そこそこの放送作家・堀田延が、そこそこ真面目に、そこそこ冗談を交えつつ、そこそこの頻度で記す、そこそこのブログ。
人生そこそこでいいじゃない





「パラサイト 半地下の家族」が韓国映画として初めてカンヌ映画祭グランプリ受賞。
さらに米国アカデミー賞で前代未聞の作品賞ノミネート(日本映画でも過去に例がない)。
今注目を集めている天才監督、ポン・ジュノの過去作をあまり見ていないことに気がついた。
「殺人の追憶」は観た。
すごく良かった。
「グエムル」も観た。
あまり良かった印象はない。
というわけで、ポン・ジュノの過去作を2本まとめて観てみた。
まずはNetflixで今配信中、「スノーピアサー」だ。

これはなんというか微妙。
星は1つ半。★1/2
「キャプテン・アメリカ」のクリス・エヴァンスが主演で、ティルダ・スウィントンが出てきて、ソン・ガンホも出て、最後にはエド・ハリスまで出てくるというハリウッド作なんだけれど、原作ありものなのでポン・ジュノも少々その原作に引っ張られてしまっているのか、「パラサイト」や「殺人の追憶」のようないつものキレがない感じ。
そんなわけあるかい、とツッコミしかない設定の中、さらにとんでもないことが次々と起こるため、トンデモのインフレが起き続け、最後の方にはもう食傷気味で、この映画で起きている全ての事象がどうでも良くなるという素晴らしいダメ映画の反面教師のような作品だった。
トンデモSFが好きな人にはハマるかも知れない。
僕はダメ。



続いて「母なる証明」。
こちらはAmazonプライムで今配信されている。

星は4つ半。★★★★1/2
これは僕にとっては「殺人の追憶や「パラサイト」級。
重さでいうと「殺人の追憶」をすら凌駕していて、さすがポン・ジュノといって良い、もしかすると最高傑作かも。
とにかく凄い。
完璧な映画。

ストーリーを簡潔に言うと、田舎町で貧乏暮らししている母(韓国の名女優)と息子(ウォンビン)。
息子はいわゆる知恵遅れで、バカと言われるとキレる。
ある日、その田舎町で女子高生殺人事件が発生。
事件現場にその知恵遅れ息子が遊んでいたゴルフボールが落ちていたことで、息子が殺人容疑で逮捕される。
しかし、息子が犯人だとは思えない母が、自分1人で捜査を始めるが……というもの。
これね、映画全体に漂う不穏な空気の演出とか、母と息子の異常な関係性の描写、母の狂気の演出、「パラサイト」に酷似した緊張状態の中のサスペンスなど、ありとあらゆる面で素晴らしくて、観ていて唸った。
こりゃあすげーや、って。
いたたまれない物語、救いがない話に耐性がある人はぜひ観て欲しい。
「殺人の追憶」同様、見終わった後に重厚な何かが残る映画になっている。

ちなみにこの映画、その昔超イケメンとして人気があったウォンビンが兵役から帰ってきて最初に出演した映画。
それだけで韓流好きのオバチャンたちは公開当時飛びついたはずだ。
ウォンビン目当てで観に行ったオバチャンたちがどんな思いで劇場を後にしたのか考えると感慨深い。
格好いいウォンビンを観に行ったつもりが、こんなものを見させられてオバチャンたちは深く傷ついたことだろう。
映画とは罪作りである。
それにしても、兵役からの復帰作にポン・ジュノのこの映画を選んだウォンビンは相当凄い。

コメント ( 0 ) | Trackback ( )