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『マンスフィールド・パーク』(読書メモ)

ジェイン・オースティン(新井潤美・宮丸裕二訳)『マンスフィールド・パーク(上・下)』岩波文庫

1775-1817年に生きたイギリスの小説家ジェイン・オースティンの作品。

マンスフィールドとは、イギリスのノーサンプトンあたりにある架空の町。

准男爵家であるバートラム家に来た、親戚筋のフランシス・プライス(通称ファニー)が主人公。

実家が裕福ではないため、劣等感を感じながらバートラム家に居候するファニーが、優雅な従妹・従弟たち(トム、エドモンド、マライア、ジュ―リア)と交流する物語。

上下巻合わせて1000ページ近くあるのだけれども、劇的なストーリーがないにもかかわらず、朝ドラを見ているように、ついページをめくってしまうのは、オースティンらしい作品である。

ちなみに、主人公のファニーは、超内気ですぐに泣いてしまう「イジイジ・ウジウジ系の女子」であるが、人間の本質を常に見抜く力を持つ、ちょっと怖い人。

欲にまみれた世の中に惑わされない強さを持っているのだ。

ちなみに、作品の中で、屋敷に集う若者たちが演劇をする場面があり、その作品(『恋人たちの誓い』)が付録としてついているのだけれど、これが面白かった。その中の次のセリフが一番心に残った。

良心はいつだって正しいのです」(p. 422)

これを読んでも何がなんだかわからないと思うが、心にずしんときた。

われわれは、どこかで良心の声がしているにもかかわらず、さまざまな欲に負けてしまい、それを無視してしまいがちである。

しかし、その良心は常に正しいことを指摘してくれているのだ。

そうした声に耳を傾けることができるかどうかが大事なのだな、と思った。





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