まつたけ山復活させ隊運動ニュース

 松茸は奈良時代から珍重されてきたが、絶滅が心配される.松茸山づくりは里山復活の近道であり里山の再生は松茸復活に繋がる.

私の中の夢球場

2005年11月09日 |  マツタケの林地栽培 
大月 健さんに見向きもされなかったマツタケ と違うものです.

大月 健
 山の奥の山の中に私の田舎がある。岡山県の地図を広げるとほぼ真ん中あたりである。だから、そこそこ山の中である。そこに五十軒の集落がある。そして、もう一つの五十軒の集落を加えて小さな小学校が成り立っていた。勿論、いまは廃校になっている。最後には生徒数が十人に満たず、複複式学級での授業だったと聞いている。
 村の真ん中を大きな道が通っており、その東の端に小学校があった。もう一つの集落からみれば西である。子供たちはその曲がりくねった道をぶらぶらと帰りながら、それぞれの家に向かう小さな道へと散っていく。その小学校と最初の子供の家とのあいだに池があった。その池を迂回するように荷車が通れる道があり山のほうに向かっていた。私たちはその道を足早に上っていった。村人に咎められるのが嫌だったからである。山に入ってもその道は木々に囲まれながら続いている。五分くらい歩いて、私たちは細い脇道に入る。雑木の枝が行方を遮り、落葉がカサカサと音をたてるなかを私たちは進む。すると、急に視界が広がる。扇状になった球場がそこに現出する。
 その球場は土を掘り出した跡で、両翼十メートルの空間があり、正面には高さ三メートルの壁がある。私たちはそこで「ヤキュウ」をする。一塁と三塁の三角ベースで、あいだに遊撃手が一人はいる。投手と捕手を加えたこの五人編成のチームは、私たちにとって手頃だった。それでも、高学年の子供がほぽ集まらないと二チームは作れない。人数が足りない時は捕手を攻撃側でまかなった。選手は六年生から順番に振り分け、三年生くらいでなんとかおさまる。低学年は代打要員である。道具は軟式のテニスボールひとつである。柔らかいボールはグローブを必要としないし、バットは手で十分だ。投手は下から投げていた。それでも苦心してカーブなどを考案する子供もいた。ベースは木ぎれで書けばいい。
 私はそこでホームランを打ったことがない。子供にとって十メートルの距離と三メートルの壁をこえるのはかなり難しい。とくに私は打ち上げることができなかった。腕を力一杯振ってもなかなかボールが上がらない。狭い球場は野手のあいだを抜けても壁にぶつかってはね返って来る。ヒットになっても一塁がせいぜいである。それでも高学年の兄貴たちはうまくすくい上げて壁の上の雑木林にホームランを打ち込む。同学年の上手い友達もいつしか壁をこえる大飛球をとばすようになる。それが私にはなかなか上手くいかない。結局、一度もホームランを打った感激をを味わったことがない。
 このホームランもまたくせ者である。ボールは一つしかない。探さないと「ヤキュウ」は続けられない。壁の上の雑木林の中に飛球が消えると、みんながグランドの横から山に入ってボールを探すことになる。すぐに見つかれば試合続行となり問題はない。しかし、なかなかそう簡単には見つからない。壁の上の雑木林は少しのあいだは平坦だが、後ろに向けてなだらかな坂になっている。大飛球でこれを転がるとなかなか見つからない。探しあぐねて諦めた頃にふっと見上げた木の枝にボールが食い込んでいたりする。日没が迫ると私たちは必死である。そのボールがないと次の日に遊ぶことができないからである.子供の遊びは丁寧である。球場通いを始めるとほぼ毎日「ヤキュウ」をしに山のなかに入っていく。
秋にはホームランボールのすぐ脇に松茸がポツコリと生えていたりする。その周辺を見ると何本かが落葉を持ち上げている。しかし、松茸を採って持って帰った覚えはない。子供は興味のないものには冷淡である。「なんだ松茸か」ぐらいですましていたのかもしれない。
 この球場で何年遊んだのだろう。二年に満たないような気がする。私が小学校の高学年になった頃にはバットとグローブが村に入っていた。今度は広い田圃でソフトボールである。これもゴロが転がると危なかった。稲の株にあたって、どのようにはねるか分からない。後ろからボールを追いかけた。この時のホームランは田圃の土手を越えなければならなかった。山のなかの田圃は棚田だからこのホームランボールを拾いに行くのも、矢張り大変だった。
 田舎での遊びは「ヤキュウ」しかなかった。時々、この球場のことを思い出す。四十年たった今もおそらく変わらない姿で壁は屹立しているに違いない。子供の歓声が途絶えて久しい雑木林には松茸が落葉の陰から様子をうかがっているのかもしれない。(完)

大月氏談では、この場所には、40年後の現在もマツタケが生えています。妹の旦那に話した所10本位い採ったとのことです。不思議です。

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