のらやま生活向上委員会 suginofarm

自然と時間を、都市と生命を、地域と環境を、家族と生きがいを分かち合うために、農業を楽しめる農家になりたいと考えています

旬知らぬ便秘肥満の俳句ブーム

2006年09月01日 | 農のあれこれ
世の中は日本語ブームだそうで、テレビでは日本語に関するクイズ番組が放送され、出版物でもいろいろな企画物がヒットしているようです。その流れの中で俳句、短歌、川柳なども取り上げられることも多くなって、かくいうこのブログのタイトルもいつからか、それらしい七五調の文言が並んでいます。

俳句とは移り変わる季節の中で気付いたことを切り取るものと自分なりに理解しているのですが(理解不足かもしれません)、その一方で、「魚や野菜、果物の旬の正解率は50%以下」という数字があるそうです(金丸弘美『フードクライシス 食が危ない!』ディスカヴァー・トゥエンティワン、2006年5月、1200円、p86)。

旬を知らずに俳句ブームか、という笑い話のようですが、実は反対で、季節感がなくなったからこそ俳句への関心も出てくるという意見もあるようです。坪内稔典さんは『季語集』の中で次のように書いてます。

「季節を意識するようになるのは、中年になってからのようだ。心身がやや衰えかけたとき、そのような自分の支えとして、季節を意識する。…子供や青年は、季節感などを意識しないほどに自然的である方がよい。自然のエネルギーに満ち満ちておればよい。やがて、そのエネルギーだけでは生きづらくなったとき、季節に頼り、そして俳句でも作ろうか、と思ったりする」(『季語集』序文、岩波新書1006、2006)

前段が長くなりました。今日は『フードクライシス』の方を紹介するつもりでした。

作者はスローフードを推進するジャーナリスト。この本は、食料自給率、食の安全、日本の農業、日本人の食生活、食と健康の5つの分野の48の事実を数字で示しながら、危機的状況にある食の問題をわかりやすく紹介しています。イラストも多く、1時間もあれば読み終えてしまうものですが、ちょっと気分は重くなるかもしれません。

たとえば、…

・日本の農産物純輸入額は世界の国々の中でダントツのトップ。豚肉などは世界輸入量の77.2%
・もし、食料輸入が止まったら、日々の食事はご飯に、イモ類、焼き魚1切れ程度。卵や肉は10日に1食に
・日本で食べられている野菜の5分の1は輸入もの
・65歳以上の農業従事者の割合は58%
・日本の耕作放棄地の面積は38万5000ヘクタール
・ペットボトルの清涼飲料水500mlの原料費は23円
・外食と調理済み食品は食生活の43.6%

あとがきで作者は、ではどうすれば、もっと食を大切にできるのだろうか、と自問し、各地で盛んになっているファーマーズ・マーケットに注目しています。流通コストがかからない、鮮度の高い地元産のものが手に入るなど、生産者、消費者それぞれにメリットがありますが、一番の貢献は「互いに顔の見える関係が築ける」ということでしょう。

本文の中で、JAS有機認証を取得する農家は4636戸しかないと紹介しています。認証手続きの手間とコストがネックなのですが、しかし認証以外の方法、たとえば生産履歴の公開や直売、農業体験などを通じても、消費者に安心、安全を理解してもらうことができ、その方が信頼関係がより深まるということではないでしょうか。