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『知性改善論』(読書メモ)

バールーフ・デ・スピノザ(秋保亘訳)『知性改善論』講談社学術文庫

『エチカ』に感動したので本書を読んでみたが、これまた難解だった。

「訳者解説」によると、スピノザが若かりし頃の仕事であり、未完成の書である。訳者の秋保先生いわく「本書は全体としてどのような意義を有しているのか見極めにくい、一筋縄ではいかないテキスト」らしい。

ただ、「善」に関する次の導入の部分には共感できた。

「これらすべて[の心の動揺]は、いずれにせよ、私たちがここまで語ってきた[富、名誉、快楽といった]すべてのもののように、滅びうるものを愛する場合に生じるのである。それに対して、永遠・無限なるものに対する愛は、もっぱらよろこびのみによって心を育み、しかもこのよろこびはあらゆる悲しみと無縁である。これこそが、大いに望まれるべきもの、全力を挙げて求められるべきものなのである」(p. 16)

また、スピノザは、知得を得る方法として

①伝聞(人から聞いたこと)
②行き当たりばったりの経験
③結果から原因を推測すること
本質のみを介して原因を認識すること

を挙げている。ちなみに、彼の主張は④である。

そのための方法論が述べられているのが本書。

ただ、何を言いいたいのかよくわからない箇所が多かった。たぶん、次のあたりがスピノザのメッセージであろう。

精神がもっとも完全な存在者の認識へと注意を向けるとき、言うならばそれを反照するときに、もっとも完全なものになるだろう」(p. 36)

スピノザ的な神は「自然」に近いので、人間の精神が自然に近づくことで、完全な知性を身に着けることができるということなのかな、と思った。



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