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学習不安と生存不安

学習することは「楽しい」というイメージがある。しかし、組織文化研究で有名なエドガー・シャインによれば、「学習することは、そもそも苦痛である」という。

何か新しいことを学習するとき、「これまでのやり方を捨て去る恐れ」「習得することができるかどうかという不安」を感じる。シャインはこれを「学習不安」と呼んでいる。人が学ばないのは、学習不安が大きいからだ。

では、何が人を学習に駆り立てるのか?それは「生存不安」である。生きていくためには、変わらなければならないとき、人は学習する。受験生は、将来、高い地位について多くの報酬を得る可能性を得るために勉強して良い大学に入ろうとする。社員は、リストラされないように、頑張ってスキルを身につける。

学習を促進するためには、「学習不安を低減させる」ような環境を作り出すアプローチと、「生存不安を増大させる」かというアプローチの二つがあるという。前者は「やればできるんだよ」ということをわからせて、学習する喜びを味あわせるポジティブな方法で、後者は、危機感を煽り「学ぶ者だけが生き残れる」と感じさせるネガティブな方法といえるだろう。

組織の学習パターンは、これら2つのアプローチを組み合わせることで、いくつかに分かれそうだ。ちなみに、シャインによれば、「学習不安を低減させて、社員を心理的に安心させることは難しいため、たいていの企業は生存不安を増大させることを好む」という。

学習する組織とは、たぶん、社員に学ぶ楽しさを味あわせて、学習不安を低減することができる組織なのだろう。

出所:Edogar H. Schein「学習の心理学:不安感が学ぶ意欲を駆り立てる」Diamond Harvard Business Review, March 2003, 48-59.
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