まつたけ山復活させ隊運動ニュース

 松茸は奈良時代から珍重されてきたが、絶滅が心配される.松茸山づくりは里山復活の近道であり里山の再生は松茸復活に繋がる.

まつたけ山復活させ隊 NEWSLETTER 886

2014年02月19日 |  マツタケの林地栽培 

前回の活動は、終日雪、路面の積雪もあり、マツタケ山づくりもできないと考え、やむなく休みました。岩倉香川山BCの様子を榎本報告(ブログ885)でを御覧ください。

 2月22日(土)は、まつたけ山復活させ隊第427回活動日です。午前10時に京都市左京区岩倉 村松 香川山(自称:下記の§活動拠点へのアクセスを御参照下さい)にお集まり下さい。最低気温は零下にはならない日が多くなっていますが、最高気温が低いため、寒さ対策など暖かい服装が必要です.でも日差には、本当に暖かみを感じます。久々の晴れマーク日、春を感じることができるでしょう! 本日の活動の様子は、宮崎 昭さんが報告します。 


マツタケ山づくり 3
 マツタケの生理・生態を知り、マツタケ山づくりができるように『(株)トロント刊 ここまで来た!まつたけ栽培』をベースにしつつそれを簡素化して書いています(不定期)。新しい知見も少しは入れていますが、ご質問やご要望があれば、最後に記載されているメールで連絡下さい。

5)土壌微生物の活性
 マツタケが一生を過ごす土の中には、糸状菌や細菌、小動物などマツタケの生活を脅かす生物や菌根形成のいずれかの時点でその形成に貢献する微生物(ヘルパー細菌が8%)など顕微鏡サイズの生物が無数といっていいくらい生活している。

 マツタケが生き続けるためには、そういった微生物の種類とか数などがマツタケとうまくバランスする必要がある。アカマツ林の手入れは、ヘルパーバクテリアを維持するのに効果的である。

 アカマツ林の同一斜面に、マツタケが発生する場所と発生しない場所が隣り合っているところがある。土の色などは肉眼では全く同じように見えるが、両者の土壌の糸状菌数や細菌数、放線菌数や線虫数などはマツタケが発生しない場所に圧倒的に多いのである。また、生活する微生物の種も異なっている。

 微生物活性は土壌中の微生物数などで表せるが、土の様々な微生物が持っている酵素量で推し量ることもできる。多くの微生物がグルコースを資化する(利用する)ことに注目して、土壌のグルコ-スデヒドロゲナーゼ活性の値で知ることができる。 専門的になって申し訳ありませんが、1g土壌中にグルコースデヒドロゲナーゼ活性(実際はTPF=トリフェニルフォルマザン量を測定)が20μg以下の土壌がよいようである。

 こういった酵素活性(含有量)が高いと、微生物数が豊富で「エサ」も多い。土壌が富栄養化し、マツタケの生活に適さないことを意味する。  

6)腐植層の厚さ
 アカマツ林土壌の化学的特徴を決める要因の一つに、林床に堆積する腐植の量がある。落葉・落枝は小動物に食われ、さらに糸状菌や細菌などの分解で腐植となる。やがて、それは土壌に還元されて生物の養分になる。長年堆積した腐植は土壌を富栄養化し、マツタケの生活をおびやかすことになる。

 腐植層が過度に発達すると褐色森林土壌の上層部が黒くなってくる。特に人工アカマツ林に見られるが、ミミズがいたりする。マツタケが多く発生するアカマツ林には腐植層はあまりなく、あっても3cm程度である。腐植層が厚いと子実体が大きくなる傾向があり、マツタケ生産林家はその堆積を好む傾向にある。

 しかし、腐植の存在には注意を払う必要がある。 マツタケの生活空間は、土の中(褐色森林土)であって腐植層ではない。 腐植は、マツタケ胞子の土中への移行を妨げることが分かっている。 マツタケ未発生地(シロを誘導したいエリア)には、腐植はない方がベストである。

7)斜面の向きや尾根の状態
 マツタケ山づくりの候補地としては、今までは、西から南の間に位置するアカマツ林の尾根や斜面の中腹以上を選んでいる。マツタケの生理・生態から考えても、西日が当たりにくいため湿潤になりがちな山の北斜面と東斜面はマツタケのシロの維持には最適の環境ではない。

