リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

またもや!?(1)

2024年10月09日 18時01分07秒 | ウソゆうたらアカンやろ!他【毒入注意反論無用】

リュートを聴くのが初めてというお客さんが多そうなコンサートではときどき次のようなトークをします。

「このバロック・リュートは弦がとても多いですけど何本あるか数えていたかたもいらっしゃったのでは?」

(かすかな反応)

「ではもう次の曲を演奏しますので、その間に数えてみてください」

(演奏が終わる)

「はい、何本ありましたか?」

「18本」「23本」「20本」・・・

「はい、実は24本弦が張られています。ひょっとして弦をはじいているあたりを数えていませんでした?これを数えるのはなかなか大変ですよね。それよりこちらを数えるいいですよ」

(と言って、ペグの方を指し示すとみなさんなるほどと納得のご様子。少し受けた?)

弦楽器は必ずペグ(糸巻)に弦を結んで調弦しますので、糸巻の数=弦の本数です。

さて下はフェルメールの有名な絵ですが、この楽器に張られている弦は何本でしょうか。


ペグの回し方(3)

2024年10月08日 16時41分42秒 | 音楽系

こういった栓は17、8世紀の人々にとってはあたりまえの世の中であったため、いちいち押しながら回すということを言われなくとも指先が知っていた筈です。

当然こういった栓は固めですから指先の力もついていたことでしょう。これが現代人、とくに50歳くらい以下の人たち、になるとペグの回し方を知らないため、人差し指と親指でペグの持ち手を挟んだだけで回転させるだけというような回し方をしてしまいます。

それでは回るわけがありません。ペグの持ち手のカドを指に当ててテコの原理で回さないとまわりません。まぁ水道の水栓でも今は回さず上に上げるだけ、それすらもない自動水栓も増えているので出来ないのも無理はありませんが。

指先で「回す生活」がなくなっているために指先の筋力も衰えているので、もうひとつ出来にくくなる要素が増えます。回し方がわからない、プラス筋力不足です。

こういうことに対処するためにペグ回しの補助具が実はあります。

これは私の生徒さんの自作品を頂いたものです。これだと固いペグでも易々回りますし、ロー・ギア化するのでより細かい精度で回すことができます。


ペグの回し方(2)

2024年10月07日 18時50分27秒 | 音楽系

大昔私にとって初めてのリュートが完成したというので製作家野上三郎氏のスタジオを訪れました。氏は完成した楽器を手に取り、まず始めにリュートを調弦するときの注意事項を教えてくれました。楽器を演奏するときのようにかかえたまま調弦するのではなく、自分の前に楽器を置き右手と左手でペグを回しなさい。そのとき顔を近づけすぎると、弦が切れたりペグが抜けたりしたときに弦が目に当たるので注意しなさい、というような内容でした。

今聞くと笑い話のような内容ですが、もちろん調弦するときは演奏するときと同じように楽器を構えて左手でペグを回します。

注意することは演奏しているときとは異なり右手はより斜めにして楽器を自分の方と右膝上に軽く押さえ気味にすることです。前回のフェルメールの絵のような感じになります。
バロック・リュートの弾き方は、右手アームを下の絵のようにしていました。

これが調弦するときには右アームがフェルメールの絵のような角度になるわけです。

さらに重要なことはペグを回すときはペグボックスに押し込み気味にすることです。これをやらないと数回も回さないうちにペグはポロッと抜けてしまいます。ペグの棒は円錐状になっていて先の方が少し細いです。これは突っ込みながら回すことによって抜けないようにする工夫です。ペグを円柱状にしたらうまくしまりません。酒樽などの栓も同じ仕組みです。


ペグの回し方(1)

2024年10月06日 13時57分49秒 | 音楽系

リュートは産業革命以前の産物なのでいろんなところで現代人には多少の不便を強いることがあります。ペグに関することもそのひとつです。

一部のロマンティック・ギターではペグ仕様のものもありましたが、多くは金属のギアを回して調弦します。金属ギアがついているペグはロー・ギアになるので「大きく回して、少しずつ音程が上下」します。この方が当然音程は細かく合わせやすいわけです。さらに木のペグと異なり絶対に抜けることはありません。

