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『ひきこもり事務長』(読書メモ)

木村瑞穂『ひきこもり事務長:ぼくの心は2つある』中西出版

札幌にある社会福祉法人「麦の子会」は、発達に困難のある子供たちとその親御さんを支援する施設。

事務長である木村さんは、東京の有名大学に入学するものの、23歳のときに退学して実家に戻り、29歳まで家でひきこもっていたという。

麦の子会のデータ整理を手伝う仕事をしたことがきっかけで臨時職員として働くようになり、子供たちから「キム」と呼ばれ、「キムも頑張っているから俺たちも頑張る(p. 16)」と慕われる存在となる。

「育てたというよりも友達として一緒に成長してきました。この子らの面倒をみて、何か暴力があると家まで駆け付けたり、朝”起きない”といえば家に起こしに行ったり、仕事の時間外でも世話をしてきました」(p.15)という木村さん。

本書は、職員、子供たち、親御さんたちとの対談が中心に編成されているのだが、皆が木村さんの良い面(面倒見がよい、親身になってくれる、頭がいい)も悪い面(自己中心的、上から目線、勝手)もそのまま受け入れていることが伝わってくる。

「あとがき」で木村さんは、麦の子会について次のように語っている。

「私なりにむぎのこをキャッチコピー的に端的に表すと「自分自身になっていく。」そういう強力な場である、というところがむぎのこの中核だと思います」(p. 178)

よく考えてみると、「自分らしさ(authenticity)」には、「良い自分らしさ」もあれば、「悪い自分らしさ」もあり、それらは表裏一体である。

そのどちらも出せる集団は、人を生かす力を持った集団である、といるだろう。


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