 でも、気候変動常態化の昨今では、乾燥が激しい西斜面は、子実体発生を期待する林家にとっては要注意と思える。前回も述べたが、北斜面にのみ発生する地域もあり、要はマツタケは子実体を発生できる条件が整っていれば発生する、整わなければ発生しないのである。西向き斜面は乾燥を防ぐために、アカマツ以外の植物の立木密度を高く手入れすることで解決できる。

アカマツの平均樹齢とその立木密度に注意
1)樹齢
 マツタケ子実体が発生を始めるアカマツの平均樹齢は30年くらいである。岩手県岩泉町で、1962年に三陸フェーン大火といわれる山火事があって、沿岸の森林が消失した。その後、アカマツ林が再生し、30年近くたった1990年にはマツタケの大量発生が見られており、マツタケ発生の始まりは約30年であることを裏付けている(写真1)。また、和歌山県高野町上筒香にある岩田さんの山が火事にあい、その約30年後にはマツタケが発生し始め、今は人もうらやむ発生量である(写真2)。

1)岩泉町 手前のところは手を入れている 2)和歌山県イワタ山 全面に手を入れている 

 しかし、ホストの樹齢が40年や50年になって初めてマツタケが発生を始める地域がある。これは、その地域特性なのかマツタケが発生し得る条件が40年たって初めて整ったためなのか、今のところ不明である。林の手入れも万全、でもマツタケ胞子が飛んでこないこともある。そのうちアカマツ林がマツタケの好みでない林齢になることも多々ある。

 あまり難しく考えないで、5年生や10年生のアカマツ林など、うんと若いアカマツ林に手を入れ始めることが現在必要とされている。現在、マツのザイセンチュウ病で多くの地域はアカマツ林が見る影も無い状態である。京都で活動する僕たちは、アカマツ林再生から始めている。

 これではマツタケが発生するまでに、長時間が必要と思われる。長い間放置されてきた現在のアカマツ林の富栄養化土壌改善には長い時間を要するので、かえって好都合である。ある林家に切に訴えられたことがある。『孫かひ孫が、ここでまつたけが採れるように』と。毎年山を見に出かけている。

2)立木密度
 アカマツの立木密度は上長生長や肥大生長に影響する。しかも、その密度はマツタケが感染するマツの細根密度と深く関連もする。土壌の単位体積当たりのアカマツ細根の密度が高いと、マツタケ菌糸の感染効率がよいと考えている。密度が高い傾向にある尾根筋がマツタケの栽培地に向いてると言えるのも、一つにはこの点からである。

 尾根から斜面を下るにつれてアカマツの生育はよくなるものの、その密度は下る。また、同じように見える斜面でも地形は変化に富むので、密度も場所によって大きく変わる。25年生のアカマツ林で25本/10×10mもあれば十分である。アカマツ以外の植物は、1m四方に6~7本残そう。実際はこれだけ多くない.ただし萌芽し6・7本群がって生えたものが2株もあるというケースがある。こんな時には半分に減らす.すると、所々に1m四方に6~7本というカ所が生まれる。通常2~3本/㎡も平均してあれば多いと思う.日陰を8割くらいにしても良いだろうと考えている。 秋の子実体発生期の日当たり抑制のためである。不要な樹はいつでも無くすことができるが、たとえ高さ1mの樹であっても直ぐに得ることはできない。 

 岩泉まつたけ研究所試験林の痩せ土(30cmで岩盤)のことであるが、幹が混んでいて人が入れないくらいに宿主の密度が高く、従って生長が悪い。直径4cmほどの小松のアカマツ群集(平均樹齢30年)地にもマツタケは発生する。しかもマツタケの発生量も多い。比較のため、立木密度を下げたら、マツタケの発生は止まった。逆に、岩泉町大川地区で、ナラ林の中に立派なアカマツがたった2本だが近接して生えていた。手入れの結果、シロが二つ形成された。
 アカマツ立木密度は、2本でよいと言うことではなく、通常なら30年生で100㎡あたり20本ほどである。
 
3)アカマツ林の林型
 様々な樹種などが混交してアカマツ林を構成するのが普通である。外的な選択圧を与えなければ、現在のアカマツ林はやがてその地域の森林の移り変わりの最終段階である極相林に必ず遷移する。アカマツ林が遷移林とか2次林とか呼ばれる所以である。