私はこういった仕様のペグがついているギターがとてもうらやましいく思います。リュートの場合は、ギヤ比は車でいうとトップ・ギアと同じハイギアードですので、指で回した分と同じ回転で弦を巻き上げたり緩めたりします。ほんの数セントに満たないくらいの音の狂いを修正するのは、一発で決めるのはなかなか難しく「運」も影響してきます。

上の絵はフェルメールの有名な絵ですが、以前はリュートを弾いているところだとされていますが、今はそうはいわれていないようです。この絵については以前当ブログでも書いたことがありますが、絵の女性は少し前まで11コースバロック・リュートの5コースか6コースあたりを調弦していたが、何かに気づいて調弦するのを止めたところ、が描かれています。

調弦をしている最中でない証拠に左手は調弦しようとしているコースのペグを触っていても、右手はその弦は触っておらず10コースあたりの上に来ています。何かに気づき窓を見たらふいに右手が調弦している弦から離れてしまったのでしょう。

女性が何に気づいたかはさておき、正しいペグの回し方をよく表していると思います。


絵本太功記

2024年10月05日 19時38分58秒 | 音楽系

文楽を見に行ってきました。会場は津市の三重県文化会館中ホールです。このホールは三重県総合文化センター内にある施設で、この文化センターで教員時代の30年以上前に高円宮杯全日本中学校英語弁論大会の三重県予選を何回か運営したことがあります。当時は出来たばかりの建物でしたが、さすがに少し年期が入って来た感じがします。中庭にカラフルな彫刻がありましたが、塗り直し作業の真っ最中でした。

会場内のカフェで簡単な食事をとって中にはいりますと、文楽の人形が展示してありました。

今回の演目は二人三番叟と絵本太功記です。実は文楽のライブを見るのは今回が2回目。1回目は徳島に行ったときに見ましたがこれは短い簡略的なものでした。本格的なものを見るのは今回が初めてです。

この絵本太功記は本能寺の変を題材とする時代物だそうで、1799年に大阪の道頓堀若太夫芝居で初演されたと解説に書いてありました。全編はとても長いので今回は夕顔棚の段と尼崎の段の2編の上演。この2編でも1時間半くらいかかります。

上演に際しては左側に字幕があるので助かりました。さすがに太夫の語りだけでことばの意味を理解するのは難しいです。私は弦楽器奏者なので三味線のプレイについ耳目が行ってしまいがちです。絵本太功記の三味線は三人の方が交代で演奏しましたが、その中で一番最後に登場した鶴澤清介の三味線が圧巻でした。そもそも調弦を始めた第1音からして音が違いました。テクニックは素晴らしく太夫の語りによりそってストーリーを作って行く技量は大変なものだと思いました。まるでリュート一本と福音史家で受難曲をやるようなものです。もっとも太夫は歌唱はしませんが。

ヨーロッパのオペラは沢山の音を使い、沢山の人が登場してストーリーを展開しますが、人形と太夫の語りと三味線という全く別の方法でオペラに匹敵する舞台劇が展開できるとは、すごいものが日本にはあるものです。

 


瀬川千鶴

2024年10月04日 11時05分52秒 | 音楽系

リュートやクラシック・ギターの世界では女性奏者は普通だと思うのですが、ジャズやロックの分野では大半が男性だというイメージがあります。私が知らないだけなのかも知れませんが。

少なくとも40何年か前にフュージョンが流行り始めた頃は、フュージョンギタリストと言えば男性だと相場が決まっていました。その頃私は渡辺香津美のギターアルバムに衝撃を受けていろんな人の演奏を聴いていたのでそれは多分間違いないです。

最近 You Tube で The Jazz Averngers という女性ばかりのジャズ・フュージョングループの演奏をたまたま聴きました。編成は、サックス4人、キーボード、ギター、ベース、ドラムです。その中でギターがとてもいい感じなので名前を調べてみましたら瀬川千鶴というまだ30代の人でした。

