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『文盲:アゴタ・クリストフ自伝』(読書メモ)

アゴタ・クリストフ(堀茂樹訳)『文盲:アゴタ・クリストフ自伝』白水ブックス

世界的にベストセラーになったという『悪童日記』の作者アゴタ・クリストフの自伝。

教師の娘としてハンガリーに生まれたクリストフだが、動乱の中で、難民としてスイスに移り住むまでの経緯がシンプルな文体で綴られている。

二十代後半で異国に移り、新しい言語であるフランス語で作品を発表するようになった彼女。本書の最後の部分が感動的である。

「この言語を、わたしは自分で選んだのではない。たまたま、運命により、成り行きにより、この言語がわたしに課せられたのだ。フランス語で書くことを、わたしは引き受けざるを得ない。これは挑戦だと思う。そう、ひとりの文盲者の挑戦なのだ」(p.91)

難民となっていなければ、また、フランス語と出会っていなければ『悪童日記』は生まれなかったであろう。たとえ、望まない運命であっても、それが創作につながるのだな、と感じた。

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