 そのアカマツ林は、高層木、中層木、下層木、草本類や地表植物からなる。地域や地形、林齢などによってもそれぞれの樹高も構成比率も違ってくる。これを「林型が違う」と言う。

 アカマツ林を遠望して、アカマツ以外の植物、例えばナラ類がアカマツと同じ高さに、もしくはより高く生育している林は、落葉や腐植の堆積も多く土壌は富栄養化しているため、マツタケ山にはもはや不向きと見る。林型は高層木がアカマツで、アカマツ優占林でなければならない。

 しかし、長く放置されたアカマツ林であっても、遠望では一見アカマツ優占林に見えることがあるが、林内をよく見ると直径が太く落葉量も多い中層木の密度が高い林もあったりするので、必ず林内に入って調べることが大事だ。

 マツタケ山にはツツジ科の仲間やヒノキの仲間のネズなどが生育している。これらの植物を指標としている。また、尾根の状況と山腹の状況とでは植生も異なる。とにかく、長年、薪炭生産林、農用林として活用されていた1955年ころまでの里山林の状態(植生)がマツタケの好む林であるということに、思いをめぐらしてもらいたい。

 マツタケ山づくりに適する山は、1本でもマツタケが生えている山である。人の判断よりマツタケの判断が正しい。続く

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§活動場所:京都市左京区岩倉村松町138-20 香川山 (京都バス停留所「岩倉村松」から北東へ450m徒歩6分) 
 活動開始は午前10時頃から,終わりは午後4時頃.自由参加可能 ただしコアータイム昼食時は必ず参加のこと.
アクセス:
京都バスの「岩倉 村松行き」に乗車.
このバスに乗車するには、
ア)JR京都駅七条口から(バス停「C6」番、所要時間約60分)
イ)阪急京都線四条河原町駅から(四条河原町交差点河原町通り北へ上ル東側)40分
ウ)京阪本線出町柳駅から(加茂大橋東詰め北へ上ル西側、約30分)
エ)京都地下鉄烏丸線国際会館から(3番出口からバスターミナル1番)約15分
(地下鉄烏丸線はJR京都駅、烏丸四条、烏丸御池、国際会館などに停車)

§参加費は無料;ただし、消耗品費は皆さんの浄財カンパで成り立つ、或いは必要に応じて徴收.メンバー参加者には、現在、食材費+消耗品費として400円を徴収.登録外参加者・見学者などは要500円(施設利用代などを含む).

§参加や見学希望の方は、ブログ画面左にあるカテゴリーから「まつたけ山復活させ隊とは」を左クリックでご覧下さる様にお願いします.
内容
まつたけ山復活させ隊の活動について 
§1 我々のまつたけ山再生運動とは? 
§2 まつたけ山復活させ隊に参加するには 
§3 私達のマツタケ山造り(作業方法の特徴)
§4 こんな活動をしています! 
§5 今年の予定と目標?

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まつたけ山復活させ隊活動

予定日  2014年2月~年6月
回  開催日  報告担当者  男厨シェフ

427 2月22日 土 宮崎
428 2月28日 金 三輪
429 3月08日 土 池内   小原
430 3月14日 金 榎本
431 3月22日 土 宮崎
432 3月28日 金 内田
433 4月05日 土 池内   松浦
434 4月11日 金 榎本
435 4月19日 土 三輪
436 4月25日 金 宮崎
437 5月03日 土 池内   内田
438 5月09日 金 内田
439 5月17日 土 榎本
440 5月23日 金 三輪
441 5月31日 土 宮崎
442 6月06日 金 内田
443 6月14日 土 池内   川崎
444 6月20日 金 榎本
445 6月28日 土 三輪  
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§カンパありがとう!
 

§カンパお願い: 運営は皆さんのカンパで成り立っています!
         みやこ松茸・里山復活! 京都の文化・景観を守るために、里山林整備に努力しています.
   
カンパの振込先
 氏名:  まつたけ十字軍 代表 吉村文彦
 銀行名: 京都銀行 山科中央支店 口座No. 普通預金 3698173

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§主 催
まつたけ十字軍運動
代表 吉村 文彦(マツタケ生態学)
京都市山科区御陵岡ノ西町38-27
090-6227-4305 redpinemushroom@gmail.com

香川理化学研究所
代表 香川 晴男

§共 催
京都大学マツタケ研究会
代表 大石 高典

 

 

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