キャリアはもう結構長いみたいですが、確実な技術とセンスのある音楽性を聴くことができましたので、早速ソロアルバムを探しましたら1枚出していました。

こっちの分野はシロウトなのであまり詳しくはないですが、昔に比べるとインストルメンタルはぐっと少なくなっている感じがします。そんな中、伝統的?なフュージョンやジャズの分野がまだ受け継がれていることがとても嬉しく思いました。車の中やワークアウト時の新しいお伴です。 次のアルバムが楽しみです。


スイスでも

2024年10月03日 18時11分38秒 | 日々のこと

スイス・チューリヒのエリコン地区で保育園児が襲われるという事件があったそうです。スイスと言えば多分もっとも治安がよく安全な国のひとつだと思いますが、そこでもついにこういう事件がおこるようになったのでしょうか。

エイコン地区は確か空港に近いところで、エリコンという名の駅もあったと記憶しています。旧日本軍がエリコン社の航空機関砲をライセンスしたものを使っていましたが、その会社があったところでしょうか。

ヨーロッパの大都市では夜になるとちょっと危ない感じがする地区があるのが普通のようですが、ことスイスに至ってはそういった地域はないと言えるくらい昼はもちろん夜でも安全なイメージがありました。

留学していたとき夜遅くバスでバーゼルに帰って来たことがありましたが、ひとりでとぼとぼ下宿まで歩いた道筋は安全そのものでした。バーゼルの街はそんなに大きくはないとはいうものの田舎ではありません。夜でも車が通っていますし、人も歩いています。日本の桑名市は世界的にみたら相当安全な場所だと思いますが、それでも夜遅く桑名駅から自宅まであるいたら、ヤンキーのお兄さんがバイクや車で走り去るのを目にするのはそう珍しくありません。

チューリヒの旧市街も夜間出歩いたことがありましたが、ここがスイス第1の都市ということが信じられないくらいゆったりと時間が流れ危ない感じの人はほぼ皆無、これがヨーロッパの他国でしたらそうは行きません。

それが白昼に襲撃事件が起こるとは、スイスも変わったものです。ひょっとしたらすでに他にもあったのを私が知らなかっただけなのか。スイスでも移民が増えてきたのでヨーロッパ諸国と同じような問題がすでに一杯起こっていたのか。詳しいことはわかりませんが、件の事件の背景を知りたいものです。

 


驚きのワイヤレス

2024年10月02日 10時43分12秒 | 音楽系

iPhone でときどき英語のリスニングをするので、どこにいても出来るようワイヤレスイヤホンがあったらいいなと前から思っていました。はい、大層勉強熱心な私です。

ワイヤレスは多分そこそこのお値段がするだろうからと思いこんでいたのでなかなか購入には至りませんでした。大して勉強熱心ではない証拠です。

一昨日急に思い立ってネットでしらべてみましたら何と安いものは1000円台からありました。まぁ音楽用ではないので、昔の携帯ラジオで使われていたような片耳だけのコード付きイヤホン程度の音が出れば充分と、Xiaomi Redmi Buds 6 Play1380円をポチってしまいました。アマゾンのポイントがあったので実際は0円です。

注文が23時58分頃でしたのであと2分以内に注文すれば明日に届きますと脅されたのであわててポチったのですが、ホントに14時間後(つまり昨日のお昼過ぎ)に置き配されていました。

早速iPhoneとBluetoothのペアリングを行い音を聴いてみましたが、何と驚くことに片耳イヤホンどころの騒ぎではないのです。それどころか高級品に匹敵する?くらいの音が出ています。え?これが1380円?という感じです。

そこで高級品と比較をしてみました。比較品は泣く子も黙るShure SE846です。100倍のお値段の品です。比べてみるとまぁもちろんSE846と比べると音の解像度は劣り音質も少し薄い感じはしますが、それにしてもてっきりドンシャリだと思っていたのでこの音質なら大健闘です。高音域から低音域までナチュラルにバランスよく音が出ています。以前持っていた3万円台の日本製やデンマーク製の品よりはいい感じがしました。クラシックの音楽も充分聴くことができます。

