタケの発生位置は正しく知っておく.伐り過ぎや過剰な地掻きをしなければ1年で実施しても良い.

初年度:腐植層(落葉などが葉や枝に区別できなくなった状態)は、シロの外側50cmは地面からの厚み3cmを残して、その上の層を林外に出す(発生林の作業のポイント).ただし、近辺にマツタケのシロのない所はマツタケ未発生林作業と同様に堆積した腐植層を完全に掻き出す.

2年度:大径木(株元直径5cm以上)の広葉樹を根元から伐り、小さく切って林外に出す.

3年度:残った中小径木の広葉樹は、1㎡に、気温の低い東北地域では1~2本を残し、その他の地域では5-6本程度残す. 他は根元から伐り林外へ搬出する.

4年度:膝頭より低い潅木は根元から伐り、草本類は引き抜き、すべて林外へ.

5年度:アカマツは枯死木や病害木や被圧木だけを地際から伐り、小さくして林外へ.他のアカマツは切らない.枝と枝とがぶつかっているアカマツの枝を切り詰める作業を施している場合もある. 続く

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§活動場所:京都市左京区岩倉村松町138-20 香川山 (京都バス停留所「岩倉村松」から北東へ450m徒歩6分) 
 活動開始は午前10時頃から、終わりは午後4時頃.自由参加可能 ただしコアータイム昼食時は必ず参加のこと.
アクセス:
京都バスの「岩倉 村松行き」に乗車.
このバスに乗車するには、
ア)JR京都駅七条口から(バス停「C6」番、所要時間約60分)
イ)阪急京都線四条河原町駅から(四条河原町交差点河原町通り北へ上ル東側)40分
ウ)京阪本線出町柳駅から(加茂大橋東詰め北へ上ル西側、約30分)
エ)京都地下鉄烏丸線国際会館から(3番出口からバスターミナル1番)約15分
(地下鉄烏丸線はJR京都駅、烏丸四条、烏丸御池、国際会館などに停車)

§参加費は無料;ただし、消耗品費は皆さんの浄財カンパで成り立つ、或いは必要に応じて徴收.メンバー参加者には、現在、食材費+消耗品費として400円を徴収.登録外参加者・見学者などは要500円(施設利用代などを含む).

§参加や見学希望の方は、ブログ画面左にあるカテゴリーから「まつたけ山復活させ隊とは」を左クリックでご覧下さる様にお願いします.
内容
まつたけ山復活させ隊の活動について 
§1 我々のまつたけ山再生運動とは? 
§2 まつたけ山復活させ隊に参加するには 
§3 私達のマツタケ山造り(作業方法の特徴)
§4 こんな活動をしています! 
§5 今年の予定と目標?

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まつたけ山復活させ隊活動日

予定日  2014年6月~12月
回  開催日  報告担当者  男厨シェフ

443 6月14日 土 榎本      川崎
444 6月20日 金 榎本
445 6月28日 土 三輪
446 7月04日 金 宮崎
447 7月12日 土 内田
448 7月18日 金 榎本
449 7月26日 土 三輪
450 8月01日 金 宮崎        暑気払い.小原&松本(唱歌他)演奏、ケーシー有山トーク(交渉中)
451 8月09日 土 内田        松本
452 8月22日 金 榎本
453 8月30日 土 三輪
454 9月05日 金 宮崎
455 9月13日 土 内田        小原
456 9月19日 金 榎本
457 9月27日 土 三輪
458 10月03日金 宮崎
459 10月11日土 内田
460 10月17日金 榎本
461 10月25日土 三輪        松浦
462 10月31日金 宮崎
463 11月08日土 内田                京都造形芸術大学 環境学受講生 マツタケ山づくり体験
464 11月14日金 榎本
465 11月22日土 池内
466 11月28日金 三輪        内田
467 12月06日土 宮崎
468 12月12日金 内田
469 12月20日土 榎本                忘年会
470 2015年1月10日土 池内

            

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§カンパありがとう!  

§カンパお願い: 運営は皆さんのカンパで成り立っています!
         みやこ松茸・里山復活! 京都の文化・景観を守るために、里山林整備に努力しています.
   
カンパの振込先
 氏名:  まつたけ十字軍 代表 吉村文彦
 銀行名: 京都銀行 山科中央支店 口座No. 普通預金 3698173

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§主 催
まつたけ十字軍運動
代表 吉村 文彦(マツタケ生態学)
京都市山科区御陵岡ノ西町38-27
090-6227-4305 matsutake10@gmail.com

香川理化学研究所
代表 香川 晴男

§共 催
京都大学マツタケ研究会
代表 大石 高典

 

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