季節の変化

活動の状況

西ドイツのBMWと東ドイツのトラバント

2008-08-16 06:45:16 | Weblog
共産政権の崩壊は、“経済戦争”が遠因である。
「計画経済は市場経済に負けた」という市民の反応を、
西ドイツのBMWと東ドイツのトラバントにみた。
それは、東ドイツのハレという町で開催された
国際見本市でのことである。

まだ、ドイツが東西に分割されていた1989年3月に、
訪れたハレの国際見本市の会場。

中央の尖塔に掲げられた、赤い星に目がいく。
それに、会場の前に、大きなレーニンの頭像がある。

――このレーニンの頭像は、今は残っていないだろう?
というのは、2006年にハンガリーを訪れたときに、
「1990年に共産政権が崩壊してから、共産主義色が一掃されました。
共産主義のときの像は取り払われて、一ヶ所に集められています」
と、ツアー・ガイドは説明したから、
ハンガリーの街からは、レーニン像は消えている。

ベルリンも東西に分割され、西ベルリンは、
ベルリンの壁”で囲われていた。
そのベルリンの壁が崩壊するのは、1989年11月、
そして、東ドイツが崩壊するのは、翌年の1990年である。
東ドイツが崩壊する1年前に、東ドイツのハレに入ったわけだが、
まさか、8か月後にベルリンの壁が崩壊し、
1年後に東ドイツが崩壊するとは、思いもよらなかった!
東西ドイツが統一するのは夢であり、それに、流血の惨事がある、
と思っていた。

そのハレの見本市会場の脇には、赤いBMWが駐車していた。
ナンバープレートから、西ドイツからの出展者の車だ。

見本市をみにきた東ドイツの若者たちが、
ひきも切らずに集まって来ては、BMWの中をのぞきこみ、外を観る。
スタイルや性能、塗装、内装、材料、装備、環境対策……が、
東ドイツの国民車トラバントとは段違いだ。
「西側の連中は、こんなにいい車に乗っているのか?」
と、設計の思想と、それを実現できた技術力にショックを受け、
「追いつくのは難しい、トラバントは完全に負けている!」
と、いけないものを見たかのように、すごすごと去っていく。

これは、生きた見本市だ!
技術の差は歴然で、安全や公害対策も遅れている。
計画経済は負けていることを、東ドイツの市民は、肌で感じた。
くやしいだろうな? 自分の国が劣っているわけだから。

ハレの街でみたトラバント

中心街から外れた街は、手入れが行き届かない。
トラバントが駐車している。右側はアパートメント。
歩道には、乳母車を押す親子がみえる。

チェコの車にシュコダがある。
チェコを訪れた2006年に、新モデルをみた。
フォルクスワーゲンの技術で、デザインも性能も一新した。

シュコダは、トラバントと同じように技術レベルが低かった。
まったく魅力がない、売れない。これでは市場経済では、勝てない。
企業として生き残れないから、共産政権が崩壊すると1990年に、
ドイツのフォルクスワーゲンに買収された。

しかし、旧型のシュコダが、まだ使われていた(チェコ、2006年)。

デコボコだし、つぎはぎだし、さびているし、部品はないし……。
――よく走るもんだ! よく使うもんだ!
これに感心する。
――となりの乳母車のほうが、りっぱだ!
デコボコではないし、さびていないし、部品はついている。

西の市場経済では、スタイル、性能、デザイン、価格、
品質、安全、環境対策……において、厳しい競争をして、
優秀な製品や、市場に適合したものだけが生き延びて、
デファクト・スタンダード(実質的な標準)”になった。

日本のハイテク製品でも同じである。
車でも、DVD、ディジタル・カメラ、インクジェット・プリンタ、
薄型テレビでも、世界一を目指して開発し、市場で厳しい競争を勝ち、
生き延びてきた製品が、デファクト・スタンダードとなってきた。
あとから出す製品は、これらの機能を満たし、
さらに優れた付加価値をつけ加えないと、安くたたかれる。

「お上に逆らわずに、決められたとおりに働いていれば、給与はもらえる」
という、半世紀も続いた共産政権の無気力状態では、
市場経済では勝てない。
共産政権が崩壊したのは、内部の“腐敗や無気力”のほかに、
市場経済と計画経済による、“経済戦争”の結果が遠因である。
武力戦争”の結果ではない……自由主義国家と共産主義国家が、
直接ドンパチして、共産主義国家が滅びたわけではない。

経済戦争やデファクト・スタンダードについて、
自費出版した『世界がみる日本の魅力と通知表』に、
記載してあるので、参考にしてください。

西のBMWと東のトラバント、西のフォルクスワーゲンと東のシュコダに、
市場経済と計画経済による“経済戦争”の決定的な優劣を
目の当たりにした。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 中国のファースト・フード | トップ | Win-Winの共生 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Weblog」カテゴリの最新記事