Redmi Buds 6 Playはこの夏に出たばかりの新商品のようですが、ペアリングもとても楽で確実でしたしどうしてこんな値段で出せるのか不思議な感じがしますが、Xiaomiはスマホの巨大メーカーなので量産効果が高いからでしょう。ただこの品、お値段がお値段だけにケーブルは付属していませんでしたので、アマゾンで注文しました。こちらもポイントを使いましたが。

 

 


Finaleがフィナーレ

2024年10月01日 09時20分08秒 | 音楽系

現在楽譜作成アプリは Sibelius を使っています。まだヤマハが扱っていた頃の Sibelius 4 のマニュアルを持っていますので、20年以上前からのユーザーです。初めて買ったのは Sibelius 3だったかも知れません。

現在作曲、編曲に Sibeliusをフル活用しています。孫達のチェロ教室用の作・編曲を始め、少し前に名古屋のミューズ音楽館から出版したギター合奏曲集など楽譜はほとんど全て Sibeliusで書いています。Sibeliusでプレイバックできるので作・編曲で楽器を使うことはありません。バッハのリュート編曲も Sibelius を使います。ルネサンスもバロックも、そしてどんなスコルダトゥーラも対応できます。楽譜を手書きするのはアイデアをメモするときくらいになってしまいました。

スイスにいた頃すでに Sibeliusを使っていました。バーゼルの私の周りの人たちも皆 Sibeliusユーザーでした。噂ではバッハのカンタータ1曲を1日で打ってしまうという人もいたとか。その頃日本では Finale という別の会社のアプリを使う人の方が多かったみたいです。

実はそのFinaleも購入して使ってみたことがありました。でも 直感的に操作できるSibeliusと比べると、Finale はいちいち手順が面倒くさく使うのをすぐ止めてしまいました。ことばで言うと intuitive な Sibelius VS logical な Finale ということになるのでしょうけど、楽譜を書くというもっとも実用性を求められる作業においては Finale では話になりませんでした。

その後 Finale は改善されたのかも知れませんが、日本では一定数の方が Finale を使っているのが不思議でした。しかしついにそのときがやってきました。Finaleは今年の8月一杯をもって開発・販売を終了することになったのです。やはり支持する人が減り販売減に陥っていたのでしょう。

Finale の開発元は Steinberg の Dorico の優待販売をするみたいですが、Finale ユーザーで楽譜を沢山書いていた人であるのなら、アプリの性能を考えると絶対に Sibeliusに行くべきでしょう。Doricoでは力不足、ましてや無料のアプリや日本のベンダーのアプリではもっと力不足です。もっとも楽譜をあまり書かない人であればどれに行っても同じかも。そもそもそういう方は楽譜アプリは必要がないとは思いますが。


下がる

2024年09月30日 14時36分11秒 | 日々のこと

昨夜はほんとに久しぶりにエアコンなしで就寝しました。3ヶ月ぶりくらいかな?でも今日は今まで続いていた酷暑ほどではないですけど湿度が高く、気温が低めにしては暑く感じます。

娘一家が日本に来た6月の下旬は湿度は少々高めでしたが、今日よりもまだ随分涼しかったです。いつも一家がこちらに来るときは長島温泉に泊まるのですが、併設の遊園地は人もまだ少なく、歩いてまわっていても汗ばむことはなかったです。まだプール営業開始の2日くらい前でした。

桑名の夏の祭り、石取り祭りは8月の3,4に行われましたが、この頃でもまだそれほど暑くなかったようです。夜中に歩いて祭りを見にまわってもそれほど暑くはなかったことを覚えています。

その石取り祭り後から急に暑くなり酷暑は9月初めまで続いていました。例年酷暑というのは必ずこの地域ではあるのですが、続いてせいぜい4,5日です。それが今年は40日くらい続き最近やっと「涼し目」にはなってきましたが、まだ暑いと言えば暑いです。夜ジムに行くときにまだ半袖短パンで寒くありませんから。

石破ショックで株価は急落していますが、株価みたいに気温も急落してほしいものです。いっそ下がらないなら下がらないで11月後半のくらいまで気温高めだと嬉しいんですが。この頃エアコンのない会場でコンサートがありますので。